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【技術解説】衛星「ひまわり」を活用して宇宙から地表面温度を高頻度・高精度で予測 ~農業・都市計画の課題解決に貢献する新たなプロダクト~



天地人は昨年度、NEDO SBIR推進プログラム(注1) の研究開発テーマ「静止衛星ひまわりのデータを用いた社会課題解決に貢献する新たなサービス開発」に採択されました。
 
今回はその成果として、開発に成功した「深層学習による高精度・高頻度の地表面温度プロダクト」についてご紹介します。

注1) NEDO SBIR推進プログラムとは
本事業は、活性化法(2021年4月1日改正法施行)の規定により定められた
指定補助金等の交付等に関する指針(2021年6月18日閣議決定)に基づき、多様化する社会課題の解決に貢献する、研究開発型スタートアップ等の研究開発の促進及び、成果の円滑な社会実装を目的として、内閣府が司令塔となって、省庁横断的に実施する「日本版SBIR制度」の一翼を担うものです。


天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。


本記事では、以下の内容について解説します。

  • 本地表面温度プロダクトの注目点

  • 使用された技術

  • 今後、本プロダクトの活用が期待される分野


天地人の地表面温度プロダクト、ここがすごい!


では、天地人の地表面温度プロダクトは、従来と比べてどのような点が優れているのか見ていきます。

従来の地表面温度の観測は、上空400〜600kmを周回する「低軌道衛星」によりされてきました。低軌道衛星は地表近くを回っているため、解像度の高いデータを得られます。

一方で、同じ場所を観測できるのが2日に1回程度と観測頻度が少なく、
雲により地表面が隠れている場所のデータを取得できないというデメリットがあります。

そのため低軌道衛星による観測では、地表面温度の1日の時間変化や
雲の多い、梅雨・台風時のデータを得ることができませんでした。


そこで天地人は、静止軌道衛星である「ひまわり」の

1. 2.5分に1回の観測頻度
2. 地表面温度プロダクトに用いられる、熱赤外線バンドを観測できる

という2つの特徴を利用して、
2.5分間隔の極めて高頻度な地表面温度プロダクトの開発に成功しました。


しかし、静止軌道衛星は上空3万6000kmを周回しているため、「解像度」という点でみると、従来の低軌道衛星には劣ってしまいます。

そのデメリットを補うために、天地人は従来と遜色のない解像度での予測を可能にする、独自の深層学習モデルを新たに開発しました。

このモデルを用いることで100mオーダーの地表面温度データを得られることが見込まれます。従来は1000mオーダーであった解像度を10倍も向上させられるのです。

さらに同じモデルを使うことで、雲により地表面が隠れている部分の温度推定も可能にしました。


このように、静止軌道衛星「ひまわり」のデータと独自開発した学習モデルを用いることで、従来の観測手法ではなしえなかった
高頻度・高精度かつ雲を除去した地表面温度プロダクトを開発できました。

天地人が開発した地表面温度プロダクトによる予測画像


どのような技術・手法か?


この章では、「どのようにして高頻度・高精度の地表面温度プロダクトの開発を可能にしたのか」をエンジニアの佐々木に解説してもらいました。

なぜ、2.5分間隔で予測ができるのか

今回開発に成功した地表面温度プロダクトの ①高頻度、②高精度、③雲の除去の3つを可能にした技術・手法を教えてください。

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