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【シリーズ第27回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓

 退院後は、ほぼ寝たきり状態だったけれど、

 「骨に異常はないから大丈夫!」

 と追い返されただけのことはある。

 1週間後に近所の病院へ行く頃には、痛みはあるけれど、日常生活が営めるレベルにまで回復した。

 アパートの部屋は、彼が設置してくれたエアコンのおかげで、快適になった。
 
 言うことなし!


 復活だーーーーっ!


 ・・・と喜んでいられるのは、束の間だった。
 


 病院から請求書が届いた。


 封を開けると、ゼロの数が妙に多い。

 救急車代 1500ドル・・・。

 ドクター代、2000ドル・・・。

 レントゲン代 1000ドル・・・。

 詳細は忘れたけれど、こんな感じ。

 パトカーと消防車は国の負担だけれど、救急車はプライベート(病院)なので、きっちり請求される。

 しかも、これらの請求書は一度に届かない。

 担当が違うのだろう。

 嫌がらせのように、1枚ずつ、別の日に届く。

 あっと言う間に5千ドルを超えた。

 ドクター代、と記載されているので、数分は話したのかもしれないけれど、私にはドクターに会った記憶すらない。 

 さらに、1週間後に行った病院で指定された、フィジカルセラピー代も追加される予定だ。

 貧乏留学生で、おおっぴらに仕事ができない私にとって、5千ドルはイタイ。

 払えない、というよりも、検査代や、会った記憶もないドクターに対して数千ドルという請求額は、理解できる範囲を超えている。

 しかも、あとどれだけ請求されるのか見当もつかない。


 踏み倒す?

 値切る?


 んー・・・相手は病院だし、英語だし、そんな実力はない。

 自動車保険にはもちろん加入していたけれど、学生の私が入っていたのは、安い保険なので、補償額も少ない。

 加害者が見つかれば、支払ってもらえる可能性はあるけれど、アジア人留学生のために、シカゴ警察が捜査をするとは思えない。 

 返済方法を考えたところで、


 「無理!」


 という回答しか浮かばない。



 しかし、この問題も、彼が解決してくれた。

 彼のお友達のニノが、弁護士を紹介してくれたのだ。

 ニノは、私がはじめて彼に会いに行ったときに、彼とカウンターで談笑していた相手だ。

 ライトスキンのニノは、その頃、よくキングストン・マインズに遊びに来ていた。
 ⇩

 ニノが紹介してくれた弁護士のオフィスは、シカゴのダウンタウンのど真ん中にあった。

 窓からはグラントパークや、ミシガン湖が見渡せた。


 ・・・請求書も怖いけど、弁護士代も怖い・・・。


 部屋に入って来た白人の弁護士先生は、ニコリともせず、とっとと仕事に取りかかる。

 言われるがままに、保険の証書を見せると、

 「なーんや、これだけの補償があるなら大丈夫やん!」

 と言った。

 

 ・・・・・そうなんですか???


 後に知ったことだけれど、アメリカの病院は、値切られることを承知で、法外な値段を請求してくるらしい。

 メディケアのような、国の保険に加入している場合、これらの請求額は減額される可能性がある。

 その不足分は、プライベートの、高額の保険加入者から頂くシステムだ。

 事故や病気の状態にもよるけれど、緊急で運ばれた場合の請求額は、ゼロから2万ドル(200万円)まで、加入する保険によって変わってくる。

 じゃ、安い保険の方が得やーん!と思うけれど、アメリカは保険によって、受診できる病院が決められている。

 貧乏人は、最新の医療、質の良い手当は受けられない。

 医療は完璧にビジネスなのだ。
 
 私の場合、各項目の補償額は安いけれど、全項目の最高補償額を、保険会社に支払わせることができれば、今回の請求金額を十分に賄える、ということだった。

 弁護士の腕の見せどころだ! 

 「届いた請求書はすべて、そのまま私に送ってください。あなたは絶対に払わないでください」

 弁護士から私への、唯一の要求だった。

 弁護士を訪ねた後も、請求書は遠慮なく届いたので、総額百万円近くなっていたと思う。

 「大丈夫!」

 と弁護士は言うけれど、請求書が来るたびにドキドキした。

 保険会社からお金が取れず、医療費も弁護士費用も自腹を切ることになったら、どうなるんだ???


 といっても、これは無駄な心配だった。

 事故から半年後、弁護士はすべての補償項目の、最高額を保険会社に支払わせることに成功した。

 病院に支払った後の、残りの金額の33.3%が弁護料になる。

 そして弁護料を差し引いた残金、3千ドルのチェックが私に送られてきた。


 わーーーーいっ🎉


 借金まみれになるかと思いきや、3千ドルのチェックが届いたー🎵

  

 とはいえ、冷静になって考えてみると、弁護士は、弁護料を手に入れるために、保険会社から請求額以上、取れる限りの補償額を引き出したということだ。

 私も3千ドルは得たけれど、そのことにより、今後の保険料はダダ上がりする。


 ふーーーむ・・・


 病院、保険会社、弁護士、いずれも損をしないシステムになっていることだけは間違いない。

 今回の事故で学んだこと。

 末端の人間が得をすることはない!

 アメリカで怪我や病気はできない!

 そして、

 彼は良い人だ💛 

良い人でよかったー!

 

最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!