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絵画で味わう江戸のさかな【かわいい子には寿司をあげよ】

子どもは寿司が好きだ。休日にスシローやくら寿司を訪れてみると、寿司に大はしゃぎする子どもをなだめる夫婦の微笑ましい姿がよく見られる。

あまり知られていないが、浮世絵にも親子と寿司をモチーフとしたものがある。それが、歌川国芳の美人画『縞揃女弁慶』(しまぞろいおんなべんけい)である。

末広恭雄 監修「魚づくし」より

をさな子も ねたる安宅の松か鮓 あふぎづけなる 袖にすがりて

絵画上部には上記のとおり狂句が記されており、袖にすがって寿司をねだる子どもの様子が詠まれている。ここに表れる「松か鮓」というのは、江戸の寿司屋を指す。松下氏も紹介しているとおり、この店は握り寿司を生み出した店としても知られ、その味は大変な評判であったとされる。

細かいが「御膳 あたけ 松のすし さかな屋」と読める
(読みやすいよう画像を回転させてある)

この絵では、母親と思われる女性が皿に盛られた寿司を子どもに与えようとしているように見える。折詰から出したものなのだろう。描かれているのは、握り寿司と卵巻き。見づらいが、おそらくさらにその下に押し寿司らしきものも乗っている。紅色を基調とした女性の服装と優しい顔、子どもの柔らかな肌とあどけない表情がなんとも美しい。

寿司の拡大図。この卵巻きを現代でも出している店がある。詳しくは錦絵の寿司を参照。

一緒においしい寿司を食べる。そんな微笑ましい光景は、江戸時代でも現代でも少しも変わらない。

かわいい子には寿司をあげよ。きっと忘れられない思い出になるはずだ。

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