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【ネタ記事】家の髭剃りにインタビューしてみた

"インタビュアー見習い"とやらを名乗らせていただいて早や5ヶ月。私の周りの身近なヒト、まぁいわゆるお知り合いの方にお願いをして、インタビューを重ねてきた。

「あの時もっとこう聞いておけば・・・」
「もっと相手に合わせた熱量で臨んでおけば・・・」
「インタビューはよかったけど、それを記事にすると表現力が足りない・・・そもそも才能がないのでは・・・」etc

インタビューの数を重ねれば重ねるほど、後悔と自己嫌悪に苛まれた。私の周りの身近なヒトへのインタビューでこれなので、いざ初対面のヒトへのインタビューとなると、緊張して普段の実力の半分以上も出せない匂いがプンプンする。

こうなったら素振りをするしかない。インタビューの素振り。匂いがプンプンしないところまでインタビューの素振りが必要。("場数を踏む"って言えよ)

本番の試合でヒットやホームランを打とうと思うと、日頃の素振りが欠かせない。長いシーズンオフを終えたプロ野球選手ですら、キャンプインした後は手の平に大量の豆を作るそう。全ては素振り。来るべきホームランに備えた素振りを・・・・・・・・・・・・・・・・・

そうだ。

ヒトだけではなくモノにもインタビューしよう。

素振り=場数を踏むためには、ヒトへのインタビューだけでは足りない!特にコロナ禍では出勤すること自体も少なく、外に出る機会も少ない。

じゃあ家の中にあるモノにインタビューをすればいいじゃないか!家族に白い目で見られたっていいじゃないか!簡単に思いつくアイデアやからもうすでにやってる人もいるって!多分!

すべったって、面白いと思われなくたっていい。

大切に使ってきた我が家のモノたちを、深掘りして愛着が湧けば、素振りをした意味がある。

ということでモノへのセルフインタビュー第一弾は我が家の"髭剃り"にしてみた。

※以下記載されているインタビュー的な文章は、私がインタビュアーとして質問し、私がモノに成りきって答える"セルフインタビュー形式"を取らせていただいております。

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【プロフィール】ラムダッシュ ES-SF21さん 

2013年生まれ。パナソニック株式会社で生産され、ジョーシン藤井寺店に入店。あらゆる商品が存在するメンズシェーバー売り場の低価格帯グループに所属、とある新婚夫婦のもとに引き取られる。70歳になった今も現役シェーバーとして活躍しているが、コロナの煽りを受けて稼働日数が減少中。得意剃り:濃いヒゲもスパッと剃る『30°鋭角ナノエッジ内刃』


髭剃りの9歳は人間でいう70歳

ー本日はよろしくお願いいたします。髭剃りの方にインタビューをするのが初めてで・・・若干緊張しております。

「いやいや髭剃りなんかに緊張しないでよ。笑。俺の方こそこういう経験が初めてなもんで緊張しとるよ。」

ーラムダッシュさんとお呼びしたらよろしいですかね?

「ラムダッシュさんはやめてよ!固い固い!"ラム兄(にい)"て呼んでくれたらええと思うよ。洗面所に住んでる皆からはそう呼ばれてる。」

ーラム兄!笑。めちゃめちゃいいですね。そちらの方が呼びやすいです。では早速ラム兄へのインタビューを始めさせていただきます。まず自己紹介をよろしくお願いいたします。

「うい。改めまして、"ラムダッシュ ES-SF21"と申します。ラムダッシュが苗字で、ES-SF21が名前やな。2013年に生産されたから、今年で9歳。髭剃りの9歳は人間でいう70歳と同じようなもんだから、その割にはまだまだ元気にしとる方だと思うよ。」

ーラム兄もう70歳なんですね!笑。全然見えないです。

「俺の雇い主がお固い会社のサラリーマンで。髭を生やして出勤なんて言語道断。それはもう毎日毎日、来る日も来る日も髭をそり続けたよ。また出張の多いサラリーマンでね。北海道と沖縄以外は全都道府県制覇。」

「そういうのもあって元気なのかもしれない。やっぱり身体動かさないと!あっちなみにホテルはドーミーインがオススメだよ。無料で夜泣きそばっちゅうのがある。内緒な。」

ーオススメのホテルまでありがとうございます。笑。ヒトと同じですね。やっぱり身体を動かすと健康でいられるんだ。70歳でしたらお孫さんはいらっしゃるんですか?

