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noteまじメ日記(1)−卵とインフレと鶏−

今週、円ドル為替は1ドル150円となり、長年買い求めてきた1パック12個入り12ドルの卵は、日本円に換算してみると1800円になった。これって金の卵?いいえ白い卵。普通のeggといえども、そもそもどこかの州の鶏たちが日夜ひとつひとつ産み出していることを思えば、それはおびただしい数の尊い行いであり、少々高額になろうとも口卑しい人類が文句を言えるものではない。
なのに、またやってしまった。夕方の台所は西日がぎんぎんに背中にあたる。冷蔵庫から卵のパックを出して、頭に思い描いている料理を作るには、さて何個必要だろうかと、フタを開けようとしたところ、しまった、まるごと床に落としてしまった。殻からはみ出る黄身の黄色。1ダース全滅かどうかはまだわからないものの、多くは原型を保っていないようだ。しかし卵の殻というのはどうしてこのように脆弱なのだろう。本来なら有精卵の中でヒナが生まれ、ある日その小さな嘴で内側から破壊できるように、神か誰かが確実に形を保ちながらも弱々しくあるようにデザインしたのだろう。私の足元には無残に割れた卵らが恨めしげにこちらを見上げている。こちらからもまじまじと睨み返したところで、私はベッドルームへ急いだ。ベッドに仰向けに大の字になって寝転ぶ。そう、こういうときはそうすべきなのだ。床はあとで片付ければいい。まずはベッドに寝転ぼうではないか。あのような失敗はあとでなんとでもなるのだ。ベッドはいつも私のためにある。
ふと、子どもの頃に親戚の家の隣にあった大規模な養鶏場から、雨の日も晴れの日も聞こえていた、コッコッコッココという大合唱が蘇る。コッコッコッココ、コッコッコッココと絶え間なく聞こえていた鳥たちの声。
夕食作りにはまだ時間がある。ベッドの上には天井があって、もっと上には屋根があって、私はここで安心なのだ。明日また卵買わなくちゃ。

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