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セミファイナル

セミファイナルの時期がやってきました。

セミファイナル、といっても準決勝semifinalのことではありません。道端で死んだように動かない蝉に近づくと、ジジジジジ!と突如暴れだすアレです。びっくりするんですよね、セミファイナル。
さて、この「セミファイナル」。実によくできた表現だなあと、耳にする度に感動します。もうすぐ最期を迎えるセミを表したこの言葉。語感の良さはもちろん、きちんと意味も伴っているんですよね。おまけにシャレまで効いている。「セミファイナル」と「蝉のファイナル(=最期)」をかけた方はどなたでしょうか。あなたのセンスに脱帽です。

空蝉、という言葉があります。古来、儚さや空しさの例えとして使われていたそうです。蝉は夏を越えられません。その命の短さーそこに儚さを覚えたのでしょう。
ところが、「セミファイナル」ときたら儚さのかけらもありません。それどころか勢いすら感じます。決勝を目指して全力で戦う選手に送られる拍手と歓声が聞こえてきそうです。
いや、セミファイナルが示すものはこれなのかもしれません。蝉の最期というと儚さや終わる夏の寂しさを覚えますが、彼らはこの夏を精一杯生ききりました。彼らは夏の間元気いっぱい鳴きました。賛辞の拍手を送ろうではありませんか。彼らの短い命は、儚いだけではないはずです。

ジジジジジ!と突然暴れる道端の蝉。彼らの近くを通るときは、自然と忍び足になってしまいます。それでも暴れだすからもうどうしようもない。正直、心臓に悪い。
でも、最後の最後に力を振り絞っているんですよね、ジジジジジジ!って。セミファイナルこわい、なんて思ってしまってごめんなさい。
…と言ったところでびっくりすることに変わりはないのですが。ただこれからは、びっくりした後に彼らはどんな夏を過ごしたのだろうか、とそっと想いを馳せてみることにします。

日を追うごとに蝉の声が静かになってきました。もうすぐ夏が終わります。

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