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ソーシャル坊主起業奮闘記 #9 「拘束3時間、関係者6名で挑んだ初営業」

このnoteでは、ビジネス経験のない僧侶たちが新電力会社の起業に至った物語や、いまなお悪戦苦闘し続けている様子を、取締役・霍野の視点で赤裸々に告白します。

今回は、採用を終え電力供給の仕組みも学び準備が整い、いよいよ満を持して営業に繰り出すものの、早速に壁にぶち当たる様子を書き進めます。

亀のようなスロー営業

マスコミにリークされ、大炎上した結果、想定外の形でテラエナジーの名前は広く知れ渡ることになりました。

炎上の記事はこちら!

確かに、フライング報道は決してポジティブな内容ではありませんでしたが、記者会見も行い、多くのテレビ・新聞でも取り上げられ、私たちのやりたいことや想いは発信されています。これで営業もしやすくなるだろう、いっぱい契約とるぞ!と意気込んで営業に繰り出します。

僕たちは僧侶が立ち上げた新電力会社。そのネットワークを最大限に活かすべく最初の営業地として定めたのが、浄土真宗の熱心な地域として有名な広島です。しかも代表の竹本は、広島で宗派を超えた有志の僧侶たちと自死の活動に取り組んでいて、既に新電力会社の立ち上げについても相談していて、ある程度は契約が見込める状態。

しかし、これまで営業経験ゼロ。みやまパワーHDにサポートいただきながら、初の営業にいざ出陣。

気合いを入れすぎてしまい、住職1人に対して関係者6名での営業となりました。しかも、伝えたいことが多くて、あれもこれも話していると、あっという間に3時間経過。起業にあたって以前から相談していたこともあり「それだけの想いをもってするなら応援するよ」と快く初契約をいただきました。

そのとき必死だったのは言うまでもありませんが、いくら好意にしているとはいえ、情報量も多く、拘束時間長いにも関わらず、うんうんと話を聞いてくれて、ご契約いただいた住職には感謝しかありません。

その後も、人脈を頼りに営業にまわり、賛同してくれそうなお寺さんを紹介してもらうなど、最初の数ヶ月は亀のようなスピードながら着実に契約を増やしました。訪問させていただいたお寺の成約確率は8割という快挙。

そのとき竹本と一緒に営業に回っていたのが、コメディアン僧侶の木本 (現在は退社)。キングオブコントに出場した経験もあり、楽しく仏教を伝えたいと友人僧侶とお笑いコンビを結成して活動しています。その個性を爆発させようとした (けど中途半端な感じになっちゃった) 営業日誌がこちら。

そもそも営業日誌で面白いこと言えるはずないって怒られたのが懐かしい (笑)。

地域拠点としてのお寺の可能性

営業へ回りながら、お寺を中心にしながら寄付つきの仕組みを活用した地域活性の方法を模索していました。

東広島のとあるお寺で、テラエナジーがファシリテーターとなり、住職と仏教壮年会 (檀信徒の壮年男性グループ) の有志と、地域の課題やこれからのお寺の在り⽅について意⾒交換会をする作戦会議を実施しました。

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【地域課題】
・ 少⼦⾼齢化が進み若者が集落に居ない。
・ 関係性の希薄化。昔は隣近所のことを⼤⽅把握していたけれど、地域の集まり事に参加しない⼈も増えて、最近はよく知らない⼈も増えている。
【お寺の未来像】
・ ⼦どもや若者がお寺に来てほしい。そういう世代が関⼼をもってくれる取り組みを⾏なっていきたい。
・ 貧困家庭の⼦どもたちに対して、寺⼦屋 (教育を通した格差是正の取り組み) を実施したい。
・ 住職は海外留学経験もあり、視野が広く、地域教育に対しても想い入れがある。

