【新・蹴日本紀行】おんせん県でのフットボール旅と2002年の記憶<別府〜日田篇>
今週は「旅への回帰」を宣言しているOWL magazineに敬意を表し、連載中の「ライターなるには日記」をお休みして、GW中に訪れた大分県の旅について綴ることにしたい。題して『新・蹴日本紀行』。そのオリジナルは、こちら。
このGW中、本書と一緒にフットボール観戦をされていた方もいらっしゃったようだ。ありがたい話である。まだご覧になっていない方は、Vtuberの冬原そのさんによる素晴らしい動画レビューをご覧いただきたい。
さて、今回の大分の旅は、2つの目的があった。まず、2002年ワールドカップのレガシーについての取材。早いもので、あれから今年で20年である。大分で行われた試合は、わずかに3試合。それでも少なからずの痕跡が、当地には残されているはずだ。
もうひとつの目的は、大分の魅力をとことん味わい尽くすこと。試合の取材やインタビューの合間にも、美味しいものをいただき、温泉もゆったり浸かりたい。移動も食事も温泉も「フットボール(旅)の愉しみ」のひとつ。前回に続き、今回は別府市と日田市の旅の模様をお届けすることにしたい。
5月5日、ヴェルスパ大分でGMを務める生口明宏さんの案内で、別府市にやってきた。人口は大分市に次いで、県内2番目の約11万人だが、コロナ禍以前は年間800万人が訪れる観光都市であった。代表戦の取材で大分市に空いているホテルがなかった時、別府市のホテルに「仕方なしに」泊まって温泉に見向きもしなかった私は、なんという罰当たりな愚か者だったことか。
これまでの非礼を詫びるべく、まずはJR別府駅前にある、油屋熊八の像に向かって深々と一礼する。熊八さんは「別府観光の生みの親」として知られ、日本初の女性バスガイドや地獄めぐりを考案したことでも知られる。像のマントにしがみついているのは、猿ではなく地獄めぐりの小鬼。武将や政治家ではなく、地元の観光産業の祖が銅像となっているところに、別府の土地柄が忍ばれる。
別府といえば、マスコット好きなら必ず訪れてほしいのが、神亀4年(727年)に創建された八幡竈門神社。ここはニータンの生誕地として知られている。長く急な石段を登りきったところに鎮座するのが、御神亀(通称・なで亀)。毎年、最も縁起の良い方角を向いており、なでて拝むと開運や健康などのご利益があるそうだ。私は撮影に夢中になってしまい、ついなでることを忘れてしまった。
JFL所属のヴェルスパ大分は、Jリーグ百年構想クラブを申請するにあたり、ホームタウンを別府市と由布市に定めた。Jリーグ基準のスタジアムこそないものの、別府市内のスポーツ施設は意外と充実している。実相寺サッカー場もそのひとつで、天然芝と人工芝が一面ずつ。近隣には、ラグビー・ワールドカップでオールブラックス(ニュージーランド代表)が利用していたラグビー場もある。
最後に生口さんが案内してくれたのは、別府冷麺のお店。わが国で冷麺といえば、まず盛岡を思い浮かべる人が多いだろう。盛岡冷麺が在日朝鮮人によって作られたのに対し、別府冷麺は旧満州から引き揚げてきた料理人が提供したのが始まりとされる。出汁は昆布やカツオなどをベースとしていて、麺はもっちりしている。盛岡のものと比べて、かなり和食テイストに寄せた印象だ。
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