見出し画像

【たゆたえども沈まず】原田マハさん 流石の迫力に大満足

どんな話?読み易さは?

あらすじ(私なりの)

天才画家ゴッホを中心とした、ゴッホの弟テオと、日本人画商の林忠正とその弟子、加納重吉の絵画への情熱、パリへの憧れ、友情などの物語。

読みやすさ

さすがの原田マハさん。期待を裏切らない読みやすさです。
冒頭の重吉がフランスへ旅立つまでのシーンは、導入部なので若干読み進みが遅くなりましたが、その後、軌道に乗ってからは止まらず一直線に読了でした。

どんな人向け?

  • 芸術に興味はあるものの、あまり知識がない人

  • 小説で何か教養を増やしたい人

  • 熱い話が読みたい人

私自身、芸術には疎くゴッホは名前や「ひまわり」ぐらいしか知らない人間でしたが、とても楽しく読めました。

「たゆたえとも沈まず」とは

まず、タイトルの「たゆたえども沈まず」は、
パリの象徴とも言えるセーヌ川の船乗りたちがシンボルとして使いはじめた言葉とのこと。

たゆたう、という言葉を以下の辞書の様に受け取れば、
「ゆらゆらと揺れ動くものの、沈まない」
と読み取れる。

揺蕩う(たゆたう)
①ゆらゆらと揺れ動いて定まらない。
②気持ちが定まらずためらう。心を決めかねる。

デジタル大辞泉

マハさんの物語からは、もっとこう
何があっても沈まない
という覚悟の様に感じられた。

どんなに激しい嵐が来ようと、セーヌの真ん中で決して沈まないシテのように、我らが船も、そしてパリも、いかなる困難もかわしてみせよう。
その思いと祈りを込めて、船乗りたちは、自分たちの船の舳先(へさき)にパリを守る言葉を掲げた。-たゆたえども沈まず。
パリは、たゆたえども沈まず。

たゆたえども沈まず

上述の描写が、終盤の盛り上がりを見せるシーンで描かれるのですが、
熱かったですね。

たゆたえども沈ます。

という感じがグッときました(語彙が・・笑)

そして、林忠正が(フィンセント)ゴッホに言うんですね。

セーヌに受け入れられないのなら、セーヌに浮かぶ舟になればいい、と

たゆたえとも沈まず

林忠正、明治の名士の様な先見性、決断力、漢気を発揮して、
「魅せる」日本人ですね!

厳しい上司だと思いますが、男が惚れるタイプの上司です。

絶妙な視点

ストーリー上の主役は、画商の林忠正と画家のフィンセント・ゴッホの2人のはずなんです。

ところが、基本的な視点は林の弟子(部下)の重吉とフィンセント・ゴッホの弟テオの2人なんです。

これが面白い要因と思います。

林は比類なき商才を発揮し、ゴッホは天才的で前衛的な絵を描く。

それを支える凡人。

この構造にすることで、ものすごく読みやすいし、感動が出来る。

更に、絵がテオに送られてくるシーンが何度も描かれるのですが、
私はネットで画像を検索しながら読みました。

生の迫力とは段違いだと思いますが、それでも胸に来るものがありましたね。

「これがその椅子か・・」と。
「確かになんだか寂し気だな」なんて思ったり。

お気に入りの絵が見つかるかもしれません。

芸術への架け橋

NHKの大河ドラマが一般の人と歴史の架け橋であるように、
原田マハさんの作品は、いつも一般人と芸術の架け橋になっていると感じます。

私はゴッホの絵は、
誤解を恐れずに言えば、あまり美しいと思ってみたことがなく、
かつ、自害をした孤高の天才(生前には全く評価されなかった天才)
というイメージが先行していて、それほど興味を持っていませんでした。

本作は、フィクションとは聞いていますが、
それでもゴッホの生涯や作品への、かなりの興味を誘ってくれました。

ぜひ、こういった作品が広く読まれることで、
芸術への敷居が低くなることを期待します。

素晴らしい作品でした。

Have a good day!!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
是非、「スキ」「コメント」などして頂けますと励みになります。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?