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素人がちいさな出版社を立ち上げるとき役に立つ本の紹介

ふたり出版社を起業して7か月経ちました。すごい。正直半年で潰れるかもと思ってました。なんとまだ生きています。赤字だけど…。

今回は仕事の役に立った本を紹介してみます。ぼくは商業出版のやり方も流通の流れもISBNも決算も、本当になにも知らない状態で始めて、しかも知り合いに出版社の方がいるとかでもなかったので、これらの本にはとても助けられました。

起業する前は「そもそも何を読んで勉強すればいいのかすらもわからない」という感じだったので、この記事がそういう方のお役に立てればうれしいです。とりあえずまずレーベルを(名前だけでもいいから)立ち上げて、そのあとに紹介している本を全部読んでいけば、なんとか一冊はつくれるようになります。ぼくができたのでそれは間違いないはず…。




最初に読むとよさそうな本

①『あしたから出版社』(島田潤一郎著)

こんな記事に辿り着くぐらいだから、この本に関してはもう既に読んでいるという方が多いと思うのですが、しかしやはり必読の一冊です。この本を読んで心が強く揺れ動いた人は、たぶんなんにでもなれます。出版に限らず、「やりたいことがあるけどどうしても一歩踏み出せない」という方におすすめです。


②『重版未定』(川崎昌平著)

漫画です。出版業界の厳しい現実がよくわかる本。業界用語がたくさん出てくるので、そういう知識も身につきます。
「不況、過労、毎日がトラブル。割に合わないことばかり。それでも出版をやるのはなぜか?」がテーマです。読みやすいので入門にぴったりだと思います。


③『ひとり出版入門 つくって売るということ』(宮後優子著)

上の2冊を読んで「色々大変そうだけどそれでも出版社をやってみたい!」と思った方はこちらを読むといいと思います。一冊の本がつくられるまでの流れ、つくった後のこと、素人が必ずぶつかる壁についてなど、かなり具体的に書かれています。できれば立ち上げる前に出会いたかった…。
特に第2章は、契約する取次会社さんを決めるときのために絶対読んどいたほうがいいです。第1章にもすごく助けられました。


④『いつもより具体的な本づくりの話を。』(北尾修一著)

「ひとり出版入門」と同系統の本です。著者は「百万年書房」の北尾修一さん。タイトルの通り、具体的な本づくりの話が書かれています。出版企画書の例や制作費の内訳が載っているのが特に助かるところです。あと打ち合わせがどんな感じなのかとか。最初はそういうのもよくわからないから大変なのだ…。ぼくはいまでもよくわかっていません…。


⑤『よくわかる出版流通のしくみ 2023-24年版』(メディアパル発行)

これは結構掘っていかないと見つけられない出版関連本で、とても役に立ちました。流通の流れとか、現在の出版業界の現状とか、そういう基本がわかる教科書のような一冊です。



必須だと思った本

⑥『編集者・ライターのための必修基礎知識』(編集の学校/文章の学校監修)

ぼくの教科書です。いつも手元に置いてます。名前の通り、まさしく必修でした。こんな役立つのに2000円なら安いものです。後半の実務、法律、慣習などに関する事柄についての説明が特に助かりました。点滅社の出版契約書はこの本を参考に作成しています。いちばん読み返す回数が多かった一冊です。


⑦『18歳の著作権入門』(福井健策著)

出版社をはじめると著作権は避けて通れないものなので、とりあえず入門として読んどいた方がいい気がします。「そもそも著作権ってなに…」みたいなところから説明してくれるので助かります。あと実際に起こった裁判の内容が興味深くて、単純に読んでて楽しい…。


⑧『新版 編集者の著作権基礎知識』(豊田きいち 宮辺尚著)

「18歳の著作権入門」のあとに読むと良いです。「18歳の~」と違うのは「編集者のための著作権に関する知識」に特化しているところ。本だけではなく映画や音楽などの著作権についても具体的に書かれているので、広く深く、辞書的な使い方ができます。


⑨『校正記号の使い方』(日本エディタースクール編)

