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2024オリンピック・イヤーと日本のバレーボール(男子バレーみどころ)

(写真FIVB)


世界のバレーボールのビッグ・タイトルは4年に一度の「オリンピック」

サッカーやラグビーなどは、世界一決定戦としては、「ワールドカップ」が大きなタイトルとして歴史も伝統あり、広く人々に認知されているものです。
バレーボールでも、各種の国際大会で世界一決定戦が行われるのですが、やはりバレーボールでは、「オリンピック」が、各国代表が熾烈な競争をして世界一をつかみにいくビッグタイトルとなっています。
オリンピックの中に、バレーボールの数々の歴史や名勝負があり、オリンピックを節目に、バレーボールの戦術やスキルのトレンドをみることができます。

サッカーやラグビーなどは、世界一決定戦としては、「ワールドカップ」が大きなタイトルとして歴史も伝統あり、広く人々に認知されているものです。
バレーボールでも、各種の国際大会で世界一決定戦が行われるのですが、やはりバレーボールでは、「オリンピック」が、各国代表が熾烈な競争をして世界一をつかみにいくビッグタイトルとなっています。
オリンピックの中に、バレーボールの数々の歴史や名勝負があり、オリンピックを節目に、バレーボールの戦術やスキルのトレンドをみることができます。
オリンピックのバレーボールの試合に「バレーボールの今」が凝縮されており、戦術や技術の試行錯誤の「現時点での答え」を観ることができると思っています。
そして、2024年パリ五輪のオリンピック・イヤーにあって、毎年行われているバレーボール・ネーションズ・リーグ(VNL)は、4年に一度の世界一というビッグ・タイトルを狙うチームにとっては、五輪本大会を見据えたエキサイティングな試合を観ることができます。


なぜ、バレーボール男子日本代表はすごいのか?

長い長いトンネル(低迷期)を打ち破ってきた

バレーボール男子が、世界の頂点に立ったのは、1972年のミュンヘン五輪。もう半世紀前のことです。
伝説ともなっている、準決勝のブルガリア戦では、セットカウント0-2という絶体絶命の状態からの大逆転勝利。決勝で東ドイツを破り金メダルを獲得した。この金メダル獲得は「ミュンヘンの奇跡」と呼ばれたりしていますね。当時の日本チームを率いていたのは松平康隆監督。1964年の東京オリンピックではコーチとして銅メダル、1968年のメキシコオリンピックでは監督としてチームを銀メダルに導いています。しかし、当時「東洋の魔女」と称され絶大な強さと注目度を誇る、日本代表女子チームに話題が集中していた中ようやく1972年のミュンヘン五輪で金メダルを手中にします。
1980年代以降、バレーボール男子日本代表は、国際大会の中で長い低迷期を平成期まで続くことになります。この半世紀にわたる長い長いトンネルを打ち破って、現在の強さがあります
日本代表女子の活躍を見ながらの革新的な勝利を手に入れる点、現在世界のバレーボールをけん引するポーランド代表と重なる進化の歴史、限られた選手に依存しないたくさんのヒーローの出現・・・など、これからのバレーボール男子日本代表には、半世紀前の栄光に通ずる新たな伝説をつくってくれそうな期待感しかないくらいの現在位置なのではないでしょうか?

チームスポーツの進化としては異例の短期間で目覚ましい変化

サッカー、バスケットボール・・・など、複数人で構成されるチーム種目において、選手やスタッフが意図的に思い通りの変革をともなう強化を実現していくのは難しいとされています。
よく、頂点に立つチームには、そのオリジナリティある武器や特徴があると言われることもありますが、個人的にはそのようなものは、最初から確信的な発見や設定があって成されたものではなく、ひたすら仮説からトライ&エラーと試行錯誤を重ね、データーや経験の蓄積から徐々に必要な戦い方を実装していく・・・。そういったグラデーションを重ねた先にできあがるものが、オリンピックで発揮され答えになっていくのだと思います。
ここでは語り切れませんが、この半世紀にわたる、日本のバレーボール界に漂っていた固定概念というのは、本当に岩盤以上に厚く固いものがありました。個人的には、行き着くのが半世紀前の日本のバレーボールが打ち立てた実績から語り継がれてきた指導方法や思考、文化が影響していると考えています。
しかし、国際情勢をみても、歴史をみても、政治や経済をみても、「半世紀」という期間は、劇的な変化を見せているわけです。その環境や社会の大きな変化の一部分に人間の営みであるスポーツ、バレーボールもあるわけですから、バレーボールも大きく変容しているわけです。さらには、バレーボールは「ルールの変更」も他競技に比べて大きいです。殊更にバレーボールの内容は変化して当然なわけですが、日本のバレーボールはその潮流に乗ることができませんでした。
そのような閉そく感を、日本のバレーボール男子は、2010年代末からアップデートを見せ始め今日に至っています。このような急成長の進化の過程は、他のチームスポーツをみても、なかなかレアなことではないかと思います。

