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卒業生インタビュー(三橋さん)

恒光:一年振り返ってみてどうでしたか?

三橋:楽しかった。料理をするのは勿論だけど、海の近くで暮らすの初めてだし、共同生活も初めてだし。みんな色んな考え方持っているし、料理のことも「この人はこんな風にやるんだ」とか思った。一緒に生活をして刺激をもらったし、一個のことを勉強しても、その人たちのアレンジが加わるとまた違うから、二倍勉強できたなって。

あと、魚が美味しいですよね(笑)
こんな新鮮な魚たちを、こんなに沢山食べたことは人生でないと思って。

恒光:食べてた魚は、島食の寺子屋のすぐ近くにある崎地区定置網かな?

三橋:はい、定置のです。

恒光:定置で出会った好きな魚は?

三橋:普通に鯖とか、本当に美味しい。先生の鯖寿司をみんなで食べて、みんなで感動したのを覚えています(笑) 脂がすごい乗っているし。

恒光:この一年は「魚」でしたか?(笑)

三橋:まだまだですけど、魚を捌けるようになったのは大きい。海無し県に帰るから、これから魚を触るかわからないけど、買いたいって思うかもしれないし。

恒光:ここに来る前は、どのような「食」生活を?

三橋:わたしは結構野菜系が多かった。魚がそれほど手に入らない環境だったし。こっちにきて、逆に野菜が少なくて、魚を食べることが必然的に増えて。週に3回とか、1日2食とか魚を食べるようになった。

どれだけ、昼休みが慌ただしくても味噌汁は必ず飲んでた。余った野菜とかを入れたり、魚でとった出汁とか、学校でつくったものをワーッと入れて、即効で味噌汁作るとかやっていましたね。

恒光:改めて、ここに来る前の「食」への関わり具合について聞きたいんだけど、料理教室に通ったりしてたんだっけ?野菜のことには、なんとなく詳しいなって印象はあった。

三橋:個人的に関心があったから、自分で調べたり。あとは、地元の農家さんがやっている「大豆部」というのが地元にあって。自分で人参とかを畑で小さく育てていて、その時にわからないことを大豆部の農家さんに聞いてみたりしていたんですけど。そこで聞いたりしていたから、ちょっとかじったくらいの知識はあったんですよね。

山のものは地元に沢山あったけど。蕗も蕗の薹も。詳しくはないけど、普通に食べてはいたから。蕗の薹が、なんの蕾かは知っていたけど。

恒光:スーパーとかに蕗の薹とかは並んでいたの?

三橋:直売所にはあったかな?あと、おばあちゃんが詳しかったんですよ!

恒光:海士に来てからも、おばあちゃんとかお母さんに対して、すごい信頼して話を聞いているのが伝わってきたよ。

三橋:おばあちゃん=色んなことを知っている人みたいイメージがあって、海士のおばあちゃんやお母さんたちも、絶対に色んなことに詳しいだろうという先入観もあって。

恒光:ふと思ったんだけど、島の生産者の方に女性が少ないなと思った。

三橋:あー確かに。

恒光:庭先の小さな畑と、おばあちゃんの知恵とのセットになっている感覚かなー。島だと。どんな、おかあさんと話した。

三橋:例えば千鶴子さんとか。料理に取り入れていくのが上手なんだなって思う。

恒光:取り入れていく?

三橋:家に行った時に、なにかの葉物野菜の間引き菜を取ってこられて、
「これ、なんかにしようと思う~。」って言いながら、気付いたら最終的に一品になっている。

恒光:台所に立ってきた回数があって、そういう風にできるのかな?

三橋:それは、あるな~って思いました。
「そういう作り方おもしろいな~。」っていうのが沢山ありました。
型にはまっていなくて美味しいもの。

恒光:「美味しいもの」の話でいうと、調味料の話を生徒同士でしていなかったっけ。美味しいと感じさせる調味料を入れているものを、美味しいと言うのはどうなんだろうか、みたいな。いつの会話だったか忘れてしまったけど。

三橋:ここ最近はそういった調味料を全然使ってないけど、時と場合によっては別に良いと思う。みんなでワイワイ集まって食べる時に、「あ、これ絶対に美味しいやつだ~」というハズレのないものを作るときは使っていいとも思うし。家ご飯みたいに。「ケ」の料理というか。

恒光:「ハレ」と「ケ」の言葉ですみ分けして、説明することが増えてきた気がする。「ハレ」と「ケ」はなに?

