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放送後記 『ちゃぶ台のラジオ』#5


初のリモート生放送☆

実はこの番組本放送が月曜日に決まった時(7月)からの懸念事項だった。

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自身3度目の個展『まっすぐにみる』が決まったのが今年4月(!)会場のナインギャラリーの企画展は月曜搬入の火〜日までという会期が1サイクル。つまり搬入日と放送日がモロ被り問題。そんな状況でもホントに頼りになったのがミキサーのかっか君。「出張リモート生放送」もなんのその。

ゲストにはナインギャラリーのオーナーにして、写真界ではちょっとした有名人のAD・三村 漢 ちゃんのご登場。装丁のキャリアを重ねるうち「写真をどう見せるのが伝わるのか?」を考える機会が増え、それが得意と自覚したが故に、写真の方に身を振っていくことに。

アートディレクター・装丁家。1978年横浜市生まれ。
実父である三村淳デザイン事務所を経て、2008年niwanoniwa デザイン & 編集事務所を設立。写真集や装丁、広告デザインや写真展構成、ブランドのアートディレクションなど。写真ディレクションを得意とし、企画から印刷、販売まで関わることで、残るデザインの作り方を提唱。装丁・写真集、写真展など多数。2019年 Nine Gallery設立・主宰。
日本大学藝術学部写真学科・日本写真芸術専門学校講師。


キッカケは「ナンパ」?(そして少し酔ってますw)

長いこと、しかも「濃く」お世話になってます。仕事が細い時期でも niwanoniwa(写真のディレクションがほとんど)のイラスト使用案件の時は結構な頻度で仕事を振ってくれているのはホントにありがたい限り。

遡って見れば、キッカケはFacebookからの「ナンパ」でしたw

ちょっと自分の話で恐縮ですが、出来立てホヤホヤの個展会場からリモート生放送という番組初の試み。思いのほか設営も早く終わり、ちょっくら飲みに行ってしまったのだw(なにげにコレが今年(2021年)いちばん美味いビールだった☆)

だからというワケか最初の選曲には ケツメイシ「雨のいたずら」

(ジャルジャル出演のこんなオモロイPV があったことをあとで知る...)

結局カタチにできなくて悔しい思いはしたが、昭和のコントにあったような「あちらのお客様からです」スッとカクテルが差し出されるステレオタイプな、でも現実では見たことも、もちろんやったこともない「あのシーン」を一点透視図法つまり「まっすぐにみる」アングルで描いてみたいという意図があっての選曲。

結局年末まで変わらずハイペース +(この日も話題に上ったが40歳、45歳でガクンと体力が落ちる問題に直面したのもあってか新作も産み出せず... 泣)で形にできなかったのだけど 。。

誰にでも撮れるが故の『映え』の限界

「随分と写真も身近なものとなり、撮って《表現》すること自体は誰にでもできるようになった今、写真のAD から見て素人・初心者に何を言うか?」を問いかけてみた。

いわゆる「映え」で片付いてしまう、「目に留まるもの」「好きなもの」は当然見るし撮るし、ある程度伝わるハズ。ただ、仮に同じ画面を絵に描くとして『(うっかり入ってしまった)通行人とか描きますか?』『この背景必要ですか?』などを聞いてみる。単純に四隅まで見えてない。画面の作り込みがちょっと雑だと感じることが多い。


続けて「写真のディレクションって、端的に不言語化するとしたら?」と。

撮り手は興奮した瞬間にシャッターを切る。その『色』をしっかり(最終的に印刷物になることが多い)、作家の思い・真意を「伝える」ためにあらゆる手段を駆使してカタチにするのが仕事。

『写真家がいてくれなければただのプータローですw』なんて謙遜しつつ、
『写真家(イラストレーターも)は《おしゃべり》できた方がいい』とも。
(作品作り続けるのは大前提ね)もはや誰でも表現者になれる昨今、そこも重要だと。つまるところ「プレゼン術」「セルフプロモーション能力」「単純に好かれる人たれ」といったところか。

「たまに行きすぎる時あるけどねw」と落としつつも「その点テッポーさんは大丈夫でしょ」とのお墨付きも頂いてしまった。
(ちなみにFacebookからナンパしたのは僕が最初で最後らしい。あざす!)


