床上五センチ書店

ほんまる神保町で棚主をしている、こやまです。 42歳男性。

床上五センチ書店

ほんまる神保町で棚主をしている、こやまです。 42歳男性。

最近の記事

ほんまる神保町で、棚主へ11

私は高校生の頃、えぐいほどモテた。 唐突に嘘をつくな、おまえのようなつまらんもんがモテるはずがないだろう、この虚言癖の大馬鹿者め、ヘドロから生まれしヘドロの権化め、悪霊退散! と言われるかもしれないが、本当のことだ。 というのも私の通っていた高校は元は女子高だったものが共学になったものであり、女子生徒の比率が高かった。たぶん、八対二くらいだったのではないか。もちろん八のほうが女子生徒だ。 まだ共学三年目で、私が入学したときの三年生男子は一桁しかいなかったと思う。 三年生とはま

    • 苦言を呈す。

      私はいつだって書店の味方でありたい。 書店がどんなに馬鹿げたイベントを仕掛けようが、自己満足としか言えないようなポップを作ろうが、「それいいじゃん!」と言いたい。 なんにせよバズれば、普段書店に足を運ばない人も書店に行くかもしれない。 一度行けば、なにか暇なときに「書店に行く」という選択肢が生まれるはずだ。たぶん。 だが、どういうわけか書店はSNSを軽視しているように思える。 前にも書いたが、八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店が新規オープンしたとき、公式Twitter(

      • ほんまる神保町で、棚主へ⑩

        6月15日(土)。 前日6月14日(金)にオープンしたばかりの、八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店へ行くことにした。 八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店。 スーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人みたいな名称だ。 どのような店舗なのか、見せてもらおうじゃないか。 東京駅八重洲口から出てすぐ、とのこと。これなら方向音痴で有名な口口ノア・ゾ口でもたどり着けるだろう。 しかし十分後、私はレストラン街をさまよっていた。 間違いない! スタンド攻撃を受けているッ!! スーツ

        • ほんまる神保町で、棚主へ⑨

          私は自分にとって都合の悪いことが起こると「間違いない! スタンド攻撃を受けているッ!!」と言って誤魔化すようにしている。 「スタンド」とはジョジョの奇妙な冒険に出てくる特殊能力の総称のようなものだ。私はそこまで熱心なジョジョの読者ではないのだが、このセリフだけは都合よく使う。 これは自分の心を守るために必要なことなのだ。 いま起こっている不都合なことはすべて能力者のせいだし、その能力者に攻撃されるくらい、自分は重要な人物なのだと思い込むことができる。 とても便利なのでみな

        ほんまる神保町で、棚主へ11

          ほんまる神保町で、棚主へ⑧

          2024年6月8日(土)。 またほんまる神保町へ行ってきた。 まずこの棚を見ていただきたい。 前回訪れたとき、まだ幼い顔つきだった我が棚が、すっかり大人の顔になっている。 「まんま」「ぶーぶ」「ちっこでる」くらいしか語彙がなかった棚が、「書籍の販売こそが我が使命なり」と胸を張るようになった。 すごい……! 戦いの中で成長してる……!! しかしここからどうするか、が問題だ。 私には美的感覚というものが欠けている。この棚になにか装飾などを加えてみたいという思いはあるが、具体

          ほんまる神保町で、棚主へ⑧

          ほんまる神保町で、棚主へ⑦

          私はいまの会社へはドライバーとして入社した。簡単に言えば宅配便だ。 しかし同僚社員に嫌がらせを受け、「馬鹿らしくなったので辞める」と上司に報告した結果、倉庫内での軽作業へと異動することになった。 客観的には閑職ではあるが、これが性に合っていた。 正社員とは思えないような雑務を一手に引き受け、派遣アルバイトのFさん(五十代男性)と二人で、こつこつと地味な作業をするだけ。 雑務オブ雑務であるうえに、私は社員朝礼などに出席しない。 ドライバーをやっていた頃のことを知らない若手社員