三橋:もともと質素めな料理が好きで。
それでも、自分にとっては「ハレの日ご飯」みたなものもあって。
ちょっとひと手間加えるだけで、「ハレの日ご飯」だったんですよ昔は。
だから、、そんなに考えていなかった昔は(笑)
良い食材を料理に使うくらいの感じ。お肉とか(笑)

でも、日常使いするものは良いものを使っていたかもしれない。
良いものの基準がわからないですね。

自分の中では普通だけど、周りからすると「それ、高くない」みたいなものがある。

恒光:調味料は入塾前からこだわっていたもんね。

三橋:うん。そっちの方が美味しいし、体にもいいから、一石二鳥だし。美味しいからいいかなみたいな。自分的には、そんなに贅沢をしている感覚はなかったかも。

恒光:そういえば、なんで島食の寺子屋に入塾したんだっけ?

三橋:私は欲張りな性格なので、料理も勉強したいんだけど、食材のことも勉強したいってなったら、じゃあ島食の寺子屋ってなりました。

来る前とかは、これから何をするのかを模索していて。料理はもともと好きだし。遠くのものを使うのは違う気がしていて、輸入するとか。生産者が見えた方がいいなとか。近いものを使いたくなっちゃいますね。

遠くの人だとしても、「こういう風に作っている」というのが分かると、大事に使うというか。そう、大事にしたいんだと思う。

でも、わかっていないと、大事に扱えないとも思って。

恒光:島の生産者さんとの距離は縮められましたか?

三橋:それが一番の後悔で。。(笑)

もっと動けばよかった、勿体なかったと。
最後になってきて、「最後だから」という自分の気持ちもあって。
でも、この後悔を活かすことは、地元に戻ってからでもできることだから、ここでは後悔したけど次ではもっと積極的にいこうと思えたから、それは良かったことにしようとしています!

生産者の方の仕事をしているのを見ていると、距離感とかを考えるようになるじゃないですか。今はこの作業だから忙しそうだなとか、他の場所でも一緒かなと思ったり。活かせることはある。

恒光:そうだね。生産者の立場に立って考えてみるというか、自分の善意を一方的に押し付けないというか。今回の卒業制作弁当も、あくまで生産者の方に忙しい中で時間をとってもらって、食べて頂いているという意識で臨んでいた。

あと、お世話になった方々に大小とか優劣はないっていうこと。一年間を通して、日常的にお世話になった方もいれば、一回しか会ってない人もいるけど、そこに大小はなくて。全てのひとつひとつがあって、島食の寺子屋が成り立っているから。

三橋:うん。お弁当箱のタイプを分けなきゃいけないって時に、そういうところが難しいって思いました。
あと、丸の形をした弁当箱は、料理を考える時にめっちゃ難しかったです。あと、数日の準備期間があればな~と(笑)

恒光:留学弁当が1週間前にあったし、怒涛の10日間だったね。
卒業制作弁当と留学弁当の日程が近い中で、それぞれどのように向き合い方を変えたりした?

三橋:卒業制作弁当は最後ということもあって、絶対に手を抜きたくないし、もっと良いものを作ろうという気持ちがあった。留学弁当は、どっちかというと島に一年しかいない島留学生向けなので、季節のものを味わってほしいことが最優先だった。弁当配達日の前日まで蕗の薹を探して、でも人数分なかったからかき揚げに変更したんですよね。卒業制作の方は、生産者の方のものをなるべく入れたいなと。

恒光:卒業制作弁当を配達する時は、最初の方の人たちに対しては緊張が見えていて、お世話になった定置網の方々には殆ど喋れていなかったけど。。

三橋:頂いた食材とかを、こういう風に使いましたっていうのを、もっとひとりひとり言いたかった。黒豆だって、卒業制作弁当で寒天に入れた使い方以外にも、普通に黒豆にしたり、あんことかも作ったし、もっと色んなことに使っていたから。本当にありがとうございます、っていうのをもうちょっと伝えたかった。

本当は、お弁当もそれぞれの生産者をメインにしたかったんですけど、全部が全員がメインになるじゃないですか(笑)

恒光:それが島食の寺子屋らしさでもあるから難しいね(笑)

三橋:そうなんですよね~。だから、言葉で伝えたかったんですよね。
本当に良いのは、この人の為だけに作りましたみたいなを、お一人ずつやりたいんですけど。。

恒光:それやると、一ヵ月くらいかかりそうだね(笑)

三橋:お弁当を渡す時に、上手く言葉を添えることも必要だったのかな、難しい。

恒光:飲み会で生産者の方と打ち解けるシーンもあったね。

三橋:うーん、苦手なタイプがあったりして、最初は距離感があったんですよ実は(笑)

