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就活中の女子大生だった私が、見知らぬおっさんに焼肉に誘われた話

201◯年、就職活動中の女子大生だった私が、見知らぬおじさんに焼肉に誘われた話です。

結論から言うと、私はおっさんと焼肉は食べておらず、トラブルになった等もありません!ただ、元京大の人が就活テストを代行して捕まったというニュースを見て、就活時代のこの事件(?)を思い出して心がザワザワしたので…。消化しようと思い、書き起こします。

LINE必死に探したら当時のやりとり(てかおっさん山本(仮名)からの連絡のみ)が残ってたので、それも後述。

私と山本(仮)について

まずは簡単に自己紹介から。声をかけてきた男は山本(仮)とする。名前の山本チョイスは適当。


・当時大学4年生、21歳
・就職先がなかなか決まらず将来に不安しかない
・高校のとき、同級生の男から言われた「ブス」を呪いのように抱えて生きている

山本(仮)
・40代後半〜50くらいのおっさん
・中肉中背で白髪混じりのマジでフッツーのおっさん
・(自称)某有名飲料メーカー関連の仕事をしているおっさん

出会ったのは寂れた就活イベント


事が起きたのは6月某日。私は他の就活生たちが前年12月から始めていた就職活動をめんどくさがり、見事6月当時就職先難民だった。確実にツケが回ってきている。自業自得である。

お祈りメールが毎日のように届くなか、藁にもすがる思いで住んでいる市内で開催される就活生向けのイベントに参加した。会場に行ってみると、公民館みたいな場所。5個くらいのブースで地元の企業が出展していて、詳細は省くが、なんの成果も得られませんでしたと言った感じで、肩を落として会場を出た。

トボトボ歩いていると、不意に後ろから声がかかる。「就活生さん?さっきのイベントに行ってたの?」そう、のちに判明するが、この男こそが山本である。印象に残らない顔で今となっては全く顔を思い出せない。会場では見かけなかったので、関係者ではないのだろう。では、外で何をしていたんだろうか。

今の私なら確実に無視するが、当時は精神状態がまともでなかったからか、受け答えをした。なんと返したかは覚えていないが、山本から「君からさっきの会場に来てた他の学生とは違うものを感じた。なんで就活に困ってるのか分からない」みたいなことをしきりに言われたのを覚えている。会ったことも話したこともない、私がどんな人間かも知らない人がそんなこと分かるはずもないのにね。

お世辞ばっかり言うおっさんだなと思いつつも、心が落ち込んでいたところで人と話すことに安心してしまったのか、山本の人当たりの良さからか、いつの間にか隣で歩きながら身の上話をしていた。山本は自身が某有名飲料メーカー関連の仕事をしており、よければ私の就活相談に乗りたいという風なことを言ってきた。

振り返れば、その飲料メーカーの名前を出しながらあくまで「関連の仕事」と言うのが胡散臭い。しかも、会ったことも喋ったこともない私に「人と違うものがある(キリッ)」とか胡散臭いのフルコースすぎる。怪しいので絶対にすぐ退くべきだけど、話を聞きたいのなら名刺をもらうとかするべきだったなと反省している。

さすがの私も「人とは違(以下略)」を鵜呑みにするほど馬鹿ではなかった。でも、企業からの不採用が続き、いつしか「不採用」を「あなたは社会に必要ありません」と曲解してしまっていた私は、社会人である山本に肯定的な言葉をかけられ、誘われたカフェにのこのこついて行ってしまった。

山本「焼肉でも行こうよ!」

カフェに入ると山本は飲み物のお金も出してくれたし、私の愚痴っぽい就活話にもひたすら耳を傾けてくれた。1時間くらい経った頃だろうか、山本が「〇〇(私)ちゃん、この後焼肉でも行こうよ!美味しいところでご馳走するよ!」と誘われた。会ったばかりの私に?と疑問に思ったものの、ちょうど私はその後バイトがあったので断り、LINEを交換して後日ということになった。

今でこそ「会ったばかりの私に」といったツッコミを入れているが、当時私は今ほど他人に対して警戒心を持っておらず、本名まで教えてしまっていたのだ。アホである。

そして、本当に本当に恥ずかしくて、自分が怖くて消えてしまいたいが、私は多分バイトがなければタダ飯に釣られてホイホイついていっていたと思う。

私を救ったAくんの助言

そしてバイト先に到着。その日の終わりに締め作業をしているとき、バイト仲間のAくんに今日あったことを話した。「胡散臭いおっさんに会ってさ〜。でも焼肉奢ってくれるらしいんだよねー」みたいなテンションで。

するとAくんは、「え、それ怪しくない?絶対行ったらダメなやつだと思うよ。焼肉ご馳走するって、今日会ったばかりの〇〇(私の苗字)に?焼肉って個室とかもあるよね。どんな理由にせよ危ない気がするからLINE返さない方がいいよ。行くのもやめときな」的なことを優しく諭してくれたのだった。

私はそのときまだ深く考えていなかったが、確かに知らない人といきなりご飯に行くのは少し怖いな(漠然)とAくんの助言を素直に聞き入れた。ここが自分の唯一偉かった点だといえる。バイトが終わって帰宅後、一部始終を母にも話すと母は顔面蒼白。そりゃそうだ。「そんなの絶対行っちゃダメ!トイレ行ってる間に飲み物に薬入れられたりしたらどうするの!」と母は語気を強めた。

そこで私はやっと具体的な危険性を察知した。「そうか、薬を盛ってホテルに連れて行かれることもあるのか、最悪の場合殺されるかも…」とここでようやく気付いた。本当に遅い。

