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マレー半島縦断の旅 3 タイ編



マレーシア、ペナンからミニバスに乗ってタイとの国境に着いた。
シンガポール、マレーシアをバスで縦断したことになる。

タイ側のイミグレーションの列に並ぶ。
なんか前の方でトラブルが起きてるみたいでなかなか進まなかった。

並びながら出国カードを書く。
乗ってきたバスのナンバーがわからなかったから前に並んでた一緒のバスに乗っていたおばさんに教えてもらって書いた。

書き終わるとそのうちにおれの番がきた。
パスポートにスタンプが押された。

タイに入国。
時差はマレーシアからマイナス1時間、日本からはマイナス2時間だ。
再びバスに乗って、ハジャイという町を目指す。


国境からハジャイまでは1時間も走ると到着した。
これから1組ずつ宿泊先に送り届けてくれる。

ミニバスにはホテルピック、ホテルドロップのサービスが付いていることが多いのがありがたい。
おれは1番最後だった。
最後のおれがバスを降りたのは18時くらい。

今回の旅で、新しい町への到着はいつも夜中とかだったので、明るい時間にチェックインするのはなんか新鮮だ。

ホテルは中華系のホテルだった。
チャイニーズニューイヤーで至る所に赤くゴージャスな飾り付けがされている。
チェックインをする。
料金が前払いで、タイバーツをほとんど持っていなかったおれはパスポートを預けて後で払わせてもらうことになった。

鍵をもらってひとまず部屋へ。
部屋はこざっぱりとしていた。
まず今回の旅で初めての冷蔵庫がある部屋だ。
そしてタイでも珍しく部屋でタバコが吸える。
エアコンも効く、ベッドも大きい、と一泊しかしないのがもったいないくらいの快適さ。

ハジャイ マーケットがある路地



ハジャイで迎えるニューイヤー

一服して町に出る。
とりあえず両替をする。
すぐ近くに小さなデパートみたいなのがあった。地方都市のイトーヨーカドーみたいな感じだ。
その裏に屋台街が広がっていた。
服や靴、食べ物の屋台が並んでいる。
このあたりは特にたくさんの人が出ていて活気がある。

ハジャイはマレーシアのペナンから車で3時間ちょっと。
国境から50kmくらいしか離れていない。
マレーシアからは目と鼻の先だけど、国が変わると空気も景色も変わった。

初めて来た町だけど、そこには明らかにタイの風土がある。
知らない町だけど、慣れたタイの匂いがして少しほっとしている。

そして、マレーシアとの国境が近いから、そのタイの空気の中にイスラム教徒がいて、中華系の文化がクロスオーバーしている。

それが今までのタイとも、マレーシアとも違う独特な匂いになっている。

チャイニーズニューイヤーを控えハジャイの屋台街町


夜になると、さらにたくさんの屋台が出る。
ショッピングモールの目の前にも屋台が広がって地元の人で大盛況になる。

屋台でご飯を食べようと思っていたけど、どこも満席で諦めた。
屋台で買って食べたメロンはとても美味しかった。

シーフード屋台
人気な屋台の前 ヒジャブを巻いたムスリマたちの行列


屋台でTシャツを買って、パブでビールを1杯のんだ。
夜も遅いのにとにかく人が多くすこし疲れて、ご飯を調達して部屋に戻ることにした。

やっとタイに入ったので、コンビニのホットサンドを買う。
タイのセブンイレブンのホットサンドはレジにあるホットサンドメーカーで焼き直してくれて、溢れんばかりのチーズが最高に美味しいんだ。

部屋に戻る。旅先であろうとおれのペース。
エアコンの効いた部屋で携帯で動画を見ながら、ごろごろとしながらご飯を食べる。
やってることは東京のおれの部屋と同じ。
一人旅でのバランスはこの時間で保たれていると思う。


どこか中華っぽいハジャイの町


気がつくと、旅の終わりが近づいていた。
あと4日もしたら日本に向かって出発しなきゃいけない。
かなりキビキビと移動ばっかりしてきたつもりだけど、やっぱり今回は少し時間が短かったか。

