壁
のんきにテクテク歩いてきたけど分厚い壁が現れて
迂回しようとしたけど
どの道行っても
「通れません」「通れません」
言うんよ。
もうこの壁壊すしかないんかなって。でもめちゃめちゃ分厚いし素手でいかれへんなって
訳で武器探しに出たんですけど、木の棒しかないんですよ。
しかもめっちゃ湿ってるやつ。
ソッコー折れるわ。
もう仕方ないから一休さんしよう思て壁の前でポクポクやってみたんです。
そしたら掘れ言うんですよ。
あっ、なーる
って下ネタ含みつつ掘って
さらに掘って、
すると急に地面崩れた穴の向こう側に子どもが座ってるんですよ。
まさかの急展開に
ちょっと怖かったんですけど、そこまで降りていってみると
私には全然気付いてないみたいで。
胡座描いたまま空向いて
楽しそうにしてるんで、何見てるんかなーと思って
同じ目線で見てみようとしたら
シュウーーと吸い込まれてその子の視点に入れたんです。
そしたらもうひたすら明るい青い空に浮かぶ雲。
漂う雲に映るのは
水辺の生き物
虫
動物
風
揺れる草木
それらの命が躍動し輝いている瞬間
光線のような光の球がいくつもいくつも弾けて見える。
子どもは夢を描いていたんです。
それらを守ること、愛しむこと、それらは体で感じ心で通じ合う。
そのものの根源にある能力を最大に活かし開き続ける、生命力溢れるイメージの世界。
生も死も受け入れて暮らす自然界の営みは、たとえどんなに残酷であっても、ただひたすらに
感謝と歓びを唱えているように見えた。
子どもは、それを表現する言葉は知らなくても
感覚としてそう受け取っているのだと思った。
これは子どもの感覚の話。
まだまだ空は青く、高く、
雲が映している中、
もっと、更に奥へ。
上昇した自分がそこで出会ったのは、子どもが成長した姿だった。
目があった瞬間、
細胞がみるみる開いて行くような感覚を知った。
子どもは想像していた。
自分の大人になった姿を。
そうだったのか、と
目覚めてゆく暗闇の中
遠く離れてゆく子どもを見送った。
壁はそのままでまだあった。
これが現実だった。
希望を落っことしそうになりながらも、私は掘ることを諦めなかった。
この壁をくぐり抜けた先には一体何があるのだろうか。
美しい緑の草原
土の香りが立ち昇る豊かな森
降り注ぐ星空
輝く街
なんてものはない
絶望で埋め尽くされた風景だったとしても、私は変わらないでいる。
守りたいものがある。
私たちはそれをすることができる。
ただ真っ直ぐに、
自身の法に従い与え受け取って行くバランス。
振り向いてはいけない。
消えゆくものは
消えてゆく
残るものを信じなさい。
生きている限りそれは無限に生まれて行く。
やはり。
壁など初めから無かったのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?