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キャリアコンサルタントの本棚#14

【映画:ミッシング】
「とある街で起きた幼女の失踪事件。
あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。
娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。
そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。
世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていく。
一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。その先にある、光に—」(HPより)

石原さとみの新境地。テレビ番組「ボクらの時代」の県談も面白かったので、鑑賞。正直、観終わった時は「え、ここで終わりなの?」でした。一方で、セリフやシーンなどが、後から蘇ってきて、深く印象に残った作品だったんだなあ、と思いました。

母・沙織(石原さとみ)は、泣くは、喚くは、奇声を上げるは、当たり散らすは、殴るは、蹴るは、で暴走しまくり、そして憔悴しきったうつろな表情が刺さります。

そんな彼女に振り回される「身内」である、夫・豊(青木崇高)の妻を冷静に見守る姿勢、沙織里の弟・圭吾(森優作)のはっきりしない態度(の原因)など複雑な人間模様。

さらに「当事者」ではない者たち、見えない誹謗中傷者から、「ご近所さん」のセリフや行動もさりげなく活写されています。中でも地方テレビ局記者・砂田(中村倫也)の物語。TV局の内幕話は、いらないんじゃないか?と思いましたが、物語の後半で「何が撮りたかったんですか?」の一言から、砂田自身が自分の報道スタンスを疑う、など重層的な物語になっていました。

劇中繰り返される「お気持ちはわかりますが」という言葉。いたずらに時が過ぎていく日常の中、失踪という極めて曖昧な状況で「時が止まってしまった」家族。我が子のことを、忘れない、忘れさせないとする母親。ラストシーンでの石原さとみを再生と観るか、どうかは意見が分かれると思いますが、現実世界において、もっと気の遠くなる時間を耐えている家族がいるのだ、ということも、後から思い出させてくれました。

かなり観るのが、辛くなる映画ではあると思いますが、いい作品だと思います。
「私たちは、心を失くしてしまったのか?」

失踪した我が子を探す母親の映画としてもう1本、「チェンジリング」(2008年)も挙げておきます。こちらは実話ということもあり衝撃的な作品ではありますが、アンジョリーナ・ジョリーが熱演。アメリカ社会の闇をえぐるサスペンスです。

チェンジリング(2008)

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