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不登校という状態を知る

1人ひとり違うのが当たり前

不登校という状態は、1人ひとり違います。
子ども1人ひとりが異なり、個性もあるわけですし、家庭環境や家族との関係も違いますし、地域によって考え方や支援体制も異なるのです。
ですから子どもさんの置かれている現状を丁寧に確認していくことが大切です。
この大前提を無視すると、「〇〇をして不登校の子どもが登校する」、「〇日で再登校した」などの宣伝文句を信じてしまい、我が子にも当てはめて強引で、子どもの気持ちを考えないような手法をとってしまいがちです。
この類の売り文句は、ほとんど占いと同じです。もちろんその売り文句通りにやってみて不登校の子どもにも効果があったり改善したりということはあるかもしれません。その裏には、数多くのご家庭内で関係悪化があったり、本人の状態がよけいに悪くなったりと弊害が多いのも事実です。
賢明にも多くの保護者のみなさんは、本やネット、親の会などを通して情報を収集されていると思います。1つの情報を鵜呑みにしないで、様々な状態があることやケースがあることを知ることで理解が深まります。
まずはご家族が不登校というものの理解をする、それが真っ先にすることで間違いありません。そのために我が子をよく観察すること、そして親の会などに参加することが最も効果的な方法だと思います。

原因捜しではなく、今の子どもがどのように過ごしているのか

他のコラムでも書きましたが、不登校になると学校に行けなくなった原因を捜そうとします。しかしそれは間違いのもと。
原因を捜したところで何の進展もありません。
ですが、学校に行っていたのであれば、学校でどんな様子だったか、何を楽しく感じていたか、あるいは嫌だと感じていたかなど学校の先生に聞いたり、お友だちやそのご家族に聞いたりすることをしてもよいかもしれません。
何しろ学校に行かなくなった子どもは、積極的にこれまでの学校の様子や出来事など話したくなくなるからです。子ども自身も学校には行った方がいいとか、行かなければならないもの、ご家族に迷惑をかけているなど思っているのでとてもこれまで通りに話すということはできない場合が多いでしょう。無理やり聞いたところで、何か追い詰められているような感じや怒られているような印象をもつので黙っているしかありません。
私もこれまで本当にたくさんの不登校の相談を受けてきました。その相談において不登校の原因を聞くことはありません。ただ子どもさんの様子を丁寧に聴くだけです。大切なことは、過去の出来事ではありません。今、ココで何を感じているか、どう行動しているか、という点に焦点を当てることなのです。

その子どもがどういう子どもであるのか?

不登校の子どもなんです。どうにかしてほしいです。とご家族が相談されます。ご家族からすると大問題なのかもしれませんが、学校に行けない・行かないというだけであって、学校に行っている子どもと何も変わらないです。
そういう「不登校の子ども」というフィルターを通して、その子どもを見れば、それだけで価値判断があって歪んでその子どもを見ていることになります。
不登校の子どもを支援しているのですが、だからこそ「不登校」フィルターを持たないで、0からその子どもはどういう子どもなのだろうかと関心をもって向き合っていきます。
そうすれば名前があり、それまでの経験があり、持って生まれた能力があり、言葉づかいや行動があることがわかります。
何が好きで、何が嫌いで、何が得意で、何が苦手なのか。その子どもを理解するといっても簡単なことではありません。その状況、場面によって言葉使いも行動も変わります。
ご家族は、小さいときから我が子として見てきているので好き嫌いや得意不得意などよく把握されているでしょう。しかし一緒にいるからこそ、近すぎるからこそ見えているようで見えてない、あるいは見えていても当たり前すぎて見落としている、ということが多々あります。
そういう情報を、私たちとご家族は共有していき、子どもさんの「今」を再認識していくということです。

時間、場所、人が変われば、子どもが分かる

朝や午前中はとにかく元気がない、あるいは眠そう(寝ている)ような子どもが昼を過ぎてから夜にかけてどんどん活動的になっていく、ということはよくあります。
睡眠サイクルは複雑で、とってもズレている子どもだと48時間くらい起きっぱなしでそのあと15時間くらい寝るみたいな1日が72時間サイクルみたいになっているとか、ショートスリーパーの子とかいろいろあります。どういう時間帯か、どういうサイクルか、それで子どもの表情が変わったりします。
場所にしても、家ではやたら元気なのに、新しい場所、慣れてない場所ではとっても大人しいとかある特定の場面(ゲームや楽器を演奏中など)になると活発にできるけどそれ以外はスマホだけとか。家ではこんな表情見せたことありません、など言われることもたくさんあります。
そして人、ですね。親子関係が悪いとなおさらです。フリースクール地球子屋のスタッフは、子どもの対応について日々研鑽を重ねているので、スッと近づいて仲良くなることもできますし、1人がよさそうと見れば少し距離をおくなどとても子どもとの距離感を大切に考えて対応します。
そういう細かい配慮が、ご家族でできるかというとなかなか難しいかもしれません。
子どもでも大人でもずっと家の中にいては、できることも限りがあります。何も変化が起きずらいのでただただ時間が過ぎていくのを消費するだけ、になりがちです。学校でもなく、家でもない場所の意義は、家、学校とは異なる場、時間、人と出会うことです。そうすることで、子どもさんのことをより深く理解することができるのです。
フリースクールに行ったら、学校に行かなくなるのではないかと心配される方もいるようですが、フリースクール地球子屋はそうではありません。現に多くの子どもがもう一度学校で頑張ってみようかと、子ども自身が選択をしているのです。(誤解のないように付け加えておくと、フリースクール地球子屋は、学校に戻すこと、再登校をすることを目的にしていません。結果として、学校でもっと学びたい、と自己選択をした結果なのです。)
じゃあ、フリースクールに通わせることが子どもにとって必要なことなのか、と結論づけるのも早計です。学校に行けない・行かない子どもさんは1人ひとり違うので、何でもかんでもフリースクールがいいというものではありません。
まずは、子どもを理解すること!を肝に銘じて日々接してほしいと思います。