αるかん

日々のなかから選りすぐりのワンシーンを綴る。

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最近の記事

展望台

見おろす風景から聞こえてくるゴーーって音が 海の音なんか車が走る音なんか、 わからんくなる 海の音やったらいいのに、 8割型車やろって でもその中で 波の退いていく音や打ち上げる音もしてる。そういうイメージで耳を澄ましてる。 海の音も車の音も 全部混ざった風の音 海の向こうから響く音

    • わたし は、 もう住む人もいないような、整備も手放された この世の果のような長屋の一角をお借りして 猫2匹と おいしいご飯を食べることを誓い 日々暮らしている。 わたし が育ったのは小さな漁村で ひねくれた大人たちの会話を心底気味悪がりながら 夜になると 月を眺めて 懐中電灯を宇宙に向けてカチカチと信号を送り 返事を待つのが一番の楽しみな子どもであったので ともだちという友達はいなかったように思う。 幼少期の絶望が、 わたし を呑気な娘に育てあげたと言っても過言ではなく

      • ゆめのはなし

        暴力を止められない夢を見た。 わたしはぶつけることをしたくないのに止めることができなかった。 相手は母、姉、妹で 特に母には酷かった。 ナイーブな姉と 障害を持って生まれた妹を 母はかなり気にかけていた。 当然そうだと思う。 心配になるのもわかる。 けれども母のやり方はやや過干渉気味というか、根本的でないのではないかと子どもながらに感じていて、わたしはそんな母がなんとなく嫌だった。 周りに迷惑をかけないように、と 必死に働く母。 姉と妹にかかりきりなので、わたしは比較的奔

        • t(h)ree

          わたしが好きだと言った花を いちばん最初にもってきてくれる ことに 溢れる気持ちの中心は少しだけ 哀しいような 遠いような広がりがあって 透き通っていて 感情が水であることを知る わたしは泳いでばかりいて 答えを探してばかりいて 見つからないと思って 辿り着きたいと思って わからなくなってしまうのだ けれど、 その水の温度に触れたとき 温めたい、 と思って わたしはそれを飲み込んだ。

          白いページ

          ひとりの時間がとても好きだ。 何も話さないでいて、 真昼の白い光が語りかけてくるのが好きだ。 外に出て、ひとり ひとりだ、と、 感じることが好きだ。 たくさん人がいても ひとりの体で ひとりの熱で ひとりの瞳で 感じたことからわたしは作られる どうしたいのか知っている どうすればいいのか考える 重くて重くて 動かないときは 小さく刻む 秒針に聞く 逃げる自分を追いかけて 掴みにいく 何度でも何度でも 不器用で嫌になる けれど その奥にある小さな小さな想いを見つめて

          白いページ

          深夜に突然、和歌山に行こうと思いました。 こんな深夜の思い付きに乗っかるのはどうかと自分を否しましたが、 私の体は勝手に動いていて、 理性ではどうしようもないことがあるのだと改めて実感しました。 初めて和歌山の海と出会った私は高校生で、 近場の海とはまるで表情の違うその海の美しさに、 ただならぬ安心感を抱いたのを覚えています。 それが年々、目に見えて薄汚れていく様に、気持ちが付いていかなかったことも 行かなくなった理由のひとつかもしれません。 気

          友達と川下りをした。 流されるという恐怖はあったものの、乗ってみるとめちゃめちゃ面白かった。 普段は絶対観れない風景が広がっていて、それが緩やかに流れてゆく。 まるで水面に浮く葉っぱになったみたいで、“私”というものはなく、ただただその風景の一部でしかなかった。 ものすごく心地よかった。 そのまま溶けてしまいたかったけれど漕がなければ浅瀬や窪地にはまってしまう。 川の深さや流れをみて進まなくてはならない。 流れの筋があるのだけれど、一筋縄ではいかなくて、何度か浅瀬で座礁した

          ‪ のんきにテクテク歩いてきたけど分厚い壁が現れて‬ ‪迂回しようとしたけど‬ ‪どの道行っても‬ ‪「通れません」「通れません」‬ ‪言うんよ。‬ ‪もうこの壁壊すしかないんかなって。でもめちゃめちゃ分厚いし素手でいかれへんなって 訳で武器探しに出たんですけど、木の棒しかないんですよ。‬ ‪しかもめっちゃ湿ってるやつ。‬ ‪ソッコー折れるわ。‬ ‪もう仕方ないから一休さんしよう思て壁の前でポクポクやってみたんです。‬ ‪そしたら掘れ言うんですよ。‬ ‪あっ、なーる‬ ‪っ