それに、どの町も思っていたよりも魅力的だった。
明日ハジャイの空港から国内線でバンコクに行くことにした。

列車やバスだとまず予約できるかわからないし、できたとしても丸一日はかかる。
航空券を調べると、直前でも結構安かった。7000円くらい。
今回はお金を使ってちょっとでも時間をつくろうと思った。
バンコクでダラダラするのは旅の終わりのご褒美みたいな感覚でいるんだ。


次の日。フライトは21時10分。
朝早いフライトかこの時間のフライトしかなくて、夜型のおれはもちろん夜のフライトを選んだ。それでも時間は持て余す。

空港までの移動を加味しても19時に町を出れば充分だった。
とりあえず12時にホテルをチェックアウトして、荷物を置かせてもらって町に出た。
ハジャイは小さな町(リトルバンコクとか言われているけど)なので大体昨日歩いたエリアがメインだ。

暦の上では今日、2月5日は春節、チャイニーズニューイヤーだった。
町は祝日ムードで盛り上がっていた。

海外でのチャイニーズニューイヤーは初めてだ。
中華系の人たちはみんな赤い服を着ている。
町には赤い提灯がたくさん飾られている。

ショッピングモールの前の広場では特設ステージが組まれ、チャイナ服を着た歌手が中国の歌を歌ったり、ねぶたのような真っ赤な龍の作りものをたくさんの人が担いで、町を練り歩いたりしていた。

祝日だからか昼間だからか、屋台はあまり出てないし食べ物の屋台もぜんぜんなかった。
仕方なくマクドナルドで朝食を食べる。
近くの老舗マーケットまで歩いてみたり、カフェに入ってコーヒーを飲む。

老舗 キムヨンマーケット



時間もあるし、暑くて鬱陶しかったから、髪を切ってもらうことにした。
町中に美容院がいくつかあってだいたいがマッサージ屋メインという感じだ。
店の前の椅子に座ってだらっとしている客引のおばさんに奥に連れていってもらう。

椅子に座らされて、しばらくすると美容師のおばさんがきた。
「長さは2〜3cm切って、あと量が多いからいっぱい梳いて欲しい。」とお願いした。

おばさんはすごいスピードでどんどん切っていく。店内は暑く、汗でおでこに髪の毛が張り付いてきた。
もちろん髪を洗ったりしてくれない。

「暑い?」とか聞いてくるけど「暑い」と返したからといって冷房をつけてくれる訳でも、扇風機をこっちに持って来てくれる訳でもなかった。

そして10分もすると、仕上げに入ったみたいだ。
2〜3cmと言ったけどどうみても5cmくらいは切られている気がする。
そして100均に売ってそうな、小さいほうきで首周りを履かれて終わった。
やっぱりだいぶ切られてる。

日本だとちょっと落ち込んでるかもしれないけど、おおらかな国、タイの空気がそうするのか、涼しくなったし全然オッケーと、全然気にならなかった。
料金は200バーツ(700円くらい)だった。

頭が軽くなってすっきり。
次は体も軽くなろうと、マッサージに行くことにした。

小さなホテルに入ったマッサージ屋。
施術室はがらんとした部屋にいくつか布団が等間隔で並べられた、林間学校みたいな部屋だった。
部屋には小さいテレビがひとつだけあって、クイズ番組がやっていた。

マッサージしてくれるおばさんは真剣にテレビを見ながらおれの足を揉む。
あまり会話もなく、足と腰メインに1時間やってもらった。
足全体が明らかに柔らかくなり、軽くなった。
溜まっていた疲労もだいぶなくなり、これで最後まで旅を全うできる。

なんだかんだで時間も潰せて、体全体もすっきりした。

少し早いけど空港に向かうことにした。
ホテル荷物を取りに行って街の中心からソンテウ(車の荷台が席になってるバスみたいなもの)に乗った。

ソンテウ タイの田舎なんかでよく見る


運転手に、「これ、ハジャイ空港に行く?」と聞くと「行く」と言うので、値段を聞いて誰もいない荷台に乗り込む。

乗り合いかと思っていたら、おれが乗るとすぐ発車した。
200バーツくらい(700円くらい)だったと思う。
ハジャイの街中を抜けて田舎道をしばらく走る。
夕方の風が気持ちよかった。
30分も走ると空港についた。
ハジャイ空港は田舎の小さな空港だった。

