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「プレイヤー自身が手を動かすゲーム」が好きという話と、最近遊んで心に残った「TUNIC」のこと

Twitterで書いたまんまなんですが、昔から「現実の自分が手や体を動かす」ゲームが自分的にツボだなと気付いたという話です(ダンスダンスレボリューションとかそういう意味ではない)。

自分が体を動かす瞬間があるゲームが好き

なんで急にそんなことを言い出したかというと、たまたま同時期に見ていた「The Witness」と「TUNIC」の配信で(こいついつもThe Witnessの話してんな)立て続けに、配信者が「これダメだ、ちょっとメモ取ってくる!」みたいなことを言って立ち上がるシーンに遭遇したんですよね。

で、それを見て「あーいいなあ」などと後方彼氏面しつつ、そういえば自分も遊んでいてそんな瞬間があったなと思い、考えているうちにどうやら「現実の自分が手や体を動かす瞬間があるゲーム」が好きなんだなと思い当たったという次第です。

Tne Witness(Steam / Epic / PS / Xbox / iOS / Android
TUNIC(Steam / Xbox

例えばパッと思い浮かぶところだと、ダンジョンRPGのマッピングとか、パズルや謎解きゲームの手書きメモ、それから位置情報ゲームや代替現実ゲーム、あとファミコン時代のパスワードコンティニューなんかも広い意味ではそうなのかも。タイトル別で言ったら、桃鉄のために日本地図を引っ張り出してくるとか、太陽光センサーで遊ぶボクらの太陽、DS本体を使った謎解きが楽しかったアナザーコード、ドラクエ9の宝の地図、メジャーどころだったらポケモンの交換、などなど――。自分の中で心に残っているゲームって、何かしらこういう「自分が体を動かした」経験があるやつが多いような気がするんですよね。

自分がThe Witness遊んでたときの手書きメモで唯一残ってたやつ(もうちょいマシなのは残してなかったのか)

まあリアルで自分が苦労したんだからそりゃ思い出深いのは当たり前なんですけど、これいわゆる「第四の壁の破壊」の亜種だと思うんですよ。

画面の中のキャラクターではなく、「自分自身」がゲームにインタラクトしているというか、ゲームって所詮は画面の中の出来事でしかないのに、それが現実の自分を突き動かしていることに感動を覚えるというか。そんな、ゲームの世界とこっちの世界が一瞬つながるような感覚が胸に来るのかなとか思ったりしました。伝わってるかなこれ、怪文書になってませんか。

「説明書」を介して「ゲームの中と外」を行き来するゲーム「TUNIC」

ついでに、最近遊んで大変面白かった「TUNIC」の話もします。ネタバレというほどでもないんですけど、TUNICもわりと変わった仕掛けがあるゲームなので、例によって一切情報を入れずに遊びたい人はここでブラウザバック推奨。どんなゲームか知りたい人は以下のトレーラーと、のすさん(@nosunosu)がねとらぼに書いてくれたネタバレなし記事をどうぞ。

で、TUNICですよ。このゲーム、あちこちで既に紹介されている通り、ゲームの中で「説明書の切れ端」を手に入れ、つなぎ合わせていくことで、今まで分からなかったことが少しずつ明らかになっていき、ときには説明書の記述がきっかけでまったく新しい世界が見えてくる――というのが仕掛けのキモになっています。

こちらのUnityのブログでも製作者自身が語ってるんですが、昔のゲームの説明書の「あの感じ」を再現する、というのは最初からゲームのコンセプトのかなり重要な位置を占めていたようです。

「昔のゲームにあった驚きや発見、あの感覚を大切にしてきました」と Shouldice 氏は言います。「秘密はたくさん隠されているけれど、説明書に書いてあること以外は何も教えてくれない。しかし、説明書もカートリッジそのものから独立したアイテムとして扱われているという、あの形です」。

煙、鏡、スクロールするテクスチャ — 『TUNIC』の舞台裏(Unityブログ)
TUNICの説明書。真ん中がちゃんとホチキスで綴じてあったり、拡大して見るとちゃんとページの破れとか印刷のツブツブ感とかまで再現してあったりして芸が細かい
勝手な想像ですがなんとなく、「ゼルダの伝説」あたりの説明書をかなり参考にしてるような気がする(任天堂公式サイトより)