          性と生

          自分の性に対してコンプレックスというか、体が成長すると男女どうしても違いが出てきて、めんどくさいなぁとか嫌やなぁ思うことも数々あったけど そんなこと関係なく接していきたいと願う反面、それは逆に執着しているとも取れる。 広く見れば自分自身を認めてない受け入れられてないということで、 それが幼少期に感じた、性という自分にまだ芽生えていない未知なるものへの不安、恐怖、不快な感覚、母親の性に対する姿勢、女性というもののイメージなどが積み重なって、それはいつからか概念となって頭に重く

          青春

          どこかに行きたいと思っていたのだけれど どこにも行けやしないんだと 傷付いて、 気が付いて、 好きなもの、 なんだっけか 幼いころの自分に問うてみたり 誰かの影と重なって わからなくなったりそんなこと 自分にしかわからない わたしはひとりになりたかった 合ってた 合ってた 嬉しい やっぱり ここにあった 好きなもの 紛れてしまって臆病になって なくしてしまいそうだった 好きなもの わたし やっぱり 好きだった 嬉しい 同じだった 変わらなかった ずっとそうだった やっ

          あお

          今日の夕方、買い出しに出かけた。 空豆とイワシが安かったので、今日はそれを焼こう。 猫たちも喜ぶ。 空の青がおりてきたみたいに 街全体が青く染まるこの時間がとても好きだ。 遠くの人を思って お腹をすかせていたので家路についた。 家に帰って 自分が選んだお肉やら魚やらを出すと ”嬉しい” という感覚があったので このものたちは 嬉しいのだと知った それは それ自身か それを育てた人か 仕留めた人か それを仕入れた人か それをパックに詰めた人か その全部かわ

          May Day

          雨の降る深夜のこと 探しものをしていたら 愛猫が帰ってきたので 濡れた身体を拭いてやる ついでに窓の外を覗くと 湿気のある少し冷たい空気に アスファルトと 土と 草の香りの入り混じった匂いが静かに そこにあって 昼間の夢の熱を覚ます 雨に呼び起こされた様々な気配が 湧き上がり 立ち昇る 生命のうたの 大合唱 まるで森の中のようだと 遠くの私は 安心していいと言っている 明るいときは 街の音に合わせて 囁くように唄うから 深夜の暗闇だからこそ 探しものは見つかっ

          直接的な関わりが限られた現状の中で 人と接したとき ものすごく敏感に情報をキャッチしている自分がいるのにもかかわらず 逆に 現実味がないような 超精密な映像を観ているかのような 不思議な感覚に陥る 其れは 細やかな光の粒で表現され 実体があり 触れることもできる 筈 なのだけれども 其れは お互いが 安全な距離を保つことを意識下において接する過程で生まれた 優しみでできている 其の 見えない 膜 越しに 其の一定の距離で 鼻と口をマスク

           [space]

          全ては 同じものでできていて 混ざり合って 形を変えて存在していて ここに産まれ生きゆく中で 色々に 互いに影響し合い少しづつ 降り積もり 混じり合い 混沌となった その混沌の中から形成されてゆく時が 今 皆が愛を選択して生きていて 愛は形を変えて 変え続けて 今 ここにある全てのものが 自ら創り出した愛 そのものであることを知ったとき わたしは全てを愛することができた あの子の痛みや苦しみも 全て 抱いて温めてあげたいと思った 受け止める場所ができた

          疾風

          自分のことでいっぱいいっぱいになってしまったときは まわりのものが見えなくなる 自分で自分を縛っていることに 気が付けなくなる 自らをそこに置いて 現実と向き合うことの意味を 履き違えたまま 進まなきゃならないと ひどく苦しんでいる その一本道はかなり危険だ 過去は戻らない 今あるものも知らないで 未来を作れると言うのかい 失ったものを数えるよりも 自分に無いものを嘆くよりも もっともっと 大切にしてきたものがあるからきみは 苦しんでいるのだろう

          ひとりで抱えきれなくなってしまって ぽろりとこぼした涙のように あなたに言った言葉は あなたを傷付けるだけで 何も期待などしていなかった筈なのに あなたはそれについてとても考えていてくれたので わたしはもう何も言えなくなってしまった ささやかに咲いた けれど奥の方では わかるはずもない という 絶望のような感覚に襲われて わかるはずもない話をしてしまったが 故に あなたの大切な時間を奪ってしまった 上に これはわたしのものだと 主張したくなるようなプライドが いかにも邪