飲み会の場で会うと、ひとりの漁師さんとかではなくて、ひとりの男の人っていう感覚の方が近くて。そして、自分の人見知りが発動しちゃうんですよね(笑)

恒光:けっこうコミュニケーション力も試される場所でもあるんだよね。ただただ、生産者の方にあれやこれや質問をぶつけると、むこうは楽しくないって思う時もあるかもしれんし。

三橋:自分の中で、そういう線引きはしていたような気がする。飲み会のときに、そういう話はしない方がいいのかなって。「仕事の話」になっちゃう気もして。

恒光:その辺りの接点のさじ加減は、なかなか難しいよね。

三橋:道端でたまたま会って、話しかけるしかないのかな。こないだも、サンライズ宇受賀の方とは知らずに、直売所で話してて。「あ、この人ほうれん草持ってきている、話してみよう」って。

その時、葉物がない問題があって、必死というのもあったから。でも、あの後にイチゴ畑にも連れて行ってもらえて良かったですね(笑)

恒光:話が肝心の料理に移すと、一年間を通した学びはどうでしたか?
自分はこういう風になったなって。

三橋:うーん、まだまだだな。
まだ、型にはまった考え方をしてしまっている気がして。

恒光:「型」っていうのは?

三橋:今は日本料理を学んでいるから、「日本料理ってこんなものだよね」って頭になっちゃっている気がして。もうちょっと自分は自由にしてみたいんだけど、それが海士の食材だけで料理しているからそうなっちゃうのか。

調味料であれば、梅か塩麴かこじょうゆか、しかないみたいな。そういう制約があって。そうなると、こういう感じに仕上げるかってなっちゃっている気がして。本土に戻ったら、食材とか調味料とか色んなものを使うし、その辺りが自分で外に出た時に色んなアレンジができるようになっているんだろうかって。

恒光:前回の島留学弁当のインタビューの時に、「前まではゴールを決めてから作っていたけど、最近はなんの食材があるからって出発点に立てるようになった。」って言っていて、寺子屋らしい学びをしてくれているなと思ったこともあったよ。

三橋:それは、まだまだ一歩目の段階で。その次の、もっと自由な発想のところはまだまだかなというのもあって。

武田さんはすごいと思っていて、彼女の好みが日本料理というところじゃないこともあって出てくる発想もあるから。すごいなぁと思って。

恒光:それぞれに個性があるよね。弁当にも、作った人の色が凄い出る。

三橋:そういった意味で、武田さんは自分を突き通せているのが羨ましい。私は考えすぎてしまって、自分で勝手にハードル上げて常に迷走しているみたいになっちゃう。

恒光:1年間ずっと迷走しているような印象もあったけど、、(笑)
迷走の中でも波があったと思うんだけど、壁を突き抜けられた時ってある?

三橋:「やるしかない」みたいに越えたかな。先生に聞けることはなんでも聞こうって。

恒光:最後の方とか、先生個人にお昼の弁当を食べてもらって、フィードバックもらったりとかしてて。良い意味でがっついていたなと思う。

三橋:お弁当を作ること自体で、盛付が上手くなったとかはないけど。なにが良かったかというと、先生との話題が広がるというか、自分の知らない情報を引き出せるようになったり、先生はこういうのも知っているんだっていうのがあって。その会話から生まれたのが、ネギとワカメのヌタ漬けなんですけど。

「先生にまだ聞けていないことが、まだあったんだ~!」というのが、それで一気に広がったというのもあるし。それで、「じゃあ、次にこれをやろう」ってなったり。

恒光:次年度の生徒の為に、先生からより多くを引き出す為のアドバイスは?

三橋:先生にお弁当を作れば良いと思う(笑)

和え物の話で、「お弁当に入れられる和え物って何があるんですかね」って話で、わたしはバリエーションがなさすぎて行き詰っていたんですけど。
先生に聞いてみたら「ん~、色々あるやろぉ」って言いながら、沢山アイデアが出てきて。それで出来たのが、こないだの胡麻和えですね。

恒光:今の三橋の料理は、どんな段階なのかな?

