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思い出は数センチの距離感

教室で一緒に笑った思い出は同じなのに、私が誘ってももう会えない人がいる。

教室で一緒に笑った思い出は同じなのに、明日誘えば直ぐに会える人がいる。

当たり前で奇妙だ。

思い出の中じゃ、同じ距離に居たのにね。

あの時触れてた距離感では、もう触れられないんだね。

あの時離した手は、もう掴めないんだね。 

思い出の中じゃ握ったまんまだったから、忘れそうになるよ。

抱き締めていた記憶があるから、何故だか抱き締められるような気がしていたよ。

突き放された記憶があるのに、何故だか受け入れて貰える気でいたよ。

今連絡しても君には会えないのだろうな。

今の私では、君には会えないのだろうな。

思い出の中で愛し合った互いが、「どうでもいい人」に成り下がったら、どうして会えなくなるのだろうか。

思い出の中で「どうでもよかった人」とは、今でも呼べば何時でも会えてしまうのに。

特別だなんて呪いをかけなければ良かったのか。

そうすれば思い出の中の君は、今も私の隣で平然と笑ったりしてくれたのだろうか。

そう願うのは失ったからなのだね。

もう君は思い出にしか居ないのだね。

思い出の中の私達は、数センチの距離で笑い合ったまま、

時計の針は動いている。

今笑いあってる特別な誰かも、何時か私の都合のいい思い出になるのだろうか。

もう会えない君になるのだろうか。

この数センチの距離感を、忘れては思い出してゆくのだろうか。


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