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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が面白い!

 大学院の教授のおすすめで読み始めたアンディ・ウィアー著『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(小野田和子訳)が面白い。「面白い」だなんて、面白くもない表現だが、本当に面白い。読むのが止まらないのは当然だが、人類の危機という事態に対し深刻過ぎない軽妙さ(翻訳も素晴らしいのだろう)、それでいて思い切りハラハラドキドキすること請け合い。人類の英知を集めた挑戦、ちょっと難しい科学の話(読み飛ばすことも可能)、マジか!と思わず言いたくなる出来事の連続。(あぁ言いたい。言いたいがこれは今後読む人のために、ぐぅっと我慢せねばならない)

人類と食料に関して(メモ)

 私は人と食料生産の関係に関心があり、この物語の本筋には直接関わらない部分だったため、最小限のメモを残すことをお許しいただきたい。プロジェクト・ヘイル・メアリーの全権を持つ女性、ストラットの言葉だ。

「産業革命が起こるまでの5万年間、人類の文明はあるひとつのもの、そのひとつだけにかかわるものだった―――食料よ。過去に存在したどんな文化も、持てる最大の時間、エネルギー、人力、そして資産を食料につぎこんだ。狩猟、採集、農業、牧畜、貯蔵……すべて食料にかんすることだった。
 ローマ帝国ですら例外ではないわ。皇帝のことやローマ軍のこと、各地を征服したことはみんな知っている。でもローマ人がほんとうに発明したのは、農地と食料や水の輸送手段を確保する非常に効率的なシステムだったのよ」(中略)「産業革命は農業を機械化した。そしてそれ以来、わたしたちはほかのことにエネルギーを注げるようになった。でもそれは過去二〇〇年間のことよ。それ以前は、ほとんどの人が人生の大半をみずからの手で食料をつくる作業に費やしていた」

(下巻,P245,太文字は本文では傍点)

 自分で自分の食料を作ることに人生の大半をささげなくてよい時代(人類史の0.4%の幸運な時代!)と国に生まれて、大半どころか9割9分、それ以外のことに時間とエネルギーを割いて生きてこられた幸せな私が、人生の折り返しも過ぎたいま、自分で食料を作ってみたいと思い始めているのは単なる気の迷いだろうか…。まあ、これについてはまだ急ぐ必要はない。じっくり考えるとしよう。

ピンチの時に人間を救うもの

 読後考えたのだが、絶望的な状況の中、ヒーロー然としたタイプでない主人公を支え続けたのは、彼に備えられた(タレンティッドな)知的好奇心と底抜けのユーモア、そして弱さや人間らしさを否定しない、自分への寛容さだったと思う。そういったものは、与えられた賜物なのか、それとも自分の努力で身につけられるものなのだろうか。その両方が必要な気がしている。

 SFはどちらかというと得意でなかったが、こんなに面白いSFがあったとは。同じ著者による『火星の人』(「オデッセイ」の名で映画化もされている)も読まねば。

 


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