空港の中で少しだけ待ってチェックイン。
国内線なのでチェックインもスムーズ。
出国手続きもないので、荷物を預けて上の階に上がるとすぐゲートに着いた。
バンコクのドンムアン空港までは1時間30分のフライトだった。
ウトウトとしていたから一瞬だった。

23時前、定刻通りにバンコク、ドンムアンについた。
もはやバンコクはアジア旅行の拠点。
帰ってきた感じがした。

荷物を受け取って外に出た。
バンコクはハジャイよりも夜の湿度が高い感じがする。

5ヶ月振りのバンコク。
ここからは慣れたものだ。
空港からBTSのモーチット駅に行くA1のバスに乗る。
ちょうど出発するタイミングだったので飛び乗った。
発車してしばらくするとおばさんがお金を集めに回ってくる。30バーツ(100円くらい)を渡す。
フリーウェイを真っすぐ20分も走るとモーチットに着いた。


ここからは都市鉄道、BTSに乗り換えてホテルを目指す。
今回もホテルはスクンビットエリア。アソークの駅前に取った。
スクンビットでの定宿はシーズン的に値段が高く、他の宿を取った。

20分も乗っているとアソークに着いた。
時刻は24時を回っていた。

一番近い出口から出て歩いて1分くらいのところにすぐホテルを見つけた。
ホテルはアソークの駅前。
有名な歓楽街、ソイカウボーイの入り口のセブンイレブンの建物だった。

簡単にチェックインを済ませる。
部屋は3階だ。
ここで面白かったのはホテルのエレベーター。
リフトのような感じで枠組みだけ、四方の壁がない。
定員は2人までだし、ガコンガコンと音がするのですこし恐かった。
3階に着いたらガラスのドアを手で開けてエレベーターから出る。
こんな感じだけど、ホテル自体は清潔で綺麗だった。
部屋はかなり狭い。ドアを開けて、大股2歩くらいの通路の先がベッド。通路の左にトイレとシャワー。ベッドの下が収納になってる。
カプセルホテルに近いサイズだ。

でも綺麗だし、とにかく立地がいい。
とりあえずシャワーを浴びた。

狭い部屋のメリットは、エアコンの効きが良いことだ。
部屋の端にあるエアコンの風はすぐにベッドまで到達する。

これから2日間、バンコクで存分にダラダラする。観光もしないし、なんでも食べたいものを食べるつもりだ。

他の国や田舎からバンコクに帰ってくるとだいたいラーメンが食べたくてしょうがない。今回もそうだ。

アソークで深夜までやっているラーメン屋をいくつか知っていたおれはさっそくホテルを出た。
ホテルからラーメン屋へはソイカウボーイを抜けてすぐだった。
ソイカウボーイはバンコク屈指のゴーゴーバーストリートだ。
ゴーゴーバーはとてもバブリーで煌びやかなディスコのような所だ。
ショーなんかをしていて、水着姿や素っ裸の女の子達(レディボーイもいる)が爆音の音楽に合わせてポールダンスなんかをしていて、気に入った娘がいたら一緒に飲んだり、連れ出したりできる。

女の子が欲しい世界各国のおっさんたちと、お金のためにおっさんたちに媚を売るタイガールの欲望にまみれた場所だ。
おれは持ち帰ったりしないし、たまに1杯飲みに行くくらいだけど、ゴーゴーバーの活気や後ろめたさのない明るさが好きだ。

煌びやかなネオンライト
深夜のソイカウボーイ


ソイカウボーイは夜中の1時を過ぎてピークに盛り上がっていた。

店の前でビキニを着たたくさんのゴーゴー嬢たちに一瞬で包囲されて、強引に掴まれた手をおっぱいに当てられ「あなたぁ〜愛してるぅ〜」とか言われながらソイ(路地)を抜ける。