「何言ってんだよ!そりゃあいっぱいいるよ!ラムダッシュ家はブラウン家と並ぶシェーバー界の名門なんだから。三井や住友なんかの財閥と一緒よ、財閥と。笑。」

ーそれは失礼いたしました。

「それにしても今の若い奴らはすごいね。見た目も機能も我々の時とは大違い。AI機能を搭載してる孫だっているんだから。髭の濃さとか顔の形によってコンピューターで剃り方変えられるんだって。もうおじさんついていけましぇん。笑。」

「そんなコンピューターの力借りてヒトの髭剃って楽しいのかね。毎朝『今日はこいつ元気ねぇなぁ』とか『おっ!何かいいことありやがったな』なんて雇い主の顔を見ながら、自分で切れ味や音なんかを調整するのが醍醐味なんだけどな。音楽と一緒よ。」

ー確かにラムダッシュはCMでも流れていますし、家電量販店でも必ず目にします。でも本当にそうですね、アナログからデジタル。そこにAIが入ってきてから、デジタルが進みすぎている気もします。

「そりゃあ俺だって、かつてT字カミソリから"髭剃り"としてのシェアをデジタル代表で奪ってるわけだから、何とも言えねぇんだけどよ。今の若い奴らはなんっつうか目上のモノを敬う姿勢がねぇつうか。」

「T字カミソリには面と向かっては死んでも言わねーけど、あいつらは自分の足で立って、自分の力でご主人様とやらの髭剃ってんだぜ。髭だけじゃねーよ、小さくて逃げ足もすばしっこいから他の毛だって剃れる。すげーよな。」

「俺らは所詮電気がなけりゃ動かねぇ、フルで充電したって1時間ぐれーだ。だから俺はT字カミソリのこと、ライバルだけど尊敬してるよ。相手を敬う姿勢が大事なんだよ。」

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髭剃りの世界にも訪れたコロナの波

ー確かに今の若者は多様性をうたう反面、年配や目上のヒトの多様性を認めない傾向にあります。髭剃りの中でもそういった現象が起きているんですね。2020年からヒトの世界では、コロナの大流行で暮らし方が大きく変化しました。髭剃りの世界でも何か変化はありましたか?

「・・・まぁ変化がないっちゃ嘘になるなー。コロナっちゅうもんが来てから、なんだあの家で仕事するやつ。テロワークってやつか?」

ーテレワークです。

「おぉすまん、すまん。仕事をテロしてどうすんだ、バカタレ!笑。そのテレワークとやらが始まってから、雇い主が一気に外に出なくなってよ。パタッと髭を剃らなくなっちまった。オンラインがどうだとか言ってたな。今まで毎日剃ってた髭が週1回か2回がいいところだ。その生活がもう2年は続いてやがる。さすがに辛いぜ。」

「不思議なもんでよ、毎日髭剃ってる時は『たまには休ましてくれよ』とか『もう出張なんて行かずに家にいろよ』とか思ってたんだけどよ。いざそれが現実になると・・・・なんなんだろうな、雇い主の顔が見たくなるもんだぜ。髭剃りじいさんに元気な顔見せて親孝行でもしてくれってな。」

ーそうなりますよね、隣の芝生は青く見えると言いますか。そうなると週1回〜2回の髭剃りは今まで以上に気合いが入るんじゃないですか?

「そうだなぁ、剃る力自体はあんまり変えらんねーから剃る時の声を前の5倍ぐらい大きく出してやってるよ。

『うぃぃぃぃいぃいぃいぃーんんんんんんん!』

ってな。声出しながら思うわけよ。そんなことしたってこの現実は変えらんねーのに『何やってんだろ俺は』って。自分でもなんか可笑しくなってきちゃって、涙が出てくるもんな。」

ー辛くてですか?

「いやぁ笑い泣きよ!辛いと思ったことなんて生まれてこの方一回もねぇ。俺たちの寿命はせいぜい3〜4年って言われてんだ。それがもう9年だぜ、来年で10週年。幸せだよ。本当幸せもんだ。」

「だから買い換えられたりした奴、使われなくなった奴、そしてライバルのT字カミソリ達にも恥ずかしい姿を見せないように、これからも今持っている全ての力を全っ力で雇い主の髭剃りに込めていきたいと思ってるよ。」

「やべぇ、また涙が出てきやがった。誰か俺の噂でもしてやがるのか?今日はありがとう!しんみりした話はしたくねぇから、今日はこれぐらいにしといてくれや!」

ー噂をするのはくしゃみです。私は人前で涙を流すことは悪いことだと思いませんよ。また飲みにでもいきましょう!本日は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。


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編集後記

コロナの煽りを受けているのはヒトだけではない。

こちらに気を遣わせまいと、明るく振る舞うラム兄を見て悲しい気持ちになったことは否めない。押し寄せる世代交代の波に抗いながら、現役を終えようとしていた矢先に訪れたコロナ。ラム兄の本音を聞き出すことは出来なかったが、御年70歳になってからの冷や飯はさぞかし辛いだろう。

だがラム兄は、自分の持てる力を、一度の髭剃りに全て込めていくと語ってくれた。

『うぃぃぃぃいぃいぃいぃーんんんんんんん!』

果たして自分が70歳になった時に、ラム兄のように大声で叫ぶことは出来るのだろうか。コロナを乗り越えた先に待っている、ラム兄の明るい未来を信じて今日も僕は髭を剃る。

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