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『画業40周年記念 上條淳士展 LIVE(弥生美術館)』〜上條淳士に感じた80年代の空気感、時代の交差点としてマンガ

『TO-Y』や『SEX』などで知られる漫画家・上條淳士の展示を訪れました。個人的には、学生時代に80~90年代の作品をよく読んでいたので、バブル期の景気が良かった日本をスタイリッシュに描く作風が印象的な漫画家というイメージがありました。
久しぶりこの漫画家の作品に触れると、現在の少女漫画や青年誌向けの恋愛ものの雰囲気にも通じるテイストを感じ、「このジャンルの先駆け的存在だったのかもしれない」と改めて気づかされました。
また、この展示で初めて知ったのですが、上條淳士は実は男女2人組の統一ペンネームだったそうです。デビュー当初は、男性キャラクターを男性が、女性キャラクターを女性が描き分けていたとのこと(途中からどちらも関係なく描くようになったそうですが)。『TO-Y』を読んでいた頃、「男女のキャラクターの描き方が明らかに違うけれど、器用な人だな」と思っていたことを思い出しました。その背景を聞いてみると、確かに男性が青年誌向けのキャラクターを、女性が少女漫画のキャラクターを描いていたのだと納得しました。

展示そのものは、なんとなく気になって足を運んだのですが、生の原稿やイラストには印刷では失われる細かなニュアンスや迫力があることを再確認しました。原画を見ていると、学生時代に漫画を読んでワクワクした感覚がよみがえり、「自分でも何か面白いものを作ってみたい」といった創作意欲が湧いてくるような気がしました。
あの時代特有の、少し浮足立った空気感や、明るい未来への希望を感じさせる雰囲気も懐かしく思いました。また、大友克洋や江口寿史の影響を感じさせる作風から、当時は「この先にさらにワクワクするようなカッコいい漫画が生まれるかも」と期待していたことも思い出しました。
もちろん、今の漫画が良くないというわけではありません。ただ、当時の自分は、手塚治虫から大友克洋、江口寿史、そして上條淳士へと続く流れの中で、漫画がどんどん進化していく可能性に胸を躍らせていたのだと思います。

予想以上に楽しめた展示でした。上條淳士ということもあり、会場には漫画家や漫画好きらしい人たちも多く訪れていた印象です。特に、赤いチェック柄の厚手の上着を着た若い女性が熱心に原画や来場者の感想ノートをじっくりと見ている姿が印象的でした。その姿が、先日観た映画『ルックバック』に登場するキャラクターを思い起こさせたのも、ちょっとした偶然として面白かったです。まあ多分、普通の人なんでしょうけど…

https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/now.html

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