【シーソーモンスター】伊坂幸太郎 感想part2

前回の続き。
後半のスピンモンスターについて。
詳細のストーリーは割愛するが、前半の「シーソーモンスター」の主題となった海派・山派の対立の未来版。実際の時間軸としても、シーソーモンスターの2世代後と読める。

率直な感想

面白かった。そして素晴らしいほどの読みやすさとスピード感。全作を通じて思いますが、映像化したくなる人の気持ち分かりますよ。絵が浮かびますもんね。そして、セリフ回しで魅せられちゃうんだから、映画にするしかないよな・・という。映画は縁がなく、ほとんど見ていないのですが。

無実(?)の罪に翻弄され、警察の追手から逃れるさまは、あの名作「ゴールデンスランバー」を彷彿させます。この辺りの主人公の葛藤、困難な状況でのユーモア溢れる言葉選びは相変わらず最高、唯一無二と感じています。このような言葉選びが「冗長」とか「くだらない」という人の気持ちも分かりますけどね。
ただ私は大好き。
別に冗長さが好きなわけではなく、単純に伊坂作品の言葉選びが最高に好き。

真実とは?という一つのテーマ

ニュースで公表されたことが事実になる(事実として理解される=すなわちそれが大衆にとっての真実になる)というテーマは、これまた名作「魔王」で取り上げられたテーマとも関連がありそうですね。
自分の考えか、過去の伊坂作品の受け売りか分かりませんが、普段から結構思いますよね。報道された時点で終わりかな、と。
「容疑」の時点で報道され、「容疑」として報道されたということは、ほぼ犯人だろう、と。「この人は、不運なことに容疑がかけられましたが、犯人ではありませんでした」などと言う報道は殆どなされない。若しくは、なされたとしても注目されない。
結婚であっても不倫であっても、「結婚か・・?」などと書かれたら大変な騒ぎ。
遥か昔にくりぃむしちゅーのANNで上田氏が言っていた気がする。芸能人は本当に事実無根な記事が書かれる。彼曰く、「火のない所に煙は立たないと思っていたが、立つわ」とのこと。怖い世界ですね。

新しいテーマ:人工知能、データ収集について

今作は、上述のようなベースの考え方に加えて、昨今のデータ取得の倫理観や人工知能への倫理とも綺麗に融合しており、実に読みやすく、そして考えさせられる作品でした。
人工知能に関しても、議論が左右に大きく揺さぶられますよね。一番最初は、人工知能に対する恐怖、そのうちそこまで暴走したりはしないという説が主流になり揺り戻し、今はこっちが主流かなという肌感覚です。
データを取られる気持ち悪さ、これも世代間でだいぶ感覚が違いそうですね。結構若い人は、データ取られたからって別に自分と特定されなければそれほど?という感覚かも。年配の方は、家の中が覗かれるみたいで気持ち悪い、という感覚かな(自分の周囲の会話での勝手な想像)。
自分はそうだなぁ、交換条件のような感覚かな。自分のデータを差し出す代わりに膨大なデータベースからの知見が貰えるなら仕方ないかなと。その点では、単純にデータを取られ続けるのは怖いと感じますかね。まあ、君の知らないところで恩恵を受けているのだよ、と言われてしまうとツラいのですが。結局、認知というか消費者の判断基準なんてその程度。

読了感

ハッピーエンドかバッドエンドか、私には分かりませんでしたが、なんとも言えない読了感でした。ただ、読みやすさはもう言うことなし。一気読み以外ありえません。

あらためて、「アヒルと鴨のコインロッカー」のような、穏やかな(内容は決して穏やかではないことが沢山起こるのですが)作品を読みたくなりました。そのぐらい、何かに感情を移入してしまいました。

ありがとうございました。

Have a wonderful day!!!

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