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4/24 【動揺する米市場、円安について、日本電産決算公表】

●Don't fight the Fed.


4月21日、FRBパウエル議長はIMF主催の討論会へECBラガルド総裁と共に参加した。インフレ率がFRBの目標である2%の約3倍に達していることから、「もう少し迅速に動くことが適切だ」と発言し、「50bpの利上げは、5月会合で検討されるだろう」と述べた。

尚、上記パウエル議長の発言に先立ち、最タカ派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁は、18日、複数回の50bp利上げで年内に政策金利を3.5%前後に早急に引き上げる必要があると述べ、75bpの利上げの可能性も排除しない考えを示していた。

株式市場では改めてFRBの金融引き締め姿勢を警戒し、従来織り込んでいた50bpどころか75bp利上げの見方も強まった。

4月22日には、クリーブランド連銀のメスター総裁が75bp利上げには反対とする発言を行ったものの、21日・22日の米主要3指数は下落。週明け25日以降は、日本市場への影響も懸念される事態だ。

NASDAQ100は、心理的な下値抵抗線である13,000目前まで下落しており、13,000を下抜けするような場合は、本格的な下落トレンド入りとなるだろう。今改めて、使い古された格言ではあるが、「Don't fight the Fed.」を思い起こす展開である。

(NASDAQ100日足チャート、出所:Trading View)

●市場は金利上昇をどの水準まで織り込んだのか


パウエル議長やFOMCメンバーの相次ぐ金融引締め発言により、市場参加者の政策金利に対する予測は足元数カ月のうちに大きく変化している。

将来の米国の金融政策を市場参加者がどのように予想しているか、コンセンサスを確認する際に、最も参考となる情報に金利先物市場のデータがある。

金利先物市場は金利を専門に扱う市場で、金利先物市場が将来の米国の政策金利をどのように予想しているか把握することができれば、市場がどの程度金融政策の変更を織り込んでいるかを知ることができ、値動の予想に生かすことができる。

まず次回5月4日におけるFFレートコンセンサスは、0.75-1.00でこの1か月間大きく動きなし。一方で、6月15日におけるコンセンサスはこの1カ月で1.25-1.50から1.50-1.75へと上昇した。

市場関係者は、FRBは2回連続で50bpを実施するとの予想だ。近年、FRBが50bpの利上げを2回連続で行ったことは無く、まさに異例の事態。

(筆者作成)
(筆者作成)

更に、年末におけるFFレートのコンセンサスは、下図の通り2.75-3.00となっている。FRBメンバーの多くは中立金利(2.50)が妥当と考えているため、コンセンサスはそれを上回る水準で、やや過剰に金利上昇を織り込んでいると見る。いずれにせよ、日本はGW中であるが、次回FOMCは最大限注視する必要がある。

(FFレートコンセンサス推移、出所:Fed Watch)

●日本の円安進行について


日本の円安に関する報道が増えてきた。オールドメディアの中には、未だに金融緩和姿勢を維持する日銀に対して批判をするものが散見されるが、実に盗人猛々しい。確かに円安が進行していることは事実だ。

世界的なコストプッシュ型インフレの進行に際し、日本と中国を除く世界各国の中央銀行は金融緩和を見直し、利上げやQTによる金融引締めへと転換している。では、なぜ日本は金融緩和政策を転換できないのか。

一番大きな原因は、コアコアCPIが未だに低空飛行を続けている点だ。消費者需要の増減にかかわらず、外的要因で変動の激しい生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数をコアコアCPIという。

4月22日公表の3月コアコアCPIは下図の通り、前年同月比▲0.7%と非常に弱々しい結果で、一般的な目安とされる2%には遠く及ばない。

つまり、未だに日本はバブル崩壊後のデフレマインドから抜け出せていないのだ。

(日CPI推移、出所:総務省)

コアコアCPIは、日本のデフレ継続を示しており、このような状況下で金融緩和を終了する場合、日本経済は更に悪化するだろう。

日本人のこの異常なデフレマインド、過剰貯蓄を生み出した張本人は、デフレ下において増税を繰り返した緊縮財政派の政治家及び財務省、また国債を「国民の借金」と誤った報道を繰り返したオールドメディアに他ならない。益々加熱する円安報道ではあるが、金融緩和を維持せざるを得ない状況や背景を忘れてはならない。

●日本電産決算発表


日本電産は21日、22年3月期決算公表を行った。同日、永守重信会長が再びCEOを兼務すると発表した。21年6月からCEOを務めていた関社長はCOOへ降格。該社の3カ月毎の決算推移は下図の通りで、トップラインは伸びているものの、利益率が悪化している。永守CEOは、CEO復帰の背景を①業績及び②株価の低迷と述べていた。氏曰く、「株価が10,000円でとどまっていれば、(再登板の)出番は無かった」。

業績については、精密小型モーター事業でQonQの減益が大きい。半導体不足の影響、中国のロックダウン、開発費の増加が主要因とのことであり、外部環境による影響が大きい中、CEOの再建手腕には注目だ。

(日本電産決算推移、出所:かぶたん)
(日本電産QonQ決算推移、出所:かぶたん)

また株価については、2021年2月16日に上場来最高値15,175円を付けた後、2021年末まで11,000円でのボックス圏で推移。年明け以降は、金利上昇の影響を大きく受け、下落トレンド真っ只中。永守CEOは現在でも該社株式を8.30%保有する株主であり、高値からほぼ半値になった株価に我慢できなかったのだろう。

但し、該社のPERは4月22日終値ベースでも31.5倍と高水準で、米利上げに伴うグロース株への猛烈な逆風に抗うことが出来るのか、行方を見守りたい。

(日本電産 株価日足チャート、出所:Trading View)
(日本電産株主構成、出所:かぶたん)

●4/25(月)~29日(金)主な予定
<アメリカ>
・26日(火):3月耐久財受注、3月新築住宅販売件数
・28日(木):1-3月期GDP
・29日(金):個人消費支出
<日本>
・26日(火):3月失業率
・28日(木):日銀政策決定会合
<欧州>
・25日(月):4月Ifo景気感指数(ドイツ)
<中国>
・29日(金):4月製造業PMI


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