YCAの振り返り(芸人クイズ)

そろそろ本当に卒業する。

想い出はいっぱいある。

一番最初はZOOMだった。

確か最初の授業は事務局から今後のことを色々とご説明いただいたり、みんなで自己紹介をした後に、タレンチさんとのコミュニケーション講座だった気がする。

班に分かれて、吉本のコンビ芸人さん一組を選んで、そのコンビに関するヒントを3つ小出しにしていき、3つ目のヒントで答えが誰だったのかわかることを目標にクイズを作るという内容だった。

冷静に考えれば、それの何が授業やねんという気もするし、当時からそう思ってはいたけど、クイズ好きとしてはクイズを作れること自体が楽しかったから、よしとしておいた。

今思えば、自分はその時からすごく面倒くさいやつだった。

最初は控えめに行こうとして、というか1年間控えめに行こうとして黙っていたけど、チームで話しているうちにクイズ好きの血が踊り、鼓動が速まるのを抑えられなくなった。

「なんか適当に3つの情報を並べるのじゃなくて、1つ目のヒントでも、めっちゃ詳しい人ならちゃんと根拠を持って一択だけに絞れるようでないと、クイズの造りとして良くないんじゃないか?」
と、つい意見具申してしまった。

ちなみに、意見具申という単語はなんかかっちょいいから使ってみただけである。

そこからたがが外れた。必死で隠していたはずのクイズ王がとめどなく溢れた。

「答えを聞いた時に、あーなるほどっていう納得感があった方がいい」とか、

「少しでも学びになるような要素があった方がいい」とか、

サビクトビバッタの大群ぐらいの数の意見具申をしてしまった。

ちなみに、サバクトビバッタの大群は、自分の知識の豊富さをひけらかすためだけに用いた比喩である。





最終的に、

① 身長差が20㎝以上の漫才コンビ
② 上方漫才大賞を受賞
③ 同期に島田伸介、明石屋さんまらがいる

このコンビはだーれだ?

というクイズを出題することになった。


後々調べると、①のヒントには、ゆにばーすさん、コウテイさん、ニッポンの社長さんも含まれていたから、一切の論理的間違いなく一択に絞れる様にしようと思ったら、正しくは"身長差22cm以上の男性漫才コンビ"とするべきだった。

とはいえ、①のヒントで、条件に当てはまりそうだけど当てはまらない霜降り明星さん、からし蓮根さん、かまいたちさん、ナインティナインさん、中川家さん辺りにミスリードするという作戦は悪くはなかったと思う。

そして、②の上方漫才大賞受賞で、完全にかまいたちさんを連想させる。(あるいは、中川家さん


なんなら最初のヒントで誰かがかまいたちさんと答えて、かまいたちさんは不正解だと分かったのに、もっかいかまいたちさんと答えたくなり、もうかまいたちさん以外考えられない様な状態にするつもりの作戦だった。ちなみに、かまいたちさんの身長差は19cm。

で、③のヒントを聞いたところで、えっ!めっちゃベテランやん!あっもしかしてオール阪神巨人さんか!!!と気づかせる作戦だった。

そう。答えはオール阪神巨人さんだった。

我ながらそこそこ良くできていたと思う。

上方漫才大賞歴代最多の4回受賞という輝かしい功績をお持ちで、男女コンビのゆにばーすさんの身長差26cmを除けば、24cmという圧倒的な身長差を持ち、その世代の人なら身長差コンビといえば阪巨師匠とすら言えるお2人。

普通にクイズで出されても何にもおかしくないコンビだけど、自分たちでクイズを作るとなったら、おそらくみんな若手芸人やテレビに今現在もたくさん出ている人気芸人さんを連想すると思い、その盲点をついた。

盲点だけど、1番王道。最高の答えだ。

実際に僕の班でも最初は、とりあえずみんなの好きな芸人をとりあえず言い合うところから始まったし、そうなるのは極めて自然である。だからこそ、藤井みたいな逆を突くやつが活きて来る。

そして、班のみんなで練り合ったこのクイズをいざ出題の時。





僕たちの班からは代表でK君が読み上げてくれた。





「一つ目のヒントです。身長差が22cm以上の漫才コンビです。(←たぶんzoomのブレイクアウトルームを出た後に、K君が自分で調べて、身長差を班のみんなで決めた20cm以上から、22cm以上(21やったかな?)に変えてくれた)」





((さあ、どうだ。

どうだこの良問クイズ。

貴様らに解けるのか。

どうせい、かまいたちさんって答えるんだろ。

さあさあ、思う存分誤答しておくれよ。

そして、答えを聞いた途端、脳汁ドバドバ分泌させなよ。))



とか思っていると、1人が手を挙げて答えた。

誰が答えたかは忘れたけど、霜降り明星と答えた。




((残念。その答えも想定していたよ。

出すわけないだろ。そんな王道の答え。

俺を誰だと思ってる。藤井だぞ。

変化球投げるに決まってるじゃないか。

そして、このクイズは変化球の様に見えて、実は物凄く王道中の王道。

なんなら最近売れたばっかりの若手よりも、もっと王道の答えだ。

俺はストレートをど真ん中に投げてるけど、君たちが勝手に変化球にしてしまってるんだよ。

さあ、君たち。もっと解答したまえ。

そして、誤答して俺を楽しませてくれ。))