個人に依存しない誰が出ても強いバレーボールの実現

近年の、バレーボール男子日本代表の強さには、石川選手、西田選手、髙橋 藍選手などが注目されがちでしたが、今や、ここでは紹介すると長くなってしまうくらいの、たくさんの選手たちが活躍し、どの選手も「無くてはならない」「必要欠くべからず」な存在として活躍をしています。
日本の低迷期では、少なからずスター的な存在となる選手がいました。時として過度な注目や期待がのしかかり、その選手のパフォーマンスの支障になることもあったように思います。同時に周囲の眼だけでなく、目指す「バレーボール」の姿も、個人に依存しているような戦い方が多かったです。
このように、世界の強豪チームを相手に、堂々と戦い、互角にそしてそれ以上に戦える選手たちが、次々と登場し、委縮することなくそれぞれの結果を出せる強さも、低迷期には見られない、素晴らしい変化なのだと感じています。


なぜ、バレーボール男子日本代表は強くなったのか?

2024年パリ五輪でのメダル獲得も期待される、バレーボール男子日本代表チームの進化と強さにおける凄さを、
・長すぎた低迷期の打破
・短期間でのアップデート
・誰が出ても戦えるバレーボール
という点でまとめてみましたが、
2024年パリ五輪への出場を現時点で決めており、メダル獲得を標榜して強化を続ける日本代表チームがなぜそれらを実現しているのか?
あくまでも「※個人の感想です」の域を超えませんが、個人的に考察していることを挙げておきます。

(1)世界のバレーボールの「今」を吸収しはじめる

選手個人としてのキャリアだけではなく、日本のバレーボール界全体やその将来を考えて行動しリーダーシップを発揮した柳田選手、従来の監督像を排除し、積極的に日本のバレーボールのアップデートと国際化を図るために腐心した中垣内前監督、代表チームをコーチ時代から監督時代まで日本の強化に努めてきたフィリップ・ブラン。日本国外での経験を積んできた選手たち。その間成長を遂げてきた選手たち。そしてそれ以前に様々なチャレンジをしてきた選手や関係者。とても表に出ている情報だけでは説明しきれない、膨大な要素が、今の日本の男子バレーボールの進化に関与しているのだと思います。
いずれにしても、東京2020オリンピックを見据えた2010年代末からの日本の男子バレーボールは、ようやく「世界のバレーボールの今」を目に見えて遂行するようになりました。リードブロックを土台とした組織的ブロック、ブロックを基盤としたディフェンスシステム、サーブの強化、バックアタックの戦術化、MBのアタックとサーブの強化・・・などなどです。
この時点で、明らかになったのは、バレーボールという多様な人間で構成される集合体・組織が強さを発揮するためにまず着手しなければいけなかったことは、特異性や独自性の追求よりも、現時点で有効な「仕組み」を導入・実装して、その中でのパフォーマンスや戦術的判断の勝負をしていくことの重要性でした。

(2)「表層」から「本質」への経験の蓄積

オリンピックの前回大会である東京2020オリンピックでは、短期間で日本のバレーボールスタイルをアップデートさせ、長いトンネルを打破するという偉業があったと同時に、まだまだその当時の世界のトップチームとは力の差を見せつけられたのも事実だったように思います。
そこには、単なる強豪チームが見せるプレーの模倣だけでは立ち行かず、今行われているバレーボールという複雑系の見方や考え方、思考方法等をすべての選手やスタッフで理解し共有しながら、世界のトップレベルのバレーボールを自分たちの環境設定し、その中での試行錯誤を通して、まさに自分たちのバレーを世界を相手にフィットさせ形成させていく営みが必要だったわけです。
おそらく、その営みの中では、プレーの精度やパフォーマンスの向上だけではなく、いわゆる「ゲームセンス」とか「試合の嗅覚」などというものに通ずる、判断力や選択と決断の力、果敢なカウンターの意識などを育んでいったのだと思います。
「何をするか?」という意識から、何をするかはもうすでに自動化されて「どうするか?」という段階へ。そしてその意識も自動化され、今は「どう勝つか?」の段階に来ているのだろうと想像します。