【追記】前半で書き忘れてたけど、そういえば説明書とか攻略本でゲーム中にない情報を補完しながら遊ぶのも、広い意味では「自分で手を動かす」遊びの一種ですね。

んで、この「説明書」を仕掛けに使うところが大変に良かった。TUNICの謎解きって「説明書を読み解く」ことがかなりの比重を占めてるんですけど(そもそもゲーム内言語は読めないし、会話ができるNPCもほとんど出てこないし)、これってよく考えるとかなりメタな構造なんですよね。

説明書を読んでるのは、主人公のキツネ君でもあり、同時にプレイヤー自身でもある。そういえばゲーム内で説明書を開いている間、ゲーム画面にブラウン管モニタ風のフィルタがかかるんだけど、これって要するに、説明書を開いている間は「ゲーム画面を覗き込んでいるプレイヤーの視点になってる」ってことですよね。

説明書越しに見える画面はなぜかブラウン管モニタ風

説明書ってもともと「ゲームの中と外をつなぐアイテム」だから、そもそもこのゲーム、最初から「第四の壁」がかなりぼやけた状態でスタートしてる。で、プレイヤーはゲーム中、説明書を通じて「ゲーム内」と「ゲーム外」と行ったり来たりしながら冒険を続けていき、あるときついに「こりゃメモ取らんとダメだわ!」と叫んで(叫びはしない)、コントローラを置いて紙とペンを取りに走る……(※こう書くとネタバレっぽく聞こえるけど、単に「ペンと紙があると楽な謎解きがあるよ」というだけです)。

謎解き要素は主に終盤に集中しているので、前半は「ゲームの中」での冒険がメインになるけど、終盤になるほど「ゲームの外」で説明書とにらめっこする時間が増えていって、主人公のキツネ君は画面の中で立ちつくしているだけ――みたいなことも普通になってきます。

この、ゲーム内→ゲーム外に舞台がだんだんシフトしていく様子が、ゲームがじわじわと現実に漏れ出してくるみたいですごくいいなと思ったんですよね。いや、終盤とそれまでで急に別ゲーになるので「よくもだましたアアアア!!」みたいになる人もいると思うんですけど、自分はこういう「それやりたかっただけだろ!!!!」みたいな仕掛けが大好物なので……。一応、最初から「説明書を集める旅」というのは一貫しているので、これはこれでキレイな構成だとも言えます。言える……か……?

ぜひ自力でクリアして、自分だけの「手を動かした証」を手に入れてほしい

あともうひとつ付け加えると、こういう「現実の自分が手や体を動かす」ゲーム、クリア後に「自分が手や体を動かした結果」が残るのがいいですよね。TUNICも例に漏れず、自力で真エンドまで行けた人の手元には何かしら「自分が手を動かした証」が残っているはずで、そこまで行けた人にとってはきっと一生忘れられないゲームになるんじゃないかと思います。

僕はホントにそこらのメモとエンピツで書いちゃったんですが、TwitterのTUNICコミュニティを覗くと、他の人がどんな風に解いたかが見られてたいへん精神に良いのでクリアした人はぜひ入りましょう(僕も見たいのでぜひどんどん投稿してください)。

※超絶ネタバレなのでクリアしてない人は開かないように

ということで、クリアしてからけっこう時間経っちゃったけどTUNICの感想でした。

ちなみにこちらの「Outer Wildsっぽい栄養が接種できるエンタメ作品で打線組んだ」でも触れている通り、謎解き部分はちょっとOuter Wildsみがあるので、Outer Wildsゾンビのみなさんにもオススメです。あと、現状XboxかSteamでしか遊べないんですが、9月にはPS4 / PS5でもリリースされることが発表されたので、PSユーザーから「ハァ?」とか「正気か?」「マジで言ってるの?」といった声が聞こえてくる日が今から楽しみですね(悪いゾンビ)。


追記:書いた後でちまちまfusetterに投稿していたこぼれ話



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