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我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか 2/3

前回は情報通信技術の進歩がもたらした「フォロワー」という概念が、現代の社会的価値の可視化ツールになっていること、フォロワーによっていかに拡散されるかという現代の価値である「SNS的価値」が存在することを述べた。

今回は「SNS的価値」に左右される我々の生活が今後どのように変化していくのかを妄想していく。
妄想にあたって社会的進化という概念の導入からはじめる。


社会的進化はどこから来たのか?

「選択圧」という言葉がある。
これは生物の進化において、環境に適する能力を持つ種が生き残ることで、その環境に適した形質が次世代に受け継がれていくことをいう。
例えば、北極のような極寒の環境に生きる「シロクマ」は透明で中空の体毛を獲得している。これにより日光を皮膚表面まで到達させて熱を得るとともに、中空の体毛による保温をすることで熱を吸収しやすく放熱しずらいという形質を獲得している。

進化は基本的に自然選択であるためシロクマの祖先が自らの毛に向かって「白くなれ」と願ったり、ブリーチすることを考えていたわけではない。単に毛が透明っぽい個体が生存戦争を勝ち抜いたのである。

これは人間においても例外ではなく、他の動物に比べて高い知能を獲得することで、自然淘汰を勝ち抜いてきている。
普通に生活していると「進化」を意識することも少ないが、現代社会においても何かが進化に影響を及ぼしているはずである。

私の提案は、その何かこそが「SNS的価値」であり、それによって生まれる進化が「社会的進化」あるという説(妄想)だ。

では、「社会的進化」が何者であるかを定義づける。
これは「SNS的価値」を得るために受け継がれる、または発生する形質だ。
つまり「拡散しやすさ」のための進化の形態を「社会的進化」という。

社会的進化とは何者か?

この進化形態を「社会的進化」としたのには理由がある。
それは、古来より続く進化が受動的な「自然選択」であるのに対して、「社会的進化」は社会の意思にもとづく「能動的選択」であるためだ。
つまり、社会的進化は人間の意思の塊である社会において「SNS的価値」が高まるように様々なものを能動的に進化させていく仕方である。

社会的進化が成り立つようになったのは技術の進化と、SNSの発達による「SNS的価値」の急成長による。

例えば「外見」も技術発展とSNSの発達によって、近年「社会的進化」の仲間入りをしたといえる。
最近ではルッキズムが幅を利かせているが、現実問題として美男美女はモテる。仕方がないがモテるのだ。
よりモテる外見の人は、より子孫を残す確率が高くなる。そのためモテる外見を選択する種が残りやすくなる。

外見を意図的に変更できない野生動物では外見は「自然環境による選択圧」である。
一方、人間社会では美容整形技術の発達により「外見」は必ずしも自然環境による選択圧ではなく、自らの意思によって能動的に変化させられる。
そのため人間社会の中でよりモテる外見を個人の判断で選択できる。

美男美女は「高いSNS的価値」をもつため、SNSが浸透している現代社会では、「SNS的価値」を高めるように外見をかえることへの抵抗感が薄れやすい。
そのため近年美容整形は年々普及しているし、男女関係なく美容に気を使うことが当たり前になる。
その結果、SNS上には「SNS的価値」の高い顔が多く並ぶ。

「SNS的価値」の高い顔は時間とともに徐々に変化する。
それでも、その変化に素早く呼応して、いろいろな人々が「SNS的価値」の高い外見を含む写真や動画を絶え間なくアップロードする。
実存的な形質ではなく、概念的形質が受け継がれて進化していく。概念的形質が受け継がれる点は、「社会的進化」が通常の進化と異なるもう一つの大きな特徴である。

この社会的進化は誰によって行われているのか、その点についてもう少し妄想を深める。

社会的進化はどこへいくのか?

社会的進化が誰によって行われているのか。
現代においては社会的進化のドライバーは人間である。
人間の判断により「SNS的価値」を測り、能動的選択をすることによって社会的進化を推し進めている。

社会的進化は「概念的形質の進化」であるため物理的な子孫は必要ない。
よって、子孫を残す必要のある「自然選択による進化」に比べて非常に早いスピードで行われる。
このスピードは今後もより早くなると考えられる。

世間に溢れかえる情報を、人間の能力ですべて判断するのは困難だ。
そのため、進化のドライバーは人間であるものの、人工知能によって補助されている。たとえば検索やニュースのサジェストなどは、これまでの趣味嗜好を人工知能が学習し、判断しやすいように情報を抽出している。

ただ、状況が大きく変わりつつある。
それは「生成AIの驚異的な進化」だ。
シンギュラリティの足音が聞こえ始めたのだ。

これが意味するところ、それは進化に向けた「価値判断の主体」が生成AIになる可能性があるのではないかということだ。
そこで次回は改めて我々人類がいったい何者だったかを改めて考えたあと、生成AIを伴う社会的進化について妄想していく。

ファンタジーが現実になる時代を生きられることについつい感謝してしまう


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