「三島由紀夫vs東京大学全共闘 50年目の真実」(ドキュメンタリー映画)の感想

視聴環境:ネット配信

【内容】
戦前から早熟の天才として小説を書き、映画や演劇を演出したり、出演したりした文豪の三島由紀夫。
彼が東大の左翼団体の全共闘と、東大の公会堂で国会討論をした時にTBSが撮影していた映像を中心に、様々な人にインタビューした映像を交えてドキュメンタリーとした映画です。

【感想】
団塊世代では全くないですが、自分が大学生の20年以上前、学費値上げ反対など、僅かに運動している人間が残っていたなあとか思いながら映画を観始めました。
東大の公会堂で、沢山集まった東大全共闘を前にジョークを交えながら和やかに公開討論する三島由紀夫…
自分の赤ん坊を抱いた学生が議論をし、三島も冗談を交えて話を返していたり…
それを笑いを静かに聞く学生達。
ちゃんと言葉を聞いて、コミュニケーションを取ろうとし、それがそれなりに成立している。
政治心情や立場が違う人間同士で、今、こんな場やコミュニケーションが成立するのかなあ、とかと思いながら聞いていました。
映画の中盤、この場自体が、かなり奇跡的に中立地帯として成立していたということが、開示されていったりしますが…
しかし、今、仮にこんな立場の違う人間が議論した場合、人の話を聞かないで、ひたすら自説だけを話すという感じになるのだろうなあと思ったりしました。
あと、今だったら、SNSで大量に氾濫するデマや中傷の嵐になるだろうなあ、とか…

この時の公開討論についての解説を、小説家の平野啓一郎や評論家の内田樹などが解説していたりもしていて、それはそれでこの時の議論を立体的に浮き上がらせていく構図にもなっていました。
その他、当時の全共闘のメンバーや、三島由紀夫主催していた団体の楯の会のメンバーなども参加していました。
基本的に三島由紀夫のいっていることに関しては、殆ど共感などはできませんでしたが…
自分よりも明らかに格下とも言える学生達を茶化したりもせず、きちんと向き合って話をし、建設的に物事を進めていこうとする姿勢には、心打たれるものがありました。
自分の生まれる前に、こんな場が成立し、人間がいたということに、今の日本の現状を顧みて、なんともいえない気持ちになりました。

この映画を今の若い世代を観たら、どう感じるのだろう?
そもそも三島の言説も全共闘運動など、意味不明なのではないか、などと思ったりもしました。

この一年半後に、三島は45才で自決してるということを、当時の資料や、楯の会のメンバーなどを交えた映像があり、映画が終わるのですが…
今の自分の歳より若くして三島がなくなっているということに、なんともいえない気持ちになったりもしました。

https://gaga.ne.jp/mishimatodai/

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