OKR実例紹介 - 少人数スタートアップ向けOKR合宿のススメ
OKRとはGoogleやFacebookなどで活用されている目標管理のフレームワークです。日本でもメルカリ社などを代表に多くのスターアップ企業で導入され始め、注目されています。
参考記事: https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atclact/active/14/368541/060800289/
私が代表をしているシンガポール本社のGAOGAOでは主にスタートアップスタジオ事業とプログラミング研修事業を行なっています。それ以外にも海外拠点のエンジニア向けコリビングスペースの運営、海外就職支援、起業支援、採用支援ツール開発などにも取り組んでいます。創業1年が経ち、少しずつメンバーも増え、事業もトライアルアンドエラーでいくつか立ち上げていたタイミングだったため、一度会社全体のコンセプト明確化+メンバーとの共通認識化を行うために今回OKR合宿を開催することになりました。
Why OKR
創業1年4ヶ月経って振り返ると、去年はとにかくいろいろやってみるフェーズでした。そのような創業期ではしばしば軸がブレてくることがあると思います。弊社では、例えば「拠点が海外であることの重要性ってなんだっけ?海外就職支援って会社として進めていくべき事業なんだっけ?」といった具合に、創業時に考えていた方向性と比べて今は一貫性がなくなってきているかもしれないと感じる場面もありました。また、いくつか事業を立ち上げていく中で収益性が見込めてくると、どうしても会社としてはその事業に注力していくため、元々いたメンバー達も困惑してしまうこともあると思います。
スタートアップは軸がブレやすいからこそOKRを導入するべき
上記は弊社の事例ですが、一般的にスタートアップ(特に創業直後)では、PDCAを素早く繰り返す必要がある中で、創業当初のコンセプトが何度も変わってしまうことはよくあるはずです。会社の方向性が変わっていくことは悪いことではないですが、メンバーとの共通認識が取れていないまま進んでいくと、ある時ひずみが起きて危機的状況になる可能性も大いにあります。
そこで、会社・事業・個人の方向性をしっかり明確化し、メンバー全員で共通認識を持つためにOKRを導入しました。
弊社ではまだ人数が少ないこともあり、半期に一度のペースでOKRを合宿形式で行うことにしました。今回は以下の写真のようにバンコクで一軒家を借りて開催しました。
OKRのポイント
今回OKRを初めて本格的に実施してみて私が感じたポイントを以下にまとめます。OKRの本などに記載されているような内容だと思いますが、それらの中でも個人的に意識した方が良さそうな点をまとめています。
・なるべく関係者全員巻き込むべし
創業期のスタートアップは資金状況的にも少数精鋭であるべきです。その少数精鋭の会社に関わるメンバー全員が同じ方向性を見て動くことができれば全体としての生産性も高まります。
・浸透のための時間をかける・しつこいくらい繰り返す
OKRは短期間では浸透しないという前提を持つべきです。例えば、経営陣やメンバーそれぞれが考えた目標シートを持ち寄って1時間で発表して終わりでは共通認識の浸透はされないでしょう。OKRは中・長期的