見出し画像

ほんまる神保町で、棚主へ⑩

6月15日(土)。
前日6月14日(金)にオープンしたばかりの、八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店へ行くことにした。
八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店。
スーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人みたいな名称だ。

どのような店舗なのか、見せてもらおうじゃないか。
東京駅八重洲口から出てすぐ、とのこと。これなら方向音痴で有名な口口ノアくちくちのあゾ口ぞくちでもたどり着けるだろう。
しかし十分後、私はレストラン街をさまよっていた。

間違いない! スタンド攻撃を受けているッ!!

スーツケースをがらがら引いている外国人観光客が勝手知ったる我が家のように歩いているというのに、なぜ都民の私が迷子になるのだ。

そんなはずはない。読書家と書店は引き寄せあうものだ。魂の導くほうへ歩いていけば、必ずたどり着くはず。
夜と月が呼び合うようにきみには僕なんだ(うろ覚え)とback numberも歌っているではないか。

どこだい、八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店。出ておいで。出てこないと月に代わっておしおきするぞ。

案内板を見る、ということはしない。それは魂の敗北なのだ。
私はそうやって傷口を広げていく。

初めて有楽町の三省堂へ行こうとしたときもそうだった。あのときは有楽町駅を出て歩き回った挙句に東京駅に着いた。

能力者はいったいなにを恐れて私から書店を遠ざけようとしているのか。私の書店に対する評価など「ほんがいっぱいならんでてたのしい」くらいしかないというのに。

ふいに私の中の、荒ぶるなにかが叫び出す。
出せ、ここから出せ。早くしないととんでもないことになるぞ、と。
思わず舌打ちをする。
なぜ尿意おまえは急にやってくるのだ。
ストレスだろうか。若い頃はよくじんましんを出したものだが、最近ではそれが尿意に変わった気がする。それが進化なのか退化なのかはわからない。

トイレはすぐに見つかった。
夜と月が呼び合うように、きみにはトイレなんだ。
とか歌われたら手が出るかもしれない。

トイレを済ませて、また迷子に戻る。
しかし本当にどこだ。少なくとも「改札出てすぐ」ではないだろう。

「八重洲口改札外すぐ」とたしかに書いてある。

東京駅の八重洲側には八重洲南口、八重洲中央南口、八重洲中央口、八重洲北口、八重洲地下中央口がある。
これだけあるのに「八重洲口改札外すぐ」とだけ書くのはなんなのだろう。ハンター試験のつもりだろうか。

私はその優れた洞察力から、八重洲地下中央口が正解であると推測していた。誰かのツイートで「地下街にオープンしてた」とあったのを読んだというのもある。

誤情報をつかまされていたのか? たどり着けないかもしれない。そう弱気になったとき、私の心に住みついた泥棒犬メミ(前回参照)が叫ぶ。

「この船の航海士は誰!!?」

少なくともおまえじゃない。

くそ、こんなところで私は朽ちるのか。そう諦めかけたところで唐突に八重洲ブックセンターグランスタ八重洲店の目の前に出た。
しかしそこに喜びはなかった。
物々しい。

店のすぐ外にはマスコミらしき人たち。カメラを構えて店内を撮っているようだ。レジ横にもカメラマン。この状況で、レジへ行くのはきつい。私は自他共に認める引っ込みTHE ANNアンなのだ。

五千円以上買い物をするとトートバッグを貰えるというので貰うつもりで来たのだが、これではレジへ行けぬ。

というわけで、あっさりと引きあげた。
やっぱりほんまるが一番!

面陳を「その可能性はすでに考えた(井上真偽)」にしたよ!

追伸 いま見たら、少し改善されていた。

みなさんご存知、Gong chaの隣。

Gong chaがどこだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?