受け取る側の考え方次第で、デパ地下の試食と
も、ただのセクハラともとれる。
とにかく、ここはこれでいいんだ。
いつも元気であってほしい。

やる気もなく、スマートフォンをいじりながら「ガールズバーいかがですかー」を棒読みで延々と繰り返している池袋のガールズバー嬢にも見習ってほしい。

ラーメン屋に入ると、テレビでは日本のバラエティ番組がやっていて、日本人の駐在員がスーツを着て餃子つまみにスーパードライを飲んでいたり、日本人の大学生の集団がゴーゴー嬢を連れて飲みにきていたりしている。
だいたいいつもこんな感じだ。

ラーメンを食べる。
店員さんはカタコトの日本語で対応してくれる。
日本で食べるのとさほど変わりのない豚骨のラーメンを一気に啜りあげると、体が少し元気になった気がした。
たぶんこのラーメン、東京で食べたらあんまり美味しくないのかもしれない。
海外採点みたいなもので美味しく感じてしまっているのかも。
それを差し引いても東南アジアでもバンコクはしっかりと美味しいラーメン屋が多い。

腹ごしらえが済むと、なんだか真っ直ぐ帰るのがもったいない気がして、繁華街を散歩する。
5ヶ月前に来たばっかりで、あんまり何も変わってなくて、この前の続きがそのまま始まったような感じだ。

スクンビットの夜

バーに入ってシンハーを飲む。
アソークの飲み屋はどこもイカしてる。
バンコクの夜は、シンガポールのように気持ちいい夜風とは違っていて、夜中でも蒸していた。

ホテルの下のコンビニでジュースとかお菓子を買う。
ホテルではタバコが吸えないのでコンビニの前でぼーっとしながら何本かタバコを吸っておく。
ここはバンコクのど真ん中。夜の街。
最近静かな東京では、こんなに活気のある深夜2時を見たことがない。



夜中のスクンビットの人間観察は、おれとしては上野動物園の100倍は飽きない。

ソイカウボーイの入り口のセブンイレブンの前では気の弱そうな大学生2人が、ゴーゴー嬢たちの猛攻に負けて持ち帰ることになったのか、ATMでお金を下ろさせられている。
オカマじゃなさそうだったからいいのだけど。

物乞いの子供たち。
いつものホテルだと最寄りの駅やコンビニの間にいるから、昼間電車に乗る時も夜中コンビニに行く時も通行料のように払わされる。というか払ってしまう。
物乞いには、買い物でつくっておいた小銭をあげるようにしている。
物乞いにお金を渡すかどうかは人によって色々考えがあるだろうけど、小さいお金がある時はできる限り渡すようにしている。

その町にお邪魔させてもらっている感覚と、無事ここまで旅できて出会った縁みたいなものを感じるからだ。

スクンビット通り沿いには夕方から明け方までたくさんの露天が並んでいて、ご飯、お土産から生活雑貨となんでも手に入る。

アラブ人街に近づくとケバブ、カレー屋と一緒にアダルトグッズの屋台が増える。
性に厳しい中東の国からきた興味津々な若者たちが集まるのだ。

テーメーカフェという援交バーの前では、IDチェックで弾かれて中に入れないレディボーイたちが熱心に外国人の男たちに声をかけている。
中には華奢ですごく綺麗な子もいるけど、腕を掴んできた時の力がやっぱり男だ。

路上のバーではアフロヘアーのアフリカンの女性たちが踊りながらカクテルを飲んでいる。

その横の屋台でタイ人のおばさんは真顔で麺をすすっていたり、子供が野良犬と遊んでいる。
トゥクトゥクの運転手は客席をベッドにしていびきをかいて寝ている。

バンコクの夜の繁華街にはこんな人種もなにも飛び越える許容がある。

女が欲しい外国人。お金が欲しいタイ人の女の子たち。興味本位の世界中の大学生。物乞い。
欲に忠実な人たちが夜になるとスクンビットに集まる。

昼間は驚くほどがらんとしている。
観光客は観光地に行ったりしてるだろうし、夜の店は閉まってる。
長期滞在でだらだらしている白人のおっさんたちは昼間からパブでビールを飲んでるかマッサージくらいだろう。

