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血迷って行った婚活パーティーでマッチングした人と呑んでたら有線で推しの曲が流れてきて泣いた話

なんで婚活パーティーに応募してしまったのか全然覚えていない。

一番の親友が結婚して子どもを持って、いつ電話しても家族の会話がダダ漏れに聞こえてくるようになったから?

高校時代は何時間でも永遠に喋り続けられた大好きなその友達と話が全然続かなくなったから?

前に一人で動物園に行ったとき周りがカップルと家族連れだらけで流石に寂しくなったから?

直属の上司に言い寄られ始めていてはっきり断れるようにパートナーがいればいいのにと思ったから?

推しもいつか結婚して家庭を持つかもしれないと思うと怖くなったから?

この先周りがどんどん人生を先に進めていくのに私だけが学生気分のままでいて大丈夫か不安になったから?

とにかくみんなから取り残される気がして、彼氏さえ作れば、結婚さえできれば何か解決するような気がして、衝動的に応募してしまったんだろう。その金でウイスキー買って飲んで寝ればよかったんだ。

婚活パーティーの日は、私の世界で一番好きで、尊敬していて、この世で一番尊い私の推し、SEVENTEENのディノの誕生日だった。

ワールドクラスのアイドルを勝手に好きになったただのオタクでしかないくせに、推しの誕生日に婚活パーティーに行くのはなぜかとても後ろめたかった。

それに、私とディノは同じ年の同じ月に生まれている。(それに果てしなく運命を感じること以外もう私には誇れることがない)

今日はディノはどんな誕生日を過ごすんだろうと思った。ご家族に祝われて、メンバーやファンや関係者の方々からも祝われて、楽しい一日を過ごせたのかな。とにかく幸せでいてほしい。ずっとずっと笑顔でいてほしい。

本当なら誕生日当日に、ウィバースで予約したディノのバースデーボックスを受け取る予定だった。でも婚活パーティーがあるので翌日に変更した。
この時点でもう、自分でやりたいと思ってもいない方向に進んでいることに気付き始めていた。私はなんでこんな間違えてばっかりなんだ。

ディノのチッケムを観ながらメイクして、着替えて、何してんだろなと思った。

ディノのダンスを初めて観たとき(Rock with youのチッケムか個人のダンスカバーだったか)、仕事で精神を病んで感情が動かなくなっていたのに急に涙が止まらなくなって、「こんな素晴らしい人がいるんだ」と思った。

指先まで完璧にコントロールされていて、技術の上に情熱がのっていて、くっきりとそこに「存在してる」感じ。ダンスで泣いたのは生まれて初めてだった。

歌声もクリアで美しくて、笑うと幼くて、ちょっと抜けてて、周りから愛されて、真面目で、真摯で、自分で考えて言葉を選ぶ人。全てに透明感があって、努力の結晶で、存在自体がクリスタルみたいなアイドル。

私の生きがい。何回も会社のトイレで腕を切りながら、急性アルコール中毒でこの世から行方をくらませられないか試しながら、いつもいつもあの可愛い顔がよぎるおかげで思いとどまれている私の推し。

普段何に対しても感情が動かなくなってしまったけど、ディノを観るときだけは自然と笑っている。もう、心が動くのは推しを見るときだけだ。

会場にいる女性たちは綺麗で垢抜けた人が多かった。比較的若い人が多い。普通に女友達が欲しいから連絡先交換したいな、と思う。

でも男性陣の年齢層が総じて高い。年齢上限45歳のところに来るんじゃなかったなと後悔した。
今ひとつ結婚に現実的になれていないくせに、ぼんやりと20代の人がいいなとは思っていた。

制限時間3分でどんどん目の前の男の人が代わっていく。話すことはみんな同じ。みんな同じ眼鏡、同じような服、同じような回答。自分を褒めさせようと話題を誘導してきて、話題にも言葉選びにも何にも深みはなくて、その人がどんな人か全然わからない。就活のときと同じだ。

本当は趣味なんてないかアニメ見るくらいだけど運転免許持ってるならアウトドアな印象にするためにドライブって答えとけっていうマニュアルの透けた自己紹介。こっちの職種とか学歴言った瞬間の微妙に卑屈な表情。

私も私で、作り笑いしてリアクションとって接待してる感じだったし、3分しかないから焦って変なことばっかり言ってただろうな。

その時間が終わって、すごく自分勝手に、全然好きになれそうな人がいないなと思った。なんでこんなに適当な服で来てるの?とか、普段アイドルばっかり見ているせいもあるけど、なんだか、私の人生ってこんなものなんだと思った。

いつも色んなことは、想像していたよりもつまらないことばかりだけど、現実を突きつけられて希死念慮が湧き上がった。

フリータイムになって話しかけてくれる方からLINE交換しませんかと言われて、この段階で一体誰が「いやです」って言えんだよと思った。あとでフェードアウトして削除しようと思いながら交換するこんな無益な時間を生み出した自分自身が大嫌いだ。私は判断を間違えてばっかり。

他に話しかけてきた人が別に悪い人じゃないし比較的話がしやすかったので、最終投票で番号を書く。これが1番まずかった。ピンとこないなら無記名で帰ればよかったんだ。

そしてマッチングが成功する(というかしてしまう)。何してんだよ私。何してんの?なんでいつも間違えるの?