          ほんまる神保町で、棚主へ⑦

          ほんまる神保町で、棚主へ⑥

          2024年6月1日(土曜日)。 また来てしまった。ほんまる神保町。 当初は様子を見に行くのは月に一回くらいだろう、と思っていたのだが、なんやかんやで毎週足を運んでいる。 棚主の中にはかなり遠くに住んでいる人もいるらしく、行こうと思えばわりと気楽に行ける距離に住む私は恵まれているのだろう。 右端に面陳されているのは「カラオケ行こ!(和山やま)」という漫画だ。 続編の「ファミレス行こ。」が、私の住む街である蒲田を舞台にしていることからなんとなく親近感を持ち、読んでみたらおも

          ほんまる神保町で、棚主へ⑥

          ほんまる神保町で、棚主へ⑤

          私は静岡県の山奥に生を受けた。 富士山の麓、というか富士山の一部と呼んでいいくらい富士山に近く、山頂に建っている気象庁の観測ドーム(現在は撤去済)が肉眼で見えるような場所で育った。 中学校までは良かった。問題は高校だ。そんな山奥から自力で通える高校はそう多くない。 兄はスポーツ推薦だか特待生だかで高校を選んだ人で、そんな推薦だか特待だかを受けるくらいなので自転車での行動範囲がばか広い。 それに比べると、私の行動範囲のなんと狭いことか。兄と同じ高校を選べば、通学途中で遭難する

          ほんまる神保町で、棚主へ⑤

          ほんまる神保町で、棚主へ④

          マクドナルドでハンバーガーを食べていた。そろそろ帰ろうかな、というところで隣の席にいた子どもが泣き始めた。二歳か三歳くらいの子。 いま立ち上がったら、子どもがうるさいから帰ろうとしていると思われる。少し様子見だ。すぐ泣き止むだろう。 五分経過。泣き止まない。 いま立ち上がったら、子どもの泣き声にうんざりして帰ろうとしていると思われる。 なにを泣いているのかわからない。しかし視線を向けようものなら、その子を一生懸命あやしているお母さんへプレッシャーを与えかねない。 私は中年

          ほんまる神保町で、棚主へ④

          ほんまる神保町で、棚主へ③

          前回のあらすじ いきなり怖い絵を描くAIと、さよなら感が強すぎるドビュッシー。 5月25日(土)。一週間ぶりの神保町。 「変わんねぇな、この街も」 などと言いながらほんまる神保町へ。 さて、唐突だが私が大谷翔平に勝っているところが一つある。それは、身長。 大谷翔平は193センチ。私は170センチ。 負けとるやんけ。 だが、どうだろう。ちょっと考えてみてほしい。「大きいほうが勝ち」と思い込んでいるだけではないだろうか。ギネスブックに載っている世界一背の高い男が唯一の勝ちで

          ほんまる神保町で、棚主へ③

          ほんまる神保町で、棚主へ②

          さて、前回代本板のデザインで大苦戦していることはお伝えしました。 最後には開き直って、適当に撮った猫の写真を送付してやるぜ、と意気込んだのが前回までのお話。 さてどうなったか。 ダメでした。そもそも送付ができない。拡張子が「jpg」か「png」だけしか対応していないとのこと。なのでiPhoneで撮った写真じゃダメなんですと。 シェア型書店、ハードルが高い。正直なところ、代本板についてはもはや見るのも嫌。 だが、嫌だ嫌だと言っていても事態は前に進まない。 いいよ、わかった

          ほんまる神保町で、棚主へ②

          ほんまる神保町で、棚主へ①

          やらなければ後悔する、と思ったので棚主になろうと決意したのが五月十五日のこと。 申請から一週間以内に連絡、とのことだったが、約五時間後には棚の位置が決定。はやい。27章07節。一階の、一番下の棚。五つ出した希望の五番目。 指定口座に入金すると、翌日の九時過ぎにはマイページの案内が。 ここから持ち前の無能ぶりを発揮。マイページでは「棚主名(アカウント名)」というものを決めなければならない。あえて「棚主名(アカウント名)」などと書いてあるのだから、これは「棚名」とは別のもの

          ほんまる神保町で、棚主へ①