見出し画像

こんな本を読みました【2024.1】

1月の読書記録です。
下書きに眠らせたまま、忘れてました。

いまさらですが、よろしくどうぞー。



★『いい子のあくび』高瀬隼子

「ぶつかったる。」の一文から始まる表題作。なかなかのインパクトだなと思った。芥川賞受賞第一作。

世の中には2種類の人間がいる。「よけてもらえる人」と「よけてあげる人」。主人公の直子は常に「よけてあげる人」で、割の合わなさを感じていた。よけることができるのは、前方から近づいてくる人にすぐ気付くから。つまり、周りにいつも気を配っているから。それは「いい子」だから。

「いい子」でいるのは、一見ラクだ。ぶつからなければトラブルは起きないし、いつもニコニコしておけば人から憎まれることもない。だけど、それは完全なる「他人軸」で生きてしまっている。「いい子」の積み重ねは、いつしか自分自身を蝕んでいく。直子もそうだったのかもしれない。

誰にも見せない手帳にだけは、汚い言葉で本音を書いていた直子。普段からもう少し自分を見せることができていたら……と思ってしまう。

Amazon注文はコチラ



★『兄の終い』村井理子

脳出血により突然亡くなったお兄さんの、死後のドタバタをエッセイにまとめた一冊。

理子さんとお兄さんとは折り合いが悪く、ろくに連絡も取っていない状況だったらしい。憎しみに似た感情を抱いていたけれど、死後の片づけをしているうちに、お兄さんの生活の様子を知り、もう少し何かしてあげられなかったのか?と、後悔の念に駆られることに。

私は亡くなった母に対して、そういう気持ちはいまだに湧いてこない。母がこの世からいなくなったという現実と、「無」の感情があるだけだ。時すでに遅しかもしれないが、死後であっても悔やむ気持ちを感じられるのは、理子さんが優しい人だからだと思う。

別の作品を読んだときも思ったのだけど、理子さんのエッセイは、自分自身の体験を書いているのに、どこか冷静で、第三者的な視点で書かれている。めちゃくちゃ上からな言い方で申し訳ないけれど、これがプロなんだろうなぁとしみじみ思う。

Amazon注文はコチラ



★『飽きっぽいから、愛っぽい』岸田奈美

家族にまつわるエッセイといえば、このお方ですよね。『小説現代』で連載されていたエピソードに加筆修正を加え、一冊の本にまとめたもの。笑いあり、涙ありのエッセイはいつも家族愛にあふれている。

おばあちゃんに対しての文章で、「嫌いにならないために書く」と書かれていたけども、それこそが愛なんだよなぁと思う。家族だからといって、ずっと仲良しでいなくてもいいし、ずっと一緒にいなくたっていい。愛があるからこそ、文句を言ったり、離れたりすることもあるのだと、この年になって思います。

最後の方に、「自分を好きになるために、過去の自分を利用した」とありました。確かに、過去のダメダメな自分と今の自分を比べて、悦に入ることができるかもしれない。けれど、それは一瞬のことで、「またすぐに嫌いな自分に追いつかれる」と。

適当に体裁よく文章を綴ることもできるのだけど、「嫌いな自分だからこそ思ったこと、感情を書く」。私はまだその境地にいなくて。そこんところを理解できる日は来るんだろうか?と、未来を想像しています。

Amazon注文はコチラ


以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ではでは、また!



▼読んだ本について書いたnoteを集めたマガジン


この記事が参加している募集

読書感想文

最後までお読みいただき、ありがとうございます! サポートをいただけたら、泣いて喜びます。 ☆皆様にも良いことがありますように☆