こんな極端な街だけど日本の歓楽街みたいないかがわしさもなく、ただ純粋に楽しみを求めているテーマパークみたいな雰囲気が好きだ。


スクンビットをダラダラと歩いて部屋に戻り、お菓子を食べてダラダラと携帯で動画を見る。
いつもの流れで明け方、眠りについた。


昼くらいに起きてターミナル21に向かった。
ホテルから目の前の通りを挟んで向かいにある大きなショッピングモールだ。

ターミナル21の上の方の階のレストラン街には外資系のレストランがたくさん入ってる。
吉野家、ココイチ、ペッパーランチなど、日本の店もたくさん入っていて、助かってる。
ここで東京でも食べたことのないペッパーランチでご飯を食べて、下の階の気に入ってる服屋を見て回ってTシャツを買ったりした。

ビールを飲もうとパブに向かった。
スクンビットエリアは物価が高めなので、安めで雰囲気のいい店を覚えておく。

アソークの駅前からスクンビット通りを歩いてナナまで。
ナナの駅前のスポーツパブはタバコが吸えて、ハッピーアワーはビールが1パイントで100バーツ(300円ちょっと)で飲める。
白人観光客がメインターゲットなので、適当なロックばっかりかかっていてすごくいい。

ホテルに戻って夕方までゴロゴロして、気になっていたナイトマーケットに向かった。
目の前の地下鉄スクンビット駅から3駅先、タイカルチャーセンター駅からすぐのナイトマーケット、 タラート・ロット・ファイ・ラチャダー(ラチャダー鉄道市場)へ。

ここはわりと新しいナイトマーケット。
いろいろな食べ物から洒落たカフェ、バー、雑貨や洋服、床屋までたくさんの屋台がずらっと並んでいる。
日本で有名だからたくさんの日本人と、地元の若者で溢れていた。

隣の立体駐車場から見たマーケット ここはインスタ映えスポットらしい



ひとしきり散策してアソークに戻る。
地下鉄はラッシュでホームに列ができていて、
電車を5本見送って、6本目にやっと乗れた。

アソークに帰ってきて、
ソイカウボーイのゴーゴーバーのテラスでビールを飲む。

まだ時間が早いこともあってお客さんは少なく、案の定すぐに暇そうにしている女の子に捕まってしまった。


隣に座ってカタコトの日本語で話しかけられた。
日本人客も多いバンコク都心のゴーゴーバーではカタコトの日本語を話す女の子も珍しくない。

少し歳のいった感じの女の子だ。30歳くらいだろうか。
「キョウヒマネー」 「アナタ、タイハジメテ?」 「シゴトデキタノ?カンコー?」
飲み屋の女の子とはだいたいこんな会話だ。
適当な相槌を打ってると、一杯飲ませてと言ってきたので飲ませてあげることにした。

女の子は近くに立っていたおばさんに飲み物を注文した。
おばさんが飲み物を運んできて、テーブルに置くときに「ワタシニモイイ?」とか言ってきたけど、それは意味がわからないからと断ったけど、なぜかドリンクは3つ運ばれてきた。
彼女が頼んだのはコーラだった。
お酒が弱く、バイクで来ているから最近はあまり飲まないようにしてるらしい。
しばらく喋ったけど、ちょっと鬱陶しくなったからビールを一気に飲み干して店を出た。

部屋に戻って休憩。
しばらくしたらお腹が空いてきた。
無性にハンバーガーが食べたくなったので、近くのハンバーガーショップを調べると、
ナナの方にバンコク一美味しいと噂の店を見つけたので歩いて行ってみる。
スクンビットソイ11の奥。アラブ人街の手前あたりにあった。

この店の看板メニューのハンバーガーは、肉々しいパティにベーコン、オニオン、それにブルーチーズソースがかかっているハンバーガー。
めちゃめちゃボリューミーで美味しかった。
日本でもわりとハンバーガーは好きでいろんな所に食べに行ったりしていたけど、ここのハンバーガーは確実に今まででベスト3には入る。

付け合わせに大量のフレンチフライがついて355バーツ(1200円くらい)。
かなりいい値段だけど、日本で食べてもこのくらいはするし満足感を考えると高くなかった。

すごくお腹いっぱいになって、動きたくなくなって部屋でグダグダする。
あくまでも旅の終わりのバンコクでは、あまりなにもしない。
旅を終えて旅先と東京の中間地点的な感覚なので、タイっぽいことしなければみたいな気持ちは微塵もなかった。

