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梅切らぬバカ


今回見た作品

  • 「梅切らぬバカ」

  • 監督:和島香太郎

  • 脚本:和島香太郎

  • 主演:加賀まりこ

あらすじは省略します
登場人物は
自閉症の息子(50歳:山田忠男:忠さん)と同居する母親(山田珠子)、隣に越してきた3人家族(里村茂、英子、草太)、地域コミュニティの人々です。

自閉症の子と暮らす母親、その周囲の人々との関係性を描いています。


考察①当事者意識の有無で分ける

今回はこの物語を忠さん(塚地)に対する当事者意識がある人、ない人とに分けた構図で考察してみる

物語の前半では以下のような構図

①当事者意識がある人
山田珠子(加賀まりこ)、グループホームの職員、里村草太
②当事者意識が無い人
里村茂、里村英子、馬の牧場?の人、自治会長など多数

映画の鑑賞者は見方によるが、自閉症の人との関わりが普段からある人は①、あまりない人は②に属するかもしれませんね。

②の人々の忠さんに対する反応
忠さんに対して、以下の様な排他的な態度をとっている

  • 勝手に家に入ってきた忠さんを暴力的に追い出す茂

  • 忠さんを馬に近づけたくない牧場の職員

  • 忠さんが入ったグループホームを街から追い出そうとする住民

このような排他的な態度をとるのは
忠さんや自閉症の方々に対する無知が根底にあり
→そこから派生して、恐怖感が生まれ
→自分たちに害をもたらすのではないかと考える
→さらに関わりを避け、忠さんのことがより分からなくなる
→恐怖心の増強
→→
という負のスパイラルに陥り、より排他的になっていく

反面、①の人々は忠さんがどんな人かを良く知っている

普段から忠さんと一緒に生活したり、関わっているので
忠さんはやさしい性格で、他人に危害を加えるような人間ではないことを良く理解している

②考察:当事者意識を持つにはどうすればよいか

この映画では、草太と忠さんが夜に牧場に侵入して馬と勝手に遊んでしまった事件をきっかけに、茂の忠さんに対する考え方が変わりました。

引っ越したばかりで友達が0人だった息子
そんな息子と遊んでくれた忠さん
忠さんが自治会長から犯罪者扱いされていた場面では、息子を犯罪者扱いされたように感じ、むきになる茂

この出来事を通じて、忠さんのことを他人事ではなく、自分事ととらえるようになったと思われる。

当事者意識を持つことで、排他的ではなくなり、より積極的に関わる中で、当事者を理解していくことができる

ただ、普通に生活していても、映画のようなきっかけで当事者意識を持つことはあまり無いだろう。

では、どうすればよいのだろうか? 

正直、自分は答えを持っていません。
偶然、当事者と関わった時に、相手のことを知ろうとする姿勢が大事なのではないかと思います。知ることで自分が少し変わるだけでも、大きな一歩なのだと思います。

例を挙げると、
私の外来には難聴で通院している方がいます。筆談でコミュニケーションはとれるのですが、筆談だとNonverbalな意図が伝わりにくかったり、事務的な内容になりがちだと気付きました。
実は、大学で手話の授業があったのですが、当時は殆ど興味が持てず、知識は殆ど残っていませんでした。
しかし、実際に当事者と関わることで、手話でコミュニケーションをとってみたいという気持ちが生じ、手話を少し勉強しました。
ある日の外来で、手話で挨拶すると、患者さんはとても笑顔になり、筆談でも、いつもより楽しく会話をすることができました。

とても些細な出来事ですが、当事者意識を持つことで、自分が変わった一例です。

考察③:インクルージョン(包摂)とは?

当事者意識を持つ人が増えるために社会構造的にどのような解決策があるか?
一つ、ソーシャルインクルージョンという考え方があります

NECのサイトの説明が分かりやすかったので引用します。図をみるとより理解できると思います。

エクスクルージョン(排除):
マジョリティと異なる属性を枠組みから排除する
セグリゲーション(分離):
マジョリティと異なる属性を集団から分離して、区別する
インテグレーション(統合):
マジョリティの集団の中に、マイノリティの枠組みを組み込み同一化
インクルージョン(包摂):
個々の異なる属性が受け入れられ、互いに尊重されている状態

https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20220722_inclusion.html

社会全体がインクルーシブな意識になれば、自然と当事者意識を持つ機会が増えます。
機会が増えると当事者のことを知ろうとする、お互いに助け合おうとする意識が生まれ、お互いに住みやすい社会が実現できるかもしれませんね。

レビューなどでは否定的な意見もある映画でしたが、私は結構好きでした。特に加賀まりこさんの演技がとても印象的でした。あと、塚地さんが出演されているのにも驚きました。

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