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小さい出版社を経営することの魅力

そろそろ点滅社をつくって一年になるので、自分なりに「小さい出版社を経営することの魅力」について書いてみようと思います。いつも暗い記事ばかり書いていて申し訳ないので…最近『ひとり出版社という働きかた』(河出書房新社)という本を読み返していたのですが、そこに、

そして「でもやっぱり、本の仕事をしてみたい」という人に対して、出版業界の人は追い打ちをかけるように「未来がないから、やめておきなさい」と言ったりします。それぞれが身の回りで直に不況を感じているのですから、仕方ない面もあるのですが、しかしそれでもぼくは、この手の発言は許せません。頭ごなしにそんなことを言っていたら、本に携わる人はいよいよいなくなり、本当に未来がなくなってしまうからです。

西山雅子編『ひとり出版社という働きかた』
p250「小さな本屋」の話/内沼晋太郎

という文章が出てきて、「ぼくはいつも暗い話ばかりしていて、もしかして出版業界に悪影響を与えているのでは…」と反省したのです…。ぼくの影響力なんて本当にたかが知れていますし、誰かに向かって頭ごなしに「やめておきなさい」と言ったこともないのですが、しかしやはり暗い話ばっかしているのもよくない気がするので、ぜんぜん似合わないけどたまには頑張って明るい話を書いてみます。


小さい出版社を経営することの魅力

①めっちゃドキドキする

まず、単純に「めっちゃドキドキする」という魅力があります。なんかすげーバカみたいですが…でもこれこそが経営の醍醐味だと思うのです。ぼくがいちばんドキドキしたのは登記の前日です。「色々よくわかってねーけど、とにかくこれからすげーことやってやるぜ!」みたいな気分になれました。あのドキドキは人生でめったに味わえるものではありません。

悪いドキドキもたくさん味わえます。「明るい話を」と書いたそばからさっそく暗い話題になってしまい申し訳ないのですが、それはもう信じられないぐらい儲からないのです。びっくりしました。しかしそのドキドキまで含めておもしろいです。自分の人生が大きくうねっている感じがします。


えらくもないし りっぱでもない
わかってるのは 胸のドキドキ
答えでもない 本当でもない
信じてるのは 胸のドキドキ
胸のドキドキだけ

THE HIGH-LOWS「胸がドキドキ」


②「俺は独立国家だ」みたいな気分になれる

当たり前ですが、実際は国家でもなんでもなくただのしょぼい零細です。しかし国をひとつ持ったような気分になれます。これはたぶん、しょぼいとはいえ「肩書き」「影響力」「存在感」などなどを手に入れることができるからだと思われます。自社でつくった本が日本中の書店に置かれるわけです。「すごい!昨日まで誰にも相手にされないニートだったのに!ざまあみろ!がはは!」みたいな脳汁が出てきても仕方がありません(ぼくだけだったらごめん…)。

…が、しかし、これはめちゃくちゃ気持ちがよく楽しいのですが、危険性もちゃんと考えないといけません。影響を及ぼすということは責任も発生します。一歩間違えればヘイトをまき散らす存在になっちゃうかもしれないのです。本当に怖い。常に気を付けてないといけません。


③本に書かれてあることがすぐ実践できる

ぼくは経験もコネも何もない状態で出版社を始めたため、最初の頃は相談する相手もおらず、ひたすら出版関連本を読み漁ってやり方を覚えていました。
それまでは職業に関する本やビジネス本を読んでも他人事というか、「おれの人生にまったく関係ない気がする…」という感じだったのですが、起業してからは違いました。たとえば「会社には種類が何通りかあって云々…」と書かれていれば「えーと、じゃあぼくはこのタイプの会社にしようかな…」となり、「営業の方法は云々…」と書かれていたら「ああ、だから最初迷惑そうな顔をされたのか。あそこではああいう風に説明すればよかったんだな」となり、もうとにかく本が役に立ちまくり、リアルタイム感がありまくりなのです。インプット→アウトプットまでの流れが速い。
読んだ後にすぐ実践、実験ができるのは楽しいです。


④もらえる経験値が多い

小さい出版社だと、人員が少ない分、ひとりひとりが色んな仕事を同時進行で進めていくことになります。たとえばぼくの場合は編集、営業、事務、会計、接客などなどです。本当にたくさんのことを一気に覚えたり身につけたりしないといけないので、その分もらえる経験値がほかの仕事よりもやや多めなんじゃないかな?という気がしています。その割にぼくは相変わらず今も無能のままなのでなんとも説得力がないのですが…。


⑤本づくりがおもしろすぎる

色々書いてきましたが、最後はやはりこれです。本をつくるのがおもしろすぎる。同じくらい苦しいこともあるのですが、しかしやはり、あまりにもおもしろすぎる。小さい出版社はみんなこれのためにつらく苦手な経理などを頑張っているのです(たぶん)。


以上です。なんかあんまり経営とかと関係ないふわふわした話ばかりになってしまいましたね…ごめんなさい。来年はもっといい記事が書けるよう頑張ります。

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