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古都に受け継がれる紫光の血脈〜フットボールの白地図 【第1回】 京都府

<京都府>
・総面積
 約4612平方km
・総人口 約260万人
・都道府県庁所在地 京都市
・隣接する都道府県 福井県、三重県、滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県
・主なサッカークラブ 京都サンガF.C. おこしやす京都AC、ASラランジャ京都、京都紫光サッカークラブ
・主な出身サッカー選手 釜本邦茂、川勝良一、柱谷幸一、柱谷哲二、松井大輔、家長昭博、森岡亮太、駒井善成、宇佐美貴史

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 新しく始まったプロジェクト、その名は「フットボールの白地図」。記念すべき第1回は、どこから色を塗っていくべきだろうか。日本的な風物が凝縮されていて、なおかつ歴史を感じさせる都道府県となれば、やはり京都府を置いてほかにあるまい。私自身、京都は大好きな旅先のひとつであるが、それを実感するようになったのは40歳を過ぎてからであった。

 初めて京都を訪れたのは、中学時代の修学旅行。あちこちの古寺に連れ回されたが、八ツ橋の独特の香りしか記憶に残っていない。その後、高校の修学旅行、大学の古美術研究でも訪れたが、本当に京都の良さが理解できるようになったのは、うんと大人になってから。平成から令和に元号が変わる時、カミさんと旅した京都での日々は、生涯の思い出になることだろう。訪れるたびに、更新されていく好感度。そこに、京都の奥深さを感じる。

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 京都を代表するフットボールクラブと言えば、J2所属の京都サンガF.C.である。プロ化は1994年だが(当時の名称は京都パープルサンガ)、そのルーツをたどると1922年創設の京都紫光クラブに行き着く。プロ化にあたり、アマチュアを続ける選手たちの受け入れ先となったのが、現在関西リーグ2部所属の京都紫光サッカークラブ。そして関西1部、おこしやす京都ACもまた紫光の流れを受け継いでおり、いずれもクラブカラーは紫である。

 初めて取材で京都を訪れたのは、2012年晩秋のJ1昇格プレーオフ準決勝。2年後の春にも、当時の京都のクラブ関係者を取材している(参照)。また、17年元日に吹田スタジアムで行われた天皇杯決勝では、京都に前泊して古都での年末年始を楽しんだ。それぞれの試合の記憶は、京都の四季折々の美しさと、分かちがたく結びついている。

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 昨年まで京都サンガがメインスタジアムとして使用していた、京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場へ向かう。ちょうど紅葉が見頃の時期で、ホテルを予約するのに苦労したことを思い出す(2012年)

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 クラブマスコットのパーサくん(左)とコトノちゃん。エンブレムに描かれている鳳凰がモティーフ。かなりデコラティブなデザインだが、意外とアクティブな動きを見せる(2012年)

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 一発勝負のプレーオフは、大分トリニータに0−4で敗れ、2年ぶりのJ1復帰はならず。サポーターの深い落胆ぶりと、冴え冴えと晴れ渡る京都の空の色が、今も鮮明に脳裏に刻まれている(2012年)

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 練習場がある、サンガタウン城陽にて。桜が美しい季節だった。ちょうどバドゥ・ヴィエイラが新監督に就任したばかり。インタビューでは「ジョホールバルの悲劇」や「信州ダービー」の話題で盛り上がった(2014年)

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 完成したばかりの新スタジアム、サンガスタジアム by KYOCERAへ。JR亀岡駅から徒歩5分という駅チカなのが、まず素晴らしい。外観も、いかにも京都らしい落ち着いた佇まい(2020年)

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 試合前、最も感動した光景がこちら。青い空、紫で統一されたスタンド、豊かな緑のピッチ。そこに、スプリンクラーによる放物線が幾重にも重なる。こういう美しいスタジアムが、日本の至るところに作られてほしいものだ(2020年)

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 最後に、食事について。お金を出せば、いくらでも美味しいものが楽しめる京都だが、ここはあえてソウルフード系を選んでみた。京都駅近くにある『新福菜館本店』では、癖になる黒いラーメンとチャーハンで有名。いかにも街中華な店内で、ちょっと違った京都らしさを楽しむことができる(2020年)。

<第2回につづく>

宇都宮徹壱(うつのみや・てついち)
写真家・ノンフィクションライター。
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年に「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追い続ける取材活動を展開中。FIFAワールドカップ取材は98年フランス大会から、全国地域リーグ決勝大会(現地域CL)取材は2005年大会から継続中。
2017年7月より『宇都宮徹壱ウェブマガジン』の配信を開始。
著書多数。『フットボールの犬 欧羅巴1999‐2009』で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』でサッカー本大賞2017を受賞。近著『フットボール風土記 Jクラブが「ある土地」と「ない土地」の物語』。

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