校正記号も、出版社を立ち上げたら絶対に避けては通れない道のひとつです。なので絶対買いましょう。値段が安くて凄いです。版元の日本エディタースクールさんは他にも編集者の役に立つ本を安い値段でかなりたくさん刊行しているので、一度ググっておいた方がよいです。


⑩『文藝年鑑』(日本文藝家協会編)

2023年度の文芸の動きを回顧。雑誌掲載作品目録、訃報、文学賞、文化各界人最新名簿、同人雑誌一覧等を付した関係者必携の年鑑。

去年度の文学の総括、それから出版関係者などの詳細なリストが掲載されています。文芸系の出版社を立ち上げたい方は手元に置いていて損はないと思います。点滅社では『鬱の本』という書籍を製作する際にとても役立ちました。



志を学ぶための本

⑪『増補改訂版“ひとり出版社”という働きかた』(西山雅子著)

ひとり出版社をやっている方々へのインタビュー本です。「なぜ始めたのか?」「どういう本をどういう動機でつくっているのか?」などがわかります。そして出版の世界の楽しさと厳しさも。個人的にはタバブックスさんとミルブックスさんの章がとてもおもしろかったです。点滅社がBASEなどを積極的にやっているのはタバブックスさんのやり方を、刊行記念イベントを積極的にやっているのはミルブックスさんのやり方を真似したからです。


⑫『計画と無計画のあいだ』(三島邦弘著)

「事業計画書がない」とか「潰れかけなのに人を雇う」とか、ぼくと似ているところが多くて嬉しくなっちゃう本です。とはいえミシマ社さんは点滅社と違ってちゃんと能力も実績もあるので、やはりしっかりとキメるところはキメています。あと情熱がすごい本当に。この人にはかなわないなと思います。しかし、本音を言うとぼくもいつかは並びたい…一流大学を出ていて編集経験も豊富な凄い方と大学中退のど素人のボンクラが並んだら、それはたぶん超おもしろいから。


⑬『まっ直ぐに本を売る: ラディカルな出版「直取引」の方法』(石橋毅史著)

それまでは難しくて試す人間があまりいなかった「直取引」という方法で成功した、トランスビューさんの経営方法について書かれた本です。他の本も全部そうですが、この本は特に、もう何が何でも手に入れた方がいいです。経営論だけではなく、実際の手順まで詳細に書かれているところが素晴らしい。発送のやり方についてはこの本をかなり参考にしました。


⑭『出版をめぐる冒険』(長岡義幸著)

「出版不況」と何十年も言われている中でなぜかうまくいっている出版社をインタビューした本。情熱の塊のような文章で、やってやるぜという気持ちになれます。


会社うんぬんの本

⑮『合同会社 設立・登記・運営がまるごとわかる本』(「合同会社まるごとわかる本」プロジェクトチーム著)

なんだかんだ言って一番役に立ったのはこれです。合同会社と株式会社の違いも分からなかったぼくが起業できたのはこの本のおかげです。本当にありがとうの気持ち。


⑯『しょぼい起業で生きていく』(えらいてんちょう著)

「起業って誰でもできるもんなんだぜ」「たとえなんにも持ってなくても、やり方や視点を変えればなにかできるかもだぜ」ということを教えてくれる本。
本当に起業するかどうかはまた別の話だけど、とにかく読めば斬新な考え方が学べます。


⑰『世界一楽しい決算書の読み方』(大手町のランダムウォーカー著)

世界一楽しいと書いてありますが、ぼくにとって決算は世界一楽しくない作業なので、世界一楽しくはないです。ですがとてもわかりやすく勉強になります…がんばります…。


勇気の本

⑱『ドラえもん 第6巻』(藤子・F・不二雄著)

べつにドラえもんの6巻じゃなくてもなんでもいいのですが、勇気が出る本は一冊手元に置いといた方がいいです。電話どころかメールでさえも怖くて手が震えるぼくがなんとか一冊刊行出来たのはドラえもん第6巻のおかげです。「さようなら、ドラえもん」がなかったら起業なんて怖くてとてもできませんでした。


はいもう疲れた!終わり!また気が向いたらやります!




※最終更新日 2024年9月16日

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