(3)「カオス」を制する「バレーボール」なるものへの探究

「カオス」っていう言葉の定義も、様々な場で言われていますが、ここでは、バレーボールというものを構成する要素や左右する要素の1つでも変わった場合、全体としてのバレーボール・・・試合運びやゲーム展開、戦術の遂行力、個人のパフォーマンスやチームとしてのパフォーマンスに影響が出るというものと考えています。そしてその影響も、同じ要素の変更によって、出力される結果は同じような変化を見せるわけではない非線形な性質をもつものと考えています。
そのように考えたとき、低迷期の一部選手に依存したバレーボールでは、選手の入れ替わりは、ゲームのパフォーマンスに致命的な影響を与えたわけです。ですから、休ませることが難しくチームづくりの戦略やピリオダイゼーションを困難にさせ、選手個人やチーム全体の成長を阻害していたと言えます。
そして次の段階として、仮に「世界のバレーボールの今」で見られるプレーを、多くの選手が実装していたとしても、そのプレーがなぜ必要で、どういう判断力と決断力で発揮されるべきなのかといった、バックグラウンドを全員で共通理解し共有されていないと、せっかく持ち合わせたタスクも相手に効果をもたないことが多くなるわけです。
現在、パリ五輪に向けた本大会直前の重要な時期に行われている、今年のネーションズ・リーグでは、日本代表男子チームは、このあたりの課題もしっかりクリアしようとしてきているのではないでしょうか?石川選手、髙橋 藍選手を温存させつつ、甲斐選手や富田選手が躍動し、セッターやリベロも交替して活躍している。
従来、五輪出場権を目的に常に固定化されたメンバーが全試合「ガチ試合」をしなければなかった状況から、現在は毎試合いろんな選手が出場し、国際大会の中で勝利していく。その中には、選手の試合経験やコンディショニング調整・・・すべてを五輪本大会を見据えたプランニングの中で戦略を立てていろんな目的をもって臨むことができる。これらは、全員の個がスキルアップしていること以上に、「チーム」「組織」としての練度が上がってきていることに注目するべきだと思います。

(4)いわゆる「粘り」・・・多様なゲームシナリオの遂行力

今年のネーションズ・リーグの男子では、日本代表チームは、容易ではない戦いが予想された試合を制したり、ゲーム展開において相手にリードや奪セットを許しつつも追いつき逆転勝利をするなど、見る側にはハラハラ、ドキドキさせられる展開でもしっかりと勝利を得ている強さも特徴的です。
ここでも、「何をすればいいか?」というハウツー論や手段論のレベルを超越した、「バレーボールの戦い」の体現に近づいているのだと思います。
こういったものを、単なる「メンタルの強さ」だけで評論を片付けるのではなく、選手やチームスタッフの個々の膨大な経験や情報を英知として集積し、バレーボールの性質上必要なことを共有から徹底をはかり、かつそれぞれの主体性をいかんなく発揮できるチームマネジメントがあってこそ実現できていることなのではないかと考えます。


バレーボール女子日本代表にもがんばってほしい!

日本代表女子チームは、男子の低迷期にあっても、1980年代以前のような実績までとはいかないまでも、2012年のロンドン五輪で銅メダルを獲得するなどの活躍がありました。しかし、前回大会である東京2020オリンピックでは、その戦いぶりに精彩を欠き、立て直しが求められる声も出ている中で、これからパリ五輪の出場権にチャレンジしていくことになります。

個人的には、過度に悲観視せず、でも課題は多いと感じています。
世代交代が難しいと言われるなか、良いゲーム展開がみられることにも期待感があります。古賀選手のパフォーマンスは世界一級品だと感じていますし、石川選手や関選手などの世界での経験が生きることも期待感があります。MB(ミドルブロッカー)の進化も感じています。
しかし、俯瞰的には、日本の男子ほどの劇的な進化は見られず、遅々として進んでいない印象も一方ではあります。
課題として感じているのは、
・選手の個に左右されやすい
・先行逃げ切りの展開がメインで、難局打破の展開が厳しい
・ゲームシナリオの固定化
・ピリオダイゼーション的な起用をとれない
・マッハとジェットという概念に幅や広がりの狭さという懸念
などがあります。

身近に、日本代表男子というアップデートのモデルがあると思っています。パリ五輪までもう時間は限られていますが、今後の挑戦と試行錯誤に期待をし、この夏は男女ともオリンピックの舞台で戦う姿を、みんなで応援し盛り上がりたいですね。


2024年は、みんなでバレーボールで騒ぎたい!

2024年、パリ五輪に向けて、バレーボール日本代表男子は、メダル獲得を射程圏内に入れて目下強化を邁進中であり、この「強い日本の男子バレー」に注目が集まっています。そして、日本代表女子もパリ五輪出場をかけた戦いに多くの人が応援しています。
ネーションズ・リーグ
パリ・オリンピック
2024年から始まる新V.LEAGUE
バレーボールのトップカテゴリのビッグ・イベントが目白押しの今年。
たくさんの人々と、みなさんと、バレーボールをアツく語り、アツく応援し、そして歓喜を分かち合う、そんな日々が増えることを願っています!

当ブログでは、超絶個人的な考察ですが、日本のバレーボールの今をまとめています。新しくバレーボールを知り、興味を持ってくださる方々の参考になれば幸いです。今後ともよろしくお願いします。

★「全国どこにでも参ります」
・選手、指導者のオンコートレクチャー
・座学での指導者研修会や講演
など
バレーボールの練習や指導、チームづくりをアップデートしたい方、一緒にバレーボールを楽しく学びたい方、
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(2024年)

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