見出し画像

ねんざ後にうまく走れなくなった選手へ

以前、ねんざ後の後遺症によって踏み込む動作の際に足首の痛みに悩まされる選手向けにおすすめのセルフケア方法を紹介しました。

今回は、これ以外にも起こりうるねんざの後遺症やそれに対する対処方法についてご紹介していきます。

足首のねんざは、医学的にみると靭帯損傷じんたいそんしょうであり、有名な膝関節前十字靭帯損傷ぜんじゅうじじんたいそんしょうと同等のものであります。

しかし、膝関節の靭帯損傷と比べると傷の治りが早いため早期から競技復帰することが可能です。それゆえに「痛みが引いた=競技復帰してOK」と解釈している人が多い印象です。

冒頭で紹介した記事でも触れていますが、ねんざ後に痛みが引いても足首の可動域制限や筋力低下などの後遺症が多く認められるのが特徴でもあります。

今回は、ねんざの後遺症(筋力低下)によってうまく走れず(トップスピードが遅くなった。切り返し・ターンが遅くなった。など)に悩んでいる選手たちにオススメのセルフケアをご紹介していきます!

ねんざ後に引き起こる筋力低下

ねんざをすることによって可動域制限だけでなく足関節周囲に存在する筋力も一時的に低下します。
足関節周囲の筋力はバランス(姿勢)をコントロールしたり、素早いスプリントをするためのバネを形成したり、さまざまな動作において重要な役割を担っています。

この後はどのような筋力が低下し、機能を取り戻すために必要なこと(リハビリ・トレーニング)についてまとめていきます。

|研究でも指摘されているねんざ後の筋力低下

ねんざ後は、足関節周囲の筋力が低下しやすくその機能が戻りにくい筋肉もあるとされています。

足関節外反筋力=長短腓骨筋
足関節底屈筋力=下腿三頭筋

特に下腿三頭筋かたいさんとうきん(ふくらはぎ)の筋力は受傷数ヶ月後も健側と同等のレベルまで改善しなかったとされています。

この下腿三頭筋は、スプリント動作において足関節を固定してバネのように蹴り出すために最重要とされる筋力です。

そのため、ねんざ後に「うまく走れなくなってしまった。」と悩む選手たちはこのような機能低下が影響している可能性があります。

|筋力低下=筋トレ?

筋力低下に対するアプローチは「下腿三頭筋の筋力トレーニング(calf-raiseカーフレイズ」が一番に挙げられると思います。
このトレーニングはねんざからの競技復帰をしていく上で重要であり、これまで多くのアスリートに指導していきました。

しかし、ただ単純に下腿三頭筋のトレーニングを行っても最大限の出力がでないもしくは代償動作(かばった動き)が認められ、効果的に下腿三頭筋の筋力をトレーニングすることができないことがしばしありました。

その多くのケースで共通していたのは、下腿三頭筋を適切に機能させるための関節運動が整っていないことでした。

そのようなケースに対してcalf-raiseの前に、適切な関節運動(機能)に整えるアプローチを行うことで、下腿三頭筋へ適切な負荷や刺激を与えることが可能となり、効果的なトレーニングを行うことができました。

下腿三頭筋機能を最大化させるための段階的介入?

前述したように下腿三頭筋の機能を高めるためには、足関節の機能を整えたうえでトレーニングを継続していく必要があります。
下腿三頭筋に対するトレーニングは3つのステップに分けることができると考えています。

|下腿三頭筋機能最大化step❶
 -適切な関節運動-

下腿三頭筋の機能が最大限引き出すためには、大前提として適切な可動範囲を適切な軌道で動かせる状態にしておく必要があります。

ねんざによる腫れや靭帯損傷による骨配列の崩れが影響し、本来の可動性を失い、後遺症として残ります。
(詳しくは冒頭で紹介したnoteをご覧下さい)

下腿三頭筋に必要な関節運動のひとつに足関節底屈ていくつと呼ばれるものがあります。つま先立ちのように足をピンっと伸ばした足の形(姿勢)です。

この動きの理想は最大限底屈運動した際につま先がまっすぐ下に向いている状態です。つま先が内側に向いている(内股のような姿勢になっている)場合、適切な関節運動の制限が示唆されます。

制限されている場合、足首から指にかけて特定の場所をほぐすと改善されることが多いです。

上記のほぐし方で変化がない場合はアキレス腱周囲の硬さが問題として考えられます。
(ほぐし方は冒頭で紹介したnoteをご覧下さい)

理想的な関節運動を獲得することが下腿三頭筋機能最大化につながる土台となります。

|下腿三頭筋機能最大化step❷
 -クロスサポートメカニズム-

適切な可動範囲が獲得できた後は、下腿三頭筋と共同して機能する筋肉の機能を高めていきましょう。
下腿三頭筋の力を最大限発揮するためには強固な土台が必要です。いわゆる土踏まずと呼ばれる足のアーチがその役割を担っていると考えられます。

足のアーチはクロスサポートメカニズム(長腓骨筋ちょうひこつきん後脛骨筋こうけいこつきんの共同収縮)によって下腿三頭筋が働きやすい形で固定されます。

以下の動画のように内側アーチが盛り上がってこない状態は、クロスサポートメカニズムがうまく作動していないと考えられます。

クロスサポート機能を高めるためには、長腓骨筋や後脛骨筋を個別にトレーニングした上で、下腿三頭筋との共同で働けるようトレーニングしましょう。

|後脛骨筋トレーニング

|腓骨筋トレーニング

|長腓骨筋との共同トレーニング

|下腿三頭筋機能最大化step❸
 -さまざまな動作でのトレーニング-

下腿三頭筋の出力を最大限に発揮できる土台が整ったら、全可動域を下腿三頭筋で動かせるようにしていきます。下腿三頭筋は腓腹筋ひふくきんとヒラメ筋に分けられます。
とくにヒラメ筋はかかとを固定し下腿三頭筋全体の出力を発揮しやすい環境に整える役割を担います。
そのため、この筋肉にフォーカスを当てたトレーニングも非常に重要となります。

|ヒラメ筋強調トレーニング

また、さまざまな収縮形態で下腿三頭筋が機能できるようにトレーニングしていく必要があります。

とくに下腿三頭筋は、スプリント動作において瞬発的な力発揮が求められます。それによって足首を固定して強力なバネとしてスプリントパフォーマンスの向上に寄与すると考えられています。

以下のトレーニングでは、重心移動に対しても下腿三頭筋を中心に他の筋肉と共同して力発揮し、足関節を適切なポジションで保持できるよう意識しながら行いましょう。

|calf-raiseポジションでのスクワット

|ラテラルアンクルホップ

まとめ

ねんざの後遺症によってうまく走れなくなってしまった選手は非常に多い印象です。
特にスプリント動作で必要な下腿三頭筋の筋力は回復しにくい特徴があります。そのため、競技復帰までに必ずトレーニングを行いその機能を整えておく必要があります。

下腿三頭筋の機能を効率よく最大限引き出すには、共同してサポートしてくれる機能に対してもアプローチする必要があります。
今回お伝えしたように、働きやすいよう関節の動きを整え、共同してくれる筋機能を高めることでサポート機能に対してもアプローチすることができます。

うまくスプリントできなくなって悩んでいる選手がいたらひとつ参考にしていただけると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?