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外食で働く

■外食産業における人手不足の原因

原材料と人件費の高騰問題」の記事でも触れましたが、外食産業は、慢性的な人手不足です。
そこに追い打ちをかけるように新型コロナウイルス、材料費の高騰が重なり、さらなる採用難に陥っています。

▶慢性的な人手不足を引き起こすマイナス連鎖
人手不足が解消されない原因には以下のマイナス連鎖があります。

 ①人手不足によって従業員の負担が大きくなる
 →シフトの空いた穴を埋めるために、長時間労働になる。

 ②労働環境の悪化により退職者が増加する
 →長時間労働をはじめとした劣悪な労働環境により、多くの従業員が退職し定着しない。

 ③新人研修が不十分になり、経験不足のスタッフが現場に送り出される
 →人手不足で指導する時間がない。何も分からずに現場対応を任されるため、不満が大きくなり早期退職者の増加につながる。

 ④人員不足により、サービスの質が低下
 →人員不足は従業員の負担が大きくなり、結果的に仕事の質も落ちる。

 ⑤サービスの質が低下したことで、売上が減少
 →サービスの質が落ちれば、お客様からのクレーム対応が増える。その結果悪いうわさが広まり、売上が減少する。

 ⑥売上減少により人件費を削るも、一層経営が困難になる
 →売上の減少により、コスト削減として人件費を削る。すると、従業員の負担は大きくなるため退職者が増加し、最終的には閉店に追い込まれ  
  る場合もある。

引用:https://www.tryeting.jp/column/1717/

▶終わらない新型コロナウイルスの影響
コロナ休業を経て営業再開するにあたり、人手不足で入店制限をせざるを得ないという企業も出てきています。
コロナで休業を迫られた飲食店ではアルバイトを解雇せざるを得ず、またシフトを減らさざるを得ず、営業を再開したからといっていきなりシフトを増やすことは難しいのです。
新たな人材を採用しようとしても、

 ・感染リスクを心配し、飲食店でのバイトを敬遠される
 ・飲食業界のコロナ打撃を目撃し、業界の行き先に不安を覚えている

といった理由でなかなか応募が集まらないという現実があります。
一部の飲食店では、単発のアルバイトを導入するなどして対応しているようです。

引用:https://www.neo-career.co.jp/humanresource/knowhow/b-contents-parttime-insyokuhitodebusoku-190213/

▶給与に見合わない労働量
待遇面の悪さも人員が定着しない大きな要因です。

・低い給与水準
 外食産業は、他の職種と比べて人件費がかかるために、給与平均は比較的低くなりがちです。
 常に人員を配置しておかなければならないため、売上にならない時間も人件費がかかるためです。
 また、テナント料や食材の仕入れによるコストが大きくかかるのにも関わらず、利益が少ないため利益率も低い傾向となります。
 つまり、給与水準が低くなる原因は外食産業の構造的な問題なのです。

・難しい休暇取得
 常にギリギリの人数で構成されている為、交代要員がいないことが多く、急なお休みや長期休暇はなかなか取れません。
 
・非効率的な業務
 システム化が推進されていない企業も多く、効率的であればかかるはずのない負担がかかります。
 また、店長などの管理職は、本部への報告書類など事務作業も対応しなくてはなりません。

また、飲食業界の離職率が高い理由は「4K」とも言われています。
・きつい(体力仕事・休日が少ない)
・帰れない(労働時間が長い)
・厳しい(人間関係)
・給料が安い(残業代・ボーナス無しは当たり前)

■外食に就きたい人がやりたいことに注力できるお店
「ブラック業界」、「4K」と言われておりますが、飲食店で働くことに強い信念を持っている方もたくさんいます。
飲食店で働きたいと思う人は「料理が好き」、「接客が好き」、「自分の料理や接客でお客さんに喜んでもらいたい」この思いからこの業界に就く方がほとんどだと思います。

古いデータですが、求人@飲食店.COMの「飲食の仕事を選ぶ理由」の調査結果があります。
◆調査期間:2015年10月22日〜2015年10月27日
◆調査対象:求人@飲食店.COMを利用している20〜30代の正社員希望者(有効回答人数:157名)
引用:https://www.inshokuten.com/recruit/knowledge/questionnaire/detail/62

ここに上がっている理由は、今もほとんど変わっていないと思います。
飲食業界は、チームワークを重視している方も多く、従業員同士の繋がりが強い印象もあります。

しかし、チェーン店等の店舗数が多くなればなるほどに、調理や接客は極限までムダのないオペレーションになり、やりたいと思っていた仕事が出来ない構造になりました。

セントラルキッチンである程度完成されたものに多少の手を加える程度となり、調理と呼ぶには程遠いオペレーションとなったキッチン。
タブレットオーダーやセルフレジ、配膳ロボットの導入により、お客さんとの接点が無くなり始めたホール。
空き時間や終業後には、発注業務等の事務作業に追われ、調理や接客が得意な人が苦手な事務作業に従事するという悪循環も生まれています。

「人に喜んでもらえる」、「専門技術を身につけられる」お店は少なくなり、外食で働くことの本質からどんどん離れてきています。

美味しい料理を届けたい人が料理に注力し、接客をしたい人がお客さんを笑顔にすることに注力できれば、自然と店内の雰囲気も良くなり、サービスの質も向上し、お客さんにもその雰囲気の良さが伝わることで人が集まる空間になるといった、プラスの連鎖が生まれるのではないでしょうか。
接客と調理、間接業務を分け、得意な人が得意なものに注力出来る外食産業の新しい構造が出来れば、人手不足問題の解決に繋げられるかもしれません。


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