そのままだらだらと動画をみたり、音楽を聞いたりして過ごす。
旅先の都市、特によく来るバンコクなんかではただの日常をやるのが心地いい。

気がついたら眠っていて、朝になっていた。
今日はバンコク最終日。
旅の最後なのですこし忙しい。

東京までのフライトは日付が変わって夜中なので、楽するためにホテルを1泊余分に取ってある。
まだチェックアウトする必要はない。

まずはごはん。
安定のターミナル21のラーメン屋で済ませ、
地下に入ってるスーパーにお土産を買いに行く。

缶ビールを買おうとしたが、レジのおばさんは売ってくれなかった。
時間を確認するともう14時をすぎていた。
タイの法律で、基本的にお酒の販売時間は11時〜14時と17時〜24時と決められていて、それ以外の時間はお酒を売ってくれない。

このルールは宗教のこともあるけど、お酒ばっかり飲んで働かなくなってしまう人を出さないようにというタイらしい理由かららしい。

とりあえずビールは後にして、買い物目当てにサイアムへ。
サイアムはファッションモールがたくさんあって日本の新宿のようなつくりで、原宿や渋谷のような内容の街だ。

街を散歩しながら色々なモールに入って、気に入ったシャツやらお土産用にサンダルやら色々なものを買う。
サイアムは初めてバンコクに来たときに、拠点として散々ほつき歩いたのでわりと土地勘がある。

サイアム駅から順々に行きたい所に行って、一通り回った頃には隣のチットロム駅のあたりまできている。
バンコクのBTSは駅間がまあまあ近くて便利。

チットロムからアソークに帰り、17時を過ぎたので、今度こそビールを買う。
レオの6缶パックを買った。
買った荷物を部屋に持って帰る。

シャワーを浴びて、だらだらする。
短かったけど長かった旅を思い出している。
旅をしていると12日間なんてあっという間に過ぎるけど内容が濃いからか、何日か前の事はもうかなり前のことのように感じる。
最初にシンガポールに降り立った頃の記憶はもう1ヶ月くらいは前のような感じがするし、すごく懐かしい。
すでに撮った写真なんかを見返したりしている。

そうこうしていると、いい時間。
最後のパッキングをする。
フライトのチェックインで行列に並ぶのが嫌なので、早めに空港に着きたかった。
フライトは夜中の1時。
チェックイン開始は3時間前。

21時を過ぎて、チェックアウトをする。
いつも愛想の悪いレセプションのおばさんが、最後だけすごく愛想が良かった。

バックパックを背負って駅に向かう。
おれが居ようと帰ろうと、今日も街は同じ顔をしてる。

BTSでモーチットまで。
電車はやけに空いていて、すぐに座れた。
モーチットから空港行きのバスは意外と来ない。
2路線ある空港行きのバスは、どっちかがすぐに来ると思ったけど20分くらいは待った。

道は空いていて、空港までも20分くらいで着いた。
時間はちょうど22時を過ぎたところ。
チェックインが始まっていた。

まだそんなに長くない列に並ぶ。
やっぱり日本人の団体ばっかりだった。
ついに日本に戻るという実感が湧いてきた。
荷物をスキャナーを通すと空港職員に呼び止められて中身を開けさせられる。

マレーシアで買った大量のボール型のチョコ、タイで買った大量の塩と、怪しまれるようなものばっかり持ってたから予想はしていたけど。
せっかく壊れ物とかを考えて、丁寧にパッキングした荷物を隅から隅まで開けさせられ、丁寧にチェックされた。

やっと荷物を預かってもらった。
出国ゲートを通って出発ロビーへ。
出発まではまだ2時間くらいあった。

いつものように喫煙所でビールでも飲んでいようとおもって喫煙所に向かうと、喫煙室がやけに暗く、ドアに張り紙が貼ってある。
なんと喫煙所が閉鎖されてたのだ。
それも空港内全ての喫煙所が閉鎖だ。

行きしなにシンガポールに向かう便のトランジットで寄った時はまだ喫煙所はあった。
2月から閉鎖ということみたいだった。
もう明日の朝、成田に着くまでタバコが吸えない。
こんなことなら空港に入る前に吸っておくんだった。

