見出し画像

再握手

強く願うと叶うタイプの人がいる。

会社の女性の先輩がそうだ。運をもっている。


その先輩がずっと恋焦がれている俳優さんがいた。

綾○剛。

あるとき先輩は仕事終わりに、行きつけの三宿のBARで一人飲んでいた。

重い扉がゆっくりと開く。

入ってきたのは、なんとまさかの綾○剛、本物だ。

ただ、彼一人ではなく、取り巻きの人も何人かいる。

とても話しかけられる雰囲気ではない。

しかし、その先輩の社交力は半端ない。

取り巻きの人と仲良くなれば可能性が切り拓けるかもしれない。

そう考えた彼女は、取り巻きの一人に話しかけ、

タイミングを慎重に見計らいながら、さりげなく綾○剛好きをアピールする。

するとテーブル席の上座で飲んでいた綾○剛に、

その取り巻きが声をかけてくれ、呼んでくれたではないか。


ついに握手をするタイミングが訪れたのだ。

写真でもサインでもない、肌と肌が触れ合う握手。

これまでに感じたことのない胸の高鳴り、カラダの震えが待っている、

握手をした瞬間、電撃が走るに違いない。


「大好きです」と告げながら、ついに手を握る。

手を握った。ぎゅっと手を握っている。しかし、おかしい。

やさしく包み込むように手を握ってもらっているはずなのに、

思ったほどの感動がおそってこない。

そんなはずはない!おかしい!もっとズキュンズキュン来るはずなのに、

いっこうにアガってこない。

でも、その先輩は、「綾○剛」というコンテンツで、

どうしても感動したくて、

握手が終わってすぐに、

「すみません、もう一度握手いいですか」と再握手を求めたのだ。

綾○剛はキョトンとしていたらしい。


きっとスクリーンの向こう側にいる彼に憧れを、妄想を、

抱きすぎたのかもしれない。

反省した先輩は、もう憧れの俳優に遭遇しても

接近するのはやめようとおもったそうだ。


新たなコンテンツの制作のために大切に使わせていただきます。何に使ったかは、noteにてご報告させて頂きます。