そのような声をもとに、お寺の近隣にある広島大学の学生団体mahoLabo.の方々と私たちがお会いして、お寺の課題やこれからの可能性について意見交換。

その後、お寺の住職と学生たちをつなげました。数ヶ月後、大学生たちがお寺で合宿を開催し、夜は住職をはじめ、地域の方々と交流。お互いに良い刺激を与えあい、お寺で地域の子どもたちを集め、地域の文化やユニークな人たちと出会えるような学び場を実施しようと盛り上がりました。

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その後コロナの影響もあり、具体的に事業を実施するには至っていませんが、お寺を中心に世代を超えた地域内交流が生まれ、小さくとも地域の人による地域のためのプロジェクトが動き出すという兆しは確かに見えています。

mahoLabo.のウェブメディアで住職が紹介されています!

見えてきた現実

一方で多くのお寺に営業して、檀家さんをはじめ地域の人たちが地域活性のためにお寺を活用しようと前のめりに協力してくれるケースは決して多くないことを知りました。お寺側としても、檀家さんに協力を仰ぐのは電力会社特有の様々なリスクがあることも分かってきました。

「檀家さんと付かず離れずのほどよい距離を保っていたけど、生活に根付いた電気を紹介すると、なにかトラブルがあったときにお寺の責任も免れないから、関係性が変わってしまうリスクが怖い」
「なんでお寺が電気会社を紹介するのか、檀家さんへの説明が難しい」
「檀家さんに話を聞くと、どこも新電力からの営業電話をうざがっている。そんなイメージがあるからお寺から電力の話はしたくない」
「外部の人が思ってるほど、檀家さんはお寺のことを信用していない。お寺も檀家さんのことをよく分かっていない」
「電気代が安くなって寄付につながる。しかも、環境に優しい。そんな上手い話は世の中にない、あやしい」

お寺の規模や地域性、檀家さんとの関係性などにより聞こえてくる声は様々でしたが、想像していたよりも、お寺をハブにしながら活動を拡げていく難しさが見えてきました。理想と現実、その困難さを痛感。

さらに、半年も経つと、人脈での営業も限界を迎え、徐々に契約件数も鈍化していきます。

そうしたなかで、寄付つき電気の仕組みはお寺だけに止まらず、ソーシャルグッドな団体や取り組みにもっと積極的に使ってもらえるんじゃないかとの想いが強くなり事業の枠組みが拡がっていきます。

変化の兆しが徐々に起こってるような気がする

ちなみに、あれから3年が経ち、仏教界においても気候変動やエネルギー問題に対する意識が少しずつ変化しているように感じています。

京都市では宗教都市の特性を活かすべく仏教界向けの気候変動研究会を実施。テラエナジーも協力させていただきました。

仏教系の報道メディアで気候変動が話題になりました。

さらには、幾つかの本山が取り組みに共感しテラエナジーでんきに切り替えてくれました。また、地域のお寺が連携してテラエナジーに切り替え、その寄付金を地域貢献に資する取り組みにご活用くださっています。

お寺を舞台にしたソーシャルグッドな取り組みの創出は、テラエナジーとして全力でサポートできればと願っておりますので、ご関心のある方はお気軽にお問合せください。

次回は、ソーシャルグッドな団体や取り組みにもっと積極的に使ってもらえるんじゃないかとの想いを強くし、社会的な団体と連携していく様子を書き進めます。

霍野 廣由(つるの こうゆう)
1987年福岡県生まれ。浄土真宗本願寺派覚円寺(福岡県)副住職。龍谷大学実践真宗学研究科在学時に、自死・自殺や終末医療、高齢者福祉の活動に携わるとともに、寺院活動を研究する。大学院を修了し、認定NPO法人京都自死・自殺相談センターに就職し、現在は事務局長を務める。2018年、ソーシャルグッドな新電力会社、TERA Energy株式会社を立ち上げる。相愛大学非常勤講師、浄土真宗本願寺派子ども・若者ご縁づくり推進委員など。

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テラエナジーでんきへのWebサイトはこちら
https://tera-energy.com/

5分で完了!テラエナジーでんきのお申込みはこちら
https://tera-energy.com/biz/

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