「使い捨て」が悔しくて...

『残るデザイン』を提唱しているところ、もう少し突っ込んでみる。

例えば週刊の雑誌だったりすると使い捨てみたいになってしまうのはデザイナーとしては悔しかったりして。「通り過ぎるからこそ面白い」デザインというのも確かにあるけど、スピード感がありすぎてどうしても作りが雑になってると感じることが増えた。であるならば「モノとして」「人の心に」残る形にしたい。そのためにはある意味での「裏切り」が必要。

ストレートと思いきや脇腹に来たり、というような、捲るたびにドキドキしてしまうものづくりのしかたを復権したい。

「90年代の雑誌とか、もっとワクワクした気がするよね?」と意気投合。
との流れから「つい口ずさんでしまう曲」「聴いててドキドキしてしまう」曲ということで漢ちゃんのリクエスト。

Lukas Graham / Happy For You

基本的にヒップホップやブラックミュージックが好きとのこと。

逆質問で「やっぱレゲエ・スカ好きなの?」→ Yes。ついでに普段のラジオは(FMの「意識高い系」な発信に少し疲れたようで)AM が断然増えた。

「やっぱ 45(漢ちゃん:43/テッポー:45)やっぱ体力落ちるの?」
(→ 先述のとおり)... 少し中年の飲み会の様相を呈してきたから話を戻す。


本人が「これっ!」というものに限って...

出来上がったデザインを料理・イラストレーションや写真をその素材と例えるのが今のところいちばん伝わりやすいかなと。ディレクター(料理人)の立場で心がけていることは?」

ディレクターとして「作家の《思い》をファンに届ける作業」と心得て知恵を絞ったりするのだけど、作家の「思い入れ」が邪魔してしまうことがある。話を聞いてみると、「すごい苦労して撮ったからどうしても入れたいんです」なんてことも多々。でも受け取る側は知ったこっちゃないし、実際そういう写真ほど大したことなかったりするw
それを削ぎ落としてあげるのは大変だけど僕らの仕事だと思ってる。

やっぱり「デザインは客観視」だなとあらためて。


こんな変態だからこそ...

片や絵のはなし。

テッポーの素材ってのは「毒というかクセが強い」諸刃の剣でもあるけど『人を魅了する、狂わす?』そんな強さがあってシコリが残る絵だと思う。それを「料理する」「素材を活かす」となると、特に手を加えようとは思わない。というか頼む時点でそれを知ってるからねw

まぁ「普通(そもそも普通ってなんだよ?)の絵」を求める人は初めから来ないだろうし頼んでもあんまり意味ないでしょう。

別方面での某プロデューサーからもらった進言も紹介(さすがの言語化力に漢ちゃんも苦笑いw)。

個人的には大好きだし何度も候補として提案してるけど、同じテイストのままで通るのは数年に一度くらいなのかな?な感触。 クセが強すぎちゃう.... 今の絵を簡素化したり、抜きどころを覚えるなりして低単価に耐え得る術を身に付けるという道が一つ。もしそれを選べないのであれば、足りないのは『開き直り』だけなんじゃない?

さすが広告やブランディングで結果を出している人の言葉だ。
漢ちゃんからも『それ最高じゃないすか!?』と来た!
いくら個展の前夜祭とはいえ「ごちそうさまです」すぎるw


「仕事の絵」と「作品」と。

「で、どうなんですか?」逆質問が。
「実際クライアントの方に寄せてくれ、的要求は来ることはあるの?」

『ぜひ実際に見比べて貰えばわかると思う』と前置きをしたうえで、

今回の描き下ろしのような依頼はそうそうないと思う。片や作品数の都合もあって、テーマが重なる仕事の絵を結構出してて、実際の仕事だとそのテイスト、要は『早く上手く味のある絵を描いてくれ』という形がいちばん多い。ただ仕事だから、その方がある程度自分で計算できる安心感というのはある。