三橋:なにかを作ろうとなった時に、こういう風にしたらいいんじゃないかなぁ、みたいな大まかな目安は持てるようになった。先生の離島キッチン海士での下処理とかを見てきたから、そういう目安を持てるようになった。

恒光:では、最後に進路先について。面白い進路先を持っていると思う。
まずは、野菜の直売所でインターンをするんだよね。

三橋:私は島食の寺子屋に入る前から、直売所をやっている方の奥さんがやられている料理教室には通っていて。

その先生が食材をすごく大事にしているのを見て、すごい私が感動したんでしょうね。

恒光:それが、寺子屋に入ったきっかけだったのかもしれないね。

三橋:そうかもしれない。もっと、ちゃんと知りたいって。

恒光:進路先に話を戻すと、料理とは間接的な繋がりになる、直売所をやろうとしていると。

三橋:まだ、やるか確定してないですよ。話がもとに戻りますけど、私はすごく欲張りなので。。

自分の為にやっているけど、やっていることが周りに悪影響を与えたくないのもあって。環境問題とかもそうだし、自分が作ってそれが良くないことに繋がったら嫌だなって。

恒光:なにもできなくなる(笑)

三橋:そう(笑)

でも、まだましかな位のところまではもっていきたい。
すごく無駄なことをしているよりかは、できれば役に立ちたいから(笑)

結局は、作っているひとの顔が見えるのが、やっぱり良いなと思う。
それを、周りの人に知ってほしいというのはあるけど押し付けたくないし。人それぞれ考え方があるし。

でも、ひとつの選択肢として拡げてもいいのかな。

恒光:拡げるというよりかは、やっていてそれを見た人が近づいてくるくらいのスタンスかな。

三橋:できれば仲間になって欲しい位。
一緒にできたら楽しいよねくらいの。食材を大事に料理をして、美味しいものを一緒に作って食べようよって。そういう人たちが沢山いたら楽しいし、良いじゃんって思って。

食材を作っている人も幸せだし。大事に食べてくれたら嬉しいし、美味しいもの作ってくれて有難うとも言えるし。

近くにそういう人たちがいると安心だなって。小さいところで協力しあって暮らしていけたら素敵だなって。

とはいえ、生活はしていかないといけないから。仲間であったりファンになってくれる人がいれば、上手い具合に循環していけるだろうし。

恒光:頭の中では上手く循環できる仕組みを作れるんだろうけど、実際に形にしていくのが難しいんだろうけどね(笑)

三橋:そうそう(笑)

やろうと思ったら簡単なんだろうけど、上手く回せるかといったら、そこは別問題だから。

恒光:話も長くなってきたし、最後に今後について一言抱負を。

三橋:まず自分の考えを人に伝えるのことを上手くなりたい。人に関わることが多かった一年だったからこそ、なおさら思いました。それで自分が損するし、伝わらないことで。

あと、ここで後悔した「必死さ」が最初は足りていなかった。やっぱり、先生に毎日弁当を作らないと(笑)

恒光:最初からそれやっていたら、絶対に途中でエンストするだろうね(笑)

三橋:必死さがあった方が学びやすいかも。私の性格からすれば。

恒光:少し話を挟むけど。必死さと余裕は両方大事だと思う。なにかと距離が近いから、目の前のこととかにとらわれがちだけど、ちょっと余裕をもって自然を見渡してみる時も必要かな。ちょうど今も鶯が鳴いたのも、初鳴きを嬉しく思える余裕があるのとないのとで、日常の時間の流れは違ったものになってくると思う。

三橋:そういう余裕を持つことは好きだから大丈夫です(笑)

本当に頑張らないと地元に帰ったら。ゼロからのスタートという道のりだし。

恒光:お店に入る選択肢はないの?

三橋:全然、選択肢としてあります。週3日くらい直売所で、残りはバイトしながらで。野菜の直売所って儲からないから、そっちをメインにやったら大変。

恒光:そもそも直売所って、なんでできたんだろうね。

三橋:最初に流行ったのは、直接持ってくるから新鮮で安いのが売りだったと思うんですよ。でも、どっちかというと、私はそうじゃなくて。

普通の直売所は、新鮮だっていうのと。JAとか通してないから安いし種類が豊富だけど。でも、安さを売りにはしたくなくて。「こういう人が作っている、こういう風に頑張って作っている」というのがわかる直売所にしたい。

やっぱり目的が他の直売所と違って。だから、直売所という表現が合っているかどうかもわからないです。

恒光:料理屋さんのワンコーナーに野菜が並べて売られているみたいな。

三橋:そっちの方が近いかもしんない。

恒光:寺子屋としては、料理に直接的に関わってほしいとは思うけどね。

三橋:バイトをするとしたら、調理系のものになるとは思う。ここで学んだことが勿体なくなるし。

恒光:話が終わらないので、一旦ここで区切りましょう。
1年間、本当にお疲れ様でした!これからも頑張ってください!

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2022年3月13日収録(@島食の寺子屋校舎 大掃除の途中に)