なんでハタチも過ぎて気付かなかったのか

私が20も過ぎてそんなことにも気づけなかったのは、今考えると3つ理由があったと思う。

①それまでこんな人に出会ったことがなかった
②「自分が異性から女性として見られること」を経験してなかったので、想像できなかった
③そのとき就活を重く捉え過ぎており、精神バランスが保てておらず正確な判断ができてなかった

①に関してはまぁただのラッキー。周囲に恵まれていたし、親や周りの人が守ってくれていた。

②の方が大きい理由で、彼氏がいたこともなければ、異性から好意を向けられたこともなかった当時の私。(山本が何を考えていたかは分からないが、)男が私のことを性の対象として見ることがないと無意識のうちに決めつけていた。というか、そんな思考回路が頭になかったという方が正しいかもしれない。「ブス」の呪いも背負っていたので、初対面の男性にそんなことを思われることなんてあり得ないと。ていうか、そもそも父親ほど歳が離れた男から女として見られるとか思わんし、キモすぎるでしょ。

③については就活をサボっていた自分が悪いが、追い込まれすぎていたので山本と話をするなかで、心のどこかで「仕事紹介してくれないかな」みたいな邪な思いがあったのも事実。身体を差し出すから!とか、何かと引き換えに!などはもちろん一切考えてなかったが、「本当にただのいいおじさんかも?私に可能性を見出して仕事くれるかも!」みたいな都合のいい考えが思いつくくらいにはおかしくなってた。

ここまできて信じてもらえないだろうが、私は子どものころから危機管理能力が割と高い方だった。周囲からもそう言われていたし、常に危機感を持って自分の身を守ることを考えていた。(今よりは薄いが)知らない人やうまい話を疑ってかかるということもしていたはずだ。

でも、面と向かって会って、話しやすい雰囲気があって親身になって話を聞いてくれる人(山本)のことは信じてしまいそうになった。最初は警戒していても遠ざけることをせず、間合いに入らせてしまった。私は門を叩く人は警戒していたが、家の中に入れること(今回で言うところの良い人かも?と判断してコミュニケーション)を許してしまうとそこからは完全に無防備だったのだ。山本に何か思惑があったにしろなかったにしろ、私自身その可能性が全く浮かんでなかったのでここら辺がまだまだ子どもだったし、未熟だったなと。

話が若干逸れるが、宗教は宗教の顔をして近づいてこないという言い方があるが、人当たりの良い人でも腹の中では何を狙っているか、目の前の相手をどうするつもりか分からない。うまい話や直感的に怪しいと思った人には近づいちゃダメだなー。

とにかく、私は山本との出来事をきっかけに、母の忠告で自分が誰かの性の対象になり得ることを知り、人を警戒する気持ちがガッチガチに固まったのであった。

自己肯定感の低そうな女を狙った?

ここで、今更だが山本の狙いと私を選んだ理由を考えてみる。

まず狙い。可能性として考えられるのは「(金銭の授受を交わした、就職先を餌にした、あるいは無理やりの)性的な目的」「若い女性と食事がしたかった」私にはこの2つしか思いつかない。だって、それが無いと山本側に何のメリットも無いから。

私のことをベタ褒めしていたが、山本が本気で私に仕事を紹介したかった線も確実にない。自分で言うのもなんだが、当時の私は企業が即決採用したくなるほどの人間じゃなかった。話がうまいわけでも愛嬌があるわけでもなく、実際ここまで全く就職先が決まっていない。少なくとも出会ってすぐ「この人が職場に欲しい!」と思われる要素はなかったと思う。(もしかしたら〝何か〟を引き換えに仕事を紹介することは考えていたかも)

それに、もし本気で仕事を紹介したいのであれば、カフェの時点でその話に移るだろう。そもそも、私以外にもあの場には就活生が沢山いたんだから、私だけを褒めちぎって上機嫌にさせる理由がないと思う。

やはり何か下心があったのだろうか。当時山本から来たLINEはこんなものだった。

いろんな意味で援助ってなに?こわすぎ

焼肉に行っていたら「お金をあげるから」「就職先を紹介してあげるから」と何かを要求されたのかもしれない。LINEでは「いろんな意味で援助」とある。50近いおっさんが初対面の女子大生に言うこの言葉の真意はなんだろうか。アラサーになった私には上記の2つしか可能性が浮かばなかった。

次は私を選んだ理由について。これは互いに関係しあってるけど、2つあると思う。

・私が明らかに弱ってそうだったから
出会ったのも就活イベント会場だったし。今思えばあそこで私みたいなターゲットを狙ってたのかな〜。優しい言葉を掛けて「君は人とは違う!求められるべき人材」と声をかけたらチョロいと思われてたのかも。

・私が自信がなさそうなタイプに見えたから
その通りで、先述の通りブス呪いを抱えてて元々なかった自信が、社会から「必要とされてない」と悲観的になって更に失われてた。多分めっちゃ美人だったりしたら逆に声かけられてないんじゃないかな?あしらわれるのわかりきってるから。いわゆる、自己肯定感が低いちょっと褒めたらいけそうな女と思われたっぽい。

さいごに

まぁこんだけダラダラ書いたけど山本の狙いは分からずじまい。LINEはトークから抜けて?て、ユーザーがいません状態になってた。

「こんにちは」と来たのはひとつ前の吹き出しから1ヶ月後。退出してるのは2年後の9月

自意識過剰と思う人もいると思う。私も自意識過剰だと思うけど、私はこの経験を経て自分も大きな性犯罪に巻き込まれる可能性があるって気付いたというか、他人事じゃないって今一度考える機会になったのよね。

「女性は気をつけなきゃいけない」世の中なんてクソくらえすぎるけど、今すぐどうこうならなさそうなので(遠い目)、自分の身は自分で守って生きてこう。

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