とか思っていると、2人目が手を挙げた。





((さあさあ、君は一体どんな誤答を見せてくれるんだい。

どうせなら、俺たちも想定していなかったような誤答をしてくれたまえ。))






この人は確か、ゆにばーすさんと答えていた気がする。(ニッポンの社長さんやったかな?誰かがかまいたちさんって答えてた気もするな)

これに関しては、ヒントに当てはまっていたから、申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、想定解と違ったので間違いとさせてもらった。

ちなみに、身長差を24cmというピンポイントの数字ではなく、あえて20cm以上としたのは、キリがよかったのと、あえて幅を持たせることで解答に辿り着きにくくするためだった。しかし、それが裏目に出てしまった。

ほんと申し訳ない。








そして、気持ちを切り替え、3人目。(か、4人目)

下の名を昴という、名前も顔もかっちょいい青年が手を挙げた。





((おうおう。

威勢のいい青年がいるじゃないか。

顔も男前。

君の様な男前が俺の考えたクイズで誤答してるところを見たくて堪らないんだよ。

さあ答えな。そして、誤答しな。

みっともない誤答で俺を楽しませておくれよ。))






「オール阪神巨人さんですか?」






((えっ、、、???))

((今、何て言った?))

((嘘だ。そんなはずはない。

俺のクイズは完璧だ。

こんなところで破られるわけがない。

ありえない。

そんなはずはない。

俺の聞き間違いに違いない。

他の班員のリアクションを見ればわかるはずだ。

きっと俺の様な幻聴は聞こえず、狙い通りの誤答が聞こえて、今頃ほくそ笑んでいるはずだ。

さあ、みんなの顔を見せてくれ。))






すると、代表のK君が小さく悔しさの混じった声でこう言った。





「正解です。」





僕が聞いた声は幻聴じゃなかった。

紛れもなく、オール阪神巨人さんを言い当てられていた。

K君も、何でわかったん?とボソッと言っていたから、あのクイズに自信を持っていたのは僕だけじゃなかったみたいだ。





昴という名の青年曰く、「阪神巨人さんしか浮かびませんでした」とのこと。





この瞬間、僕は目の前が真っ白になり、これまで積み上げて来た物を何もかも全部失った。(嘘)




でも、これがクイズであり、エンタメだ。

僕は1番難しいところに挑戦し、今回はたまたま一つ目のヒントで言い当てられただけだった。

流石にYCAという学校で、3つ目のヒントまで当てられない様な芸人クイズを作ろうと思ったら、もっと10倍は調べ尽くして練り上げられたクイズが必要だったかもしれない。

あるいは、3つ目まで分かるわけない理不尽なヒントか、そもそも3つ目まで答えを絞り切れる根拠がないヒント(30代のコンビ、みたいなヒント)にするしかなかったのかもしれない。

でも、それはエンタメではない。

エンタメのクイズとは、考えたら解けるとか、知らなかったけど学びになったとか、全くわからないけど解けてる人がカッコいいとか、そういった要素があって初めてクイズと呼べる。それがないなら、それは自己満足でしかない。

(ちなみに僕は、そういう出題者の自己満足クイズを解くのも嫌いじゃない。相手の性格などから、どんな自己満足の答えにしてきたかを推測するという、また別の競技を始めてしまう。)



また、今回は解答形式などを何も事前に知らされておらず、こちらもどういう解答形式かを想定していなかったところにも、一つ目のヒントで当てられた原因があった。

早く答えたら高いポイントがもらえるけど、誰かが一回でも間違えたらジ・エンドというルールであれば、高確率で2つ目のヒントで仕留められたと思うが、今回みたいになんぼでも自由に回答できる形式であれば、遅かれ早かれ一つ目のヒントで誰かに阪巨師匠を言い当てられていた可能性も十分ある。



非常に良い経験になった。

クイズを出題する時には、回答者のレベル感を正確に捉え、回答形式も想定に入れたうえで作らなきゃいけない。

そして、どういったクイズが求められているのかを把握できるだけの、空気を読んだりする能力も求められる。後は、相手がどういうクイズを楽しいと感じるか考える思いやりが求められる。


それもこれも、全部明確な意図を持ってクイズを作ったから学べたことだし、

1つ目のヒントでもわかる様にすることと、答えを聞いた時に、うわっ1つ目のヒントだけでもわかったやんと思わせることが狙いだったから、

1つ目で答えられてしまったことは、結果だけ見れば大失敗だけど、全然悪い内容じゃなかった。

例えるなら、羽生結弦が金メダルを逃すこと覚悟で4回転半に挑戦する様な物で、そこで挑戦をしなければ、永遠に出来る様にはならないのと似ている。

ましてや、クイズに関してはどうしても回答者に依存してしまう部分もあるから、今回は運が悪かっただけかもしれない。



と、藤井少年はYCA入学早々からエンタメ沼にハマった様に見せかけて、元からハマっていたクイズ沼により深くどっぷりハマっていき、フースーヤさんの配信の際の企画会議で、自作の脱出ゲームを披露して、どえらい地獄の様な空気感を作り出すのであった。


(続く)

この記事が参加している募集

振り返りnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?