だってその人は、その中で一番マシな人であって好きな人じゃない。爆音で流れるJ-Popのラブソングが薄寒く感じてきて、場を盛り上げようと喋り続けるローカルアナウンサーの仕事熱心さにもなんか泣けてきて、この場にいる全員誰もがみんななんか寂しそうでつまんなそうで、大人の一番寂しいところが会場に充満していた。

しかも今月までの食事券をプレゼントされて、半強制的にデートの約束が決まってしまった。だめだ、逃げたい、なんで私こんなこと始めたんだろうと思って走って逃げたくなった。でももう人を一人巻き込んでしまっているわけだし、もうその人を不幸にするのは確定だ。

いつもそう。その場ではっきり自分の意見を言えない。ヒステリックで暴力的な母と二人暮らしし続けてきた日々を思い出すから、今でも相手を傷つけることで相手が凶暴になるのが怖い。

結局その人と飲みに行くことになってしまった。いい人なのになんでこんな感情が動かないの?というか婚活で感情が動かないのなんて普通なのかな?学生時代はちゃんと誰かのこと好きになれてたのにな。

その人はずっと自分の話をしていた。
私に質問しても、すぐに自分の話と、教訓になった。辛いこともいずれ糧になるよね、みたいな当たり前の話をしんみり語られる時間が続いた。

こんなに人と話してつまらないと思ったのは久しぶりだった。笑って相槌を打ちながら、なんでこんないい人なのにいいところを好きになれないのか、高飛車な自分がどんどん嫌になった。

そのとき、有線から、何百回も聴いてきたイントロが流れ出した。
一瞬でそれ以外の音が締め出される。

SEVENTEENの「舞い落ちる花びら(Fallin’ Flower)」。儚くて美しくて大好きな曲。
奇跡的に当たった名古屋ドームで聴いた、大好きな歌。

ちゃんと話を聞かなきゃいけないのに、ドームの思い出で頭はいっぱいになる。もうすぐディノのパートだ、と泣きそうになる。

『刹那に生きてたけど 君と会い そう全てには意味があることを知ったんだ』

そう、ディノを知ったとき、私はまさにこんな気持ちだったな。受験でも就活でも仕事の引継ぎでも、節目節目で毎回自殺未遂して、だめなら死んでしまえばいいと思っていた。失望されたらいなくなればいいと思っていた。

でも全てに真摯なディノというアイドルを見て、完成されたパフォーマンスと美しい生き方を見て、SEVENTEENというアイドルの生き様を見て、自分の生き方の雑さに気付いた。

たくさん私のことを助けてくれたのに、席の遠さに悲しくなったり、アイドルを好きでいても何も手に入るわけじゃないと虚しくなったりしながら、それでも大好きだった。

じわじわと傷口に痛みが広がるみたいに涙が滲んでくる。でも我慢した。だって目の前にいる人はいい人で、ちゃんと結婚するために行動していて、何も悪くない。悪いのは生半可な気持ちで行動した私だ。

この曲の歌詞が好きだ。君のために咲くよじゃなくて、「君へと舞い落ちてくよ」と歌ってくれるSEVENTEENが好きだ。

悲しみのあまり暗く深いところへ落ちてしまった「君」=聴き手・ファンのところまで、「舞い落ちて」いくと言ってくれる底なしの優しさ。

推していても、CDを積んでも、私は推しと結婚はできないけど、ときどき勝手に虚しくなるけど、本当に心が動くのは推しのことだけだから、生きていくには推ししかない。

でもこれからきっと私はもっと孤独になっていくだろう。女友達はライフステージが変われば話が合わなくなる。私の優先度は当然彼氏や旦那や子どもよりも低くなる。
肉親とも親戚とも連絡を絶っている私は、たぶん一人になる。

漠然と幸せになりたいと思っているけど、自分にとっての幸せが分からないからどうしていいかわからない。

今日会った10歳以上離れた人からのLINEは、Twitterで飽きるほど見たおじさんLINEそのもので、こんなの誰が使うんだろって思ってた絵文字が文末でぷよぷよ光ってて、本当に起きること何もかもテンプレートだ。私の人生ってなんでこんなつまんないんだ。私自身がつまんないからだろ。

もう何に焦ってるのかもわからない。
やっぱり、悲しみごと自分を消してしまいたい。

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