ただ4年ぶりの個展という事実が物語っていて、「仕事としてだけ」とか「描かされてる」絵になってんな... みたいな時期は確かにあった。
かと言って隅々まで描き込んだ、自分の気に入った『作品』に何が込められているかといえば、結構「どうでもいいこと」だったりする。

実際、イラストレーションを通じて言われるメッセージも同様だったりすることは少なくない。「重い・お堅い」情報に取っ掛かりを作るとか「伝わり難い」ものをわかりやすく、みたいなこともイラストレーションの大事な役割の一つ。「自分の絵ってナンダ?」なんて悩んだ時期もあったけど今は『どういうスタイルで描こうが自分が描いた絵は自分の絵だ!』
ようやくこの数年でそう思えるようになった。


作品どうすか?

強いてもの足りない点を言うのであれば「もっと時間があったら描けたのに...」くらいか。少なくとも初めて見たと人を驚かすくことはできるかな、とは思う。に対して漢ちゃんからの「感動した」とのコメントは嬉しいですそりゃぁ。加えて、

ある意味ファンタジーな世界を垣間見てるトコロと、本質のディテールをしっかり切り抜くというか、引き抜くというか... その辺の上手い掛け合わせがなんか... 他の作家とはいい意味で全然違うと思う。

さらにリアルでありながらリアルではないと。

たしかにファンタジーという自覚は全くと言っていいほどない。それは何なのだろうか... 掛け合わせか考え方か...「作家」としての立場での個展となると、普段の仕事ほどにはそこにデザイン的な要素はない。それこそ自分でも言語化できないような「なんとなく」とか「見て(視て)感じてください」という余白は当然あって良い。

さらに「これってパッと思いついたの?」「昔から温めてたアイデアなの?」との質問。一点透視を選んだキッカケは、長いこと記憶に残っていたひとつはこの画(映画「シャイニング」より)。

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常にあるのは空間的な絵を描きたいくらいのところか。
下手だった頃の絵やアイデア止まりだったものなども「一点透視」できるだけ描いてみようと思った。

物をひとつ描くでも真正面から描けば、考え方としては一点透視だ。そこを明言することで、同アングルの仕事の絵やちょっと前のオリジナルも多く出す口実になった。すかさず漢ちゃんが「一度何も考えないで見てもらって《まっすぐに》見た上で、もう一度そこを踏前て見てほしい」と。
(おかわりの展示が 1/21 〜 25 まで)

最後は展示のタイトルも鑑みてこの日ラストの選曲。

Spinna B ill & the Cavemans 「まっすぐに」

(選曲理由に引用した「新しい自分を作るには新しい自分であるべき」とのパンチラインに入る前に時間の都合でフェードアウト...)


ホントその通りで...

いつもの質問「デザインはみんなのもの」を伝える時、自身の言葉で伝えるとしたら?

「人のものをよりよく見せる」(デザイナーによっては「押し切る」人もいると思うけど)+ もうちょっと、もうひとつだけ自分の思いを乗せたいし、それができた時が嬉しい☆
自覚がなくても『思い』というのは誰しもある。ただそこと表現が噛み合ってないことは多い。そこを引き出して形にできた時が嬉しい。と語る。

最後に漢ちゃんから
『テッポーさんもこれから進化しないといけないからね作家としても』
との愛ある激励もいただいた。
緑茶割りも写り込む「出来上がった」顔ですねw

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(2ヶ月遅れのため、この翌月 '21年12月20日、Ultra Super New の糸見仁志さんゲストの回は時間でき次第投稿します。)

【リアルタイムの次回予告】
  2022年1月17日(月)21:00 〜
  ゲスト:中村 菜都子 さん(イラストレーター・版画家)


最後に「おかわり」(@東久留米)の告知だけ。 ※上記放送の週末から

チラシA4_ol

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