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歌舞伎座

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歌舞伎を見に行った感想です。
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#尾上松緑

三月大歌舞伎『伊勢音頭恋寝刃』メンズ着物をウォッチング

三月大歌舞伎『伊勢音頭恋寝刃』メンズ着物をウォッチング

狂気の美しさを堪能した幸四郎丈、振り返り。

近頃「無我」について、良く考える。例えば、マラソンのゴール目前にトップ争いをする選手たちは無我だ。狂気というのは、やがて「無我」に繋がるのかもしれない。『伊勢音頭恋寝刃』の松本幸四郎丈はスッキリと美しく、心の底にあるモノを見たようで、大満足だった。

通し狂言なので、スピンオフ・ドラマ風に場ごとの主役が登場し、金儲けを企む小悪党を退治して活躍する。「伊

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壽 初春大歌舞伎『五人三番叟』で新年の歌舞伎座をウォッチング

壽 初春大歌舞伎『五人三番叟』で新年の歌舞伎座をウォッチング

昼の部、一幕目の歌舞伎舞踊『當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)』の『五人三番叟』を観て、私はふたつの発見をした。

五穀豊穣を祈る舞踊『五人三番叟』は若手俳優の躍動感が魅力だ。赤・白・黒の揃いの衣装を身につけた五人が飛び跳ね、舞台を踏み鳴らす。この足拍子という振り付け、土の中にいる邪気を封じ込める浄化の意味を持つそうだ。ただのステップではなく、例えれば、太い丸太に持ち手を付けた「蛸胴

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錦秋十月大歌舞伎『天竺徳兵衛韓噺』で秋単衣の着物ウォッチング

錦秋十月大歌舞伎『天竺徳兵衛韓噺』で秋単衣の着物ウォッチング

『天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)』の舞台は、室町時代。序幕の二番は、佐々木桂之助(ささきかつらのすけ)のお家騒動。彼が窮地に至るまでの経緯、すなわち、足利将軍の宝剣が盗まれる場面である。

北野天神の鳥居の前に、宝剣の見聞のためのメンバーが集まって来る。豊後国の若殿で、刀の管理者である桂之助、本日の段取り役、刀の見聞役とその家来、蛇使いの大道芸人のふりをした怪しい人物。そして、桂之

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三月大歌舞伎『身替座禅(みがわりざぜん)』で歌舞伎デビュー

三月大歌舞伎『身替座禅(みがわりざぜん)』で歌舞伎デビュー

着物や帯の織元さんと話すチャンスがあっても、着物の話をするには自信が必要だ。そんな私の言い訳は「三味線を習っているんですけど」。

そして、目の前に並ぶ、凝った柄の小紋(こもん)への言い訳は「着ていく場所が、三味線の発表会だけなもので。ウフフ…」

すると、北国の織元さんは笑って言う。

「私のトコは冬場、雪ばかりでしょう。着物で出かけようとしたら、近所のひとから『今日はお祝い事ですか』と聞かれて

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