仕方ないのでご飯でも食べる。
残りのタイバーツとの兼ね合いを考えつつ選ぶ。

残金はなんとかご飯と飲み物くらいが買えるくらいの額で、両替するにも日本円は万札しかもってないし、1万円両替しても、ほとんど使わず再両替するのは馬鹿らしい。
ここでできるだけピッタリにしたい。
いま考えたらクレジットカード使えばいいんだけど、自己満足の世界だろう。

安い中華の弁当屋で150バーツ(500円くらい)の弁当と水を買う。
海老チャーハンの唐揚げの弁当。まずまず美味しかった。
水はフライトの為に温存。

残ったのは29バーツ。最後にジュースを飲みたいと思って色々回って安い店を探す。
一番安い店でも、コーラなんかのジュースは30バーツ。1バーツ足りない。
悔しいけど諦めてうろうろしてると、近くのサンドウィッチ屋で一つだけ安いオレンジジュースを見つけて買う。
15バーツ(50円くらい)だった。

そんなこんなで暇をつぶしていたらもう搭乗の時間だった。
飛行機に乗り込む。

チケットの番号の座席を見つけると、おれの席は非常口座席だった。
非常口座席は前に座席がなくて足が伸ばせる。
しかも3人席の真ん中は空席だった。
これでだいぶありがたい。

久しぶりに座席にはモニターも付いてたし手も足も自由に投げ出せて、かなり快適な6時間ではあったけど、
おれの席の前にCAさんの席があって、離着陸の時とか揺れが多いタイミングでは、タイ人の綺麗なCAさんがおれのすぐ目の前に向かい合って座るのですこし落ちつかなかった。

モニターでアメリカのホームコメディやハリーポッターをみたり、うとうとしたりしてるうちに成田に着いた。
感覚としてはかなり早かった。

東京は朝の9時だった。

荷物も取って、とりあえず喫煙所を探す。
空港の外に出ると東京の匂いがした。
東京は真冬。
電光掲示板の温度系は6℃を指していた。この日は曇っていて思ったよりも寒かった。
昨日まで真夏にいたのに、急に30℃くらい温度が下がったことになる。
足がガクガク震えていた。

成田から銀座に行くバスで東京に戻る。
銀座から有楽町の駅まで歩いて、有楽町線に乗っておれの住む街まで帰る。
今回はなぜかあんまり懐かしさも帰ってきた安堵感もあまりなかった。
すこし旅慣れしてきたのかもしれない。


あとがき 〜帰ってきて思ったこと〜


帰ってきて、とにかく気温差に負けてしばらく体調が振るわなかった。
いつもだいたい旅が終わったことに対する寂しい気持ちと、それと同じくらい旅を終えてずっとアドレナリンを出しまくって、どこか肩に力を入れていた生活が終わった安心感みたいなものが大きかったりしていた。
美味しいものもたくさん食べれるし。


今回は東京に帰ってきた途端に退屈な気分だったのは、今回はいつもよりすこし期間が短かったこともあるかもしれないけど、きっとすこし旅慣れしてきたんだと思う。

気持ちの面でも、技術の面でもスキルが上がるとその分一人旅を楽しめるようになるような気がした。

シンガポールとマレーシア。
だいぶ前にも旅先候補に浮上したりしていたけど、なんか後回しというか今じゃないような気がしてた。
今回もたいしたプランも知識もなく、まあとりあえず行ってみようか、くらいのスタンスで行った。

シンガポールはマレーシアまで行くんだし、今回行かないとなかなか行く機会なんてないかもな、と行くことにはしたけど、
真新しいビルばっかりで物価も高いしタバコも吸えないというイメージで行く前から敬遠していた。
きっと多くの人が持ってるであろうそんなイメージで実際に行ってみると、イメージが覆った部分が大きかった。

人種が混ざり合って成り立っている街も結構カオスだったし、ゴミもまあまあ落ちている。
東南アジアの他の国に通じる混沌としたフィーリングは少なからずあった。

それに、郊外のアメリカの西海岸みたいな(イメージだけど)とても洒落ていて閑静なエリアは全く想像してなかった。

そんなイメージを覆す物事を実際に自分で観にいくというのはなんてオツなことなんだろう。

人も穏やかだけどパワフルで思っていたよりもずっと庶民的。
女性は特にシャンとした人が多く、日本よりも社会が男女平等な感じがして、都市国家としての安定感のある街だった。

