グループ・ディスカッションの裏ワザ!社会問題(Problem)と論問問題(Issue)の違いとは?

 グループ・ディスカッションは、日本語で「集団討論」と書くように、討論・議論をする必要があります。では議論をするには、何が必要でしょうか?それは問い(問題)です。議論は双方の立場・意見が違うからこそ成立するもので、みんなが同じ意見だと討論にはなりません。意見が割れる中で双方の立場や理由を吟味する中で、よりその問題やトピックへの理解が深まります。だから、試験中に議論が盛り上がるためには何が必要かと考えれば、よい問題設定、問いを発することができます。そのために知っておいて欲しい概念が社会問題(Problem)と論問題争(Issue)の違いです。
 試験で問われるテーマ、例えば「AI」「延命治療」「少子高齢化」などは広く捉えれば全てが社会的な問題であると言えます。私たちはこれらを普通、その区別を全く意識せずに社会問題や論争問題と呼びます。しかし、社会学や教育学の一分野の領域ではこれらの概念は明確に分けています。専門的にまとめると、以下になります。​

・「論争問題」:当事者間のクレーム・異議申し立てによって対立や葛藤が生じる状態を問題であるという捉え方
・「社会問題」:社会構造やシステムの欠陥やエラーとして問題を捉える社会問題の捉え方

また、これらを議論するときには、

・「論争問題」は,ProblemとIssueが非常に接近しており,単線的
→「論争問題」ではProblem=Issueであり、その解決策はIssueのクレーム申し立てを解決することを準備すればいいため、話がわかりやすい。


・「社会問題」は,ProblemとIssueの距離が遠く,複線的である。
→Problemをそこに含まれる多くのIssueにうまく落とし込んで、クレーム申し立ての具体を明らかにした上で、論じる必要がある。ProblemからIssueに争点を絞り込む焦点化が必要で、その点で社会問題の方が「論争問題」よりも論じることへの難易度が高い。

という特徴があります。

 この定義だけではいまいちピンと来ないと思うのでできるかぎりわかりやすく言い換えれば、論争問題は賛成・反対の立場があり、双方が言い合いをしているのを問題だと考える捉え方、社会問題はその言い合いと同じようなテーマで複数の言い合いをしているのを見て(そう予想して)、なんかこのテーマは問題(になりそうだと予想して)だと判断して問題だと捉える考え方です。両者の違いは、問題に対して実際に言い合いを具体的にしている人の有無と言えます。
 この捉え方でいけば、「AI」や「少子高齢化」は社会問題の色が強く、「延命治療」や「道州制導入」などは論争問題の色が強いと言えます。そしてグループ・ディスカッションで議論しやすいのは、圧倒的に論争問題です。例えば「延命治療」であれば、ほとんどの受験生がそのテーマを見ると同時に、「延命治療に賛成か、反対か」という問題設定ができて、ここにはいろんな立場で賛成・反対をする人が容易に想像できるために、比較的議論がしやすいと考えられます(あとは知識がものをいいます)。しかし、「AI」というテーマは、それ自体が具体的な論争になっているわけではなく、既存の社会システムにAIというものが入った際の欠陥やシステムエラーを予想して問題だと考えており、議論をするためには、2つ(以上)の立場に分かれる論争問題を受験生が問題設定する必要性があり、その意味でハードルが高いと言えます。
 このように、社会問題と論争問題の概念がわかれば、それぞれのテーマに合わせた問題設定をしていけばよいと考えられます。特に、社会問題は一度論争問題に下ろして議論する必要性があり、その意味で難易度が高く、総じて議論が難しいと言えます。このようなタイプは本番でくると怖いですが、知っていれば逆にチャンスです。私が知っている範囲で言えば、慶應義塾法学部のグループディスカッションのテーマは例外なく社会問題です。多分、意識的に出題していると考えられます。

 社会問題と論争問題の概念を使った問題設定法を活用して、他の受験生と差をつけましょう!


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