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電界怪異図鑑:【ハロウィン好きのさとみちゃん】

【ハロウィン好きのさとみちゃん】

幽霊:浮遊霊
恐怖レベル:★★★★★★☆

「ハロウィン好きのさとみちゃん」として知られるこの幽霊は、ハロウィンの仮装に心からの情熱を燃やしていたある女性が起源になります。
それはこんな話です。

お祭り事が大好きなさとみちゃんは、ハロウィンを迎える度に独自のアイディアで周りを驚かせる仮装を考えていました。趣味の裁縫で培ったセンスと技術を活かし、彼女の仮装は毎年友人たちの間で注目の的でした。

ある年、彼女は「今度のハロウィンは今までで一番リアルな仮装にするつもり」と笑顔で宣言します。
けれど、ハロウィンの夜、彼女は約束していたハロウィンイベントに現れませんでした。楽しみにしていたのにどうしたのだろう、と首を傾げる友人たち。結局、最後まで連絡も取れず、イベントはお開きになってしまいます。

しかし、会場からの帰り道で、彼らは街灯の明かりの下に佇む花嫁を目撃します。
最初は驚いたものの、すぐにそれがさとみちゃんの仮装だと気づきました。友人たちは彼女に近づき、「今日はどこにいたの?すごいリアルな仮装だね」と声をかけましたが、さとみちゃんは一切の反応を示さず、じっと彼女たちを見つめるだけ。

けれど突如、一人の友人の肩を力強く掴んで、血みどろの顔を近づけ言いました。

「やりすぎちゃった」

さとみちゃんはそう呟くと、闇に溶けるように消えてしまったのだそうです。

次の日、友人たちは衝撃の事実を知ることになります。ハロウィンの夜、仮装のウェディングドレスを着たさとみちゃんが車にはねられ、亡くなっていたという連絡がきたのです。
自ら車道に飛び出したそうです。
彼女の求めていた「リアルな仮装」とは、もしかしたら実際に事故に遭い、衣装と身体に本物の傷を付けることだったのかもしれません。

だとしたら、他の誰よりも本格的な姿が手に入ったことでしょう。
命と引換えに。

ハロウィン好きのさとみちゃんの噂話

毎年ハロウィンの夜になると、彼女のことを知る者の前に現れると言われています。その姿を見た者は、真っ白なドレスと赤い涙を流す微笑みを決して忘れることはないでしょう。

ただ、見た目とは裏腹に、さとみちゃんは一般的な浮遊霊であり、霊障などの実害はほとんどありません。故に近隣の除霊組織も放置しているそうですが、年々知名度を上げ、一部地域の都市伝説的な存在となりつつあるようです。

今年のハロウィンの夜も、さとみちゃんはその自慢の姿を披露するため、どこかの街灯の下に現れるかもしれません。

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