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1Q84を読んで

村上春樹の作品を18歳のときから読みはじめて、今も読み続けている。 新作を読むと過去の作品を読み返したくなるのだが、最近でた「一人称単数」を読了後、無性に1Q84を読みたくなり、図書館で借りてきて読み返した。

1984年から1Q84年へ。
二人の主人公。青豆と天吾。不思議な美少女ふかえりと「空気サナギ」、教団さきがけのリーダー。DVから女性を守るためのセーフハウスを経営するマダム、その護衛でゲイのタマル。1Q84の世界に存在する2つの月とリトルピープル。

ぼくはこの作品を何度も読み返しているのだが、その都度、作品の世界に引き込まれる。村上春樹作品のなかで一番好きだ。
村上春樹は今までの作品で、無意識の世界と異空間、そこに存在する不思議な存在をずっと書いてきている。羊男、カーネルサンダース、リトルピープル、騎士団長。また、主人公たちは無意識の世界に迷いこむ。または、自ら無意識の世界に潜り込む。深い井戸に潜ったりしながら。
ぼくが大学生の時に文学の講義で習ったことだが、村上春樹作品に出てくるこの井戸。フロイトの言うidのメタファーになっているとのことだ。無意識の世界にある本能的欲求。 1Q84においては、主人公達は井戸に潜り込むことはしないが、この1Q84が既に井戸の世界なのだと思う。青豆はセーフハウスのマダムから頼まれた大切な仕事を果たすため、ひどい渋滞の首都高速道路でヤナーチェクのシンフォニエッタが流れるタクシーから降り、高速道路の非常階段を降りたときに、この世界へと迷いこむ。天吾はふかえりの書いた物語「空気サナギ」を文学賞に受賞させるためにリライトした結果、1Q84の世界を具現化させてしまう。

この作品には、それ以前の村上長編作品にはなかった重みがある。父親との対話。宗教的問題。村上春樹はオウムのサリン事件で被害にあわれた方々にインタビューをし、それをアンダーグラウンドというドキュメンタリー作品にまとめている。 そのしごとが、この1Q84にはあきらかに表れている。
村上春樹の転換となった作品だろうと思う。

ご一読ありがとうございます。書こう書こうと思ってなかなか書けなかった読書感想文、漸くかけました。フロイトの話が少し出てきましたが、その弟子ユングはヨガを学ぶためにインドまで行っているようです。ユングが書いたヨガの本も読んでみたいところです。

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