日常にホーカーズがあって、毎日誘い合わせる訳でもなく集まってみんなでご飯を食べ、酒を飲み笑うのはめちゃめちゃ豊かな感じだし羨ましい。家の近くにはそんな所ないかも。東京にもそんな豊かさが欲しい。

マレーシアはシンガポールよりもっとイメージがなかった。
興味のない人からしたらマレーシアと聞いて何一つ連想しない人もいるかもしれない。
おれもナシゴレンとイスラム教、というイメージだけを持って行った。

今までマレー人という人がメインで暮らすエリアには行ったことなくて、マレー人がどんな雰囲気の人種かも想像がつかなかった。

きっとタイとかとさほど変わりはないだろうとか、イスラム教って言っても他の国にも居ないわけじゃないし、とかどこか他のアジアの国の延長として見ていたけど、やっぱり国が違うだけ文化が違って、歴史があった。

シンガポールは少し特殊だから別として、あの辺りのだいたいの国に行ったけど、あんなに清潔な町は見たことはなかった。

東南アジアの国共通する空気感はあるんだけど、町には品があって、どこか混沌とは全く違う温かみみたいなものを感じた。
それはきっとイスラムの宗教性が大きいと思う。

シンガポール、マレーシアの特徴としては人種のクロスオーバー。
マレー、チャイニーズ、インド系がほどよい距離感で共存していることで、町がどこかカオスでもありながらでもグローバルで、治安のよさみたいなものを感じた。


食べ物。タイやベトナムみたいな臭い生スパイスや変な動物の肉とかそういうものはあまりない。
どちらかというと日本の感覚近いセンスで、辛すぎない、濃すぎないという印象だった。
チャイニーズフードも、インドカリーも本格的なものが食べられるのは移民国家ならでは。

ペナンの海はタイのパタヤの比じゃないくらい綺麗だった。
クアラルンプールは大都市だけど、バンコクなんかとは街のつくり方が違う。
都市の中にターミナルみたいな大きな街は少ないけど鉄道が発展しまくっていて、路線の数が多い。
街中の移動はほとんど電車だけで充分そうだった。

ブキッビンタンの夜は、バンコクにもないくらいスリリングな雰囲気で楽しかった。
お祈りの時間には街中のモスクからアザーン(お祈り開始の合図)が聞こえて、街からムスリムが消える。

ムスリムの宗教感は、他の宗教よりも厳かなイメージだけど、実際ムスリムに囲まれて過ごしてみた感じだと、イスラムだから特別ということはなくて他の宗教と同じように、自分の信仰にとても敬意を払いながらもそれを身近に感じながら普通に暮らしていた。

1日5回のお祈り以外はそれぞれ自分の時間があって仕事をしたり遊んだりしてる。
そんな姿を見るとムスリムの人たちを身近に感じることができた。

一見控えめで大人しそうに見えるムスリムの女の子たちだけど、だいたいカフェとかファッションモールにいるヒジャブを巻いた女子高生たちは、みんな友達と意味がわからないくらい笑い、キャピキャピしてた。
全世界の女子高生に共通してそんな感じだと思う。

クアラルンプールのギャルたち


シンガポールからマレーシア、タイと
2回国境を超えたのは初めてだった。
陸路での国境超えはやっぱり、国が変わり景色や匂いが変わるのを肌で感じられるから面白い。

なにもかもが違う景色は最初なにもかも新鮮でも、いつの間にか慣れてきてそれが日常になってくる。

同じものを見て同じ物を食べても、人それぞれ好き好きあるだろうけど、ポジティブでもネガティブでもそれを全身でがっつり感じれるとその分面白い。
「サイコー!」はもちろん、「もう嫌だ!」すらも気持ちいいのが旅だし、そんな刺激を味わいに行ってるんだろう。

日本に帰ってきてしばらくしたら、次はどこに行きたくなるんだろう。

ブキッビンタンの夜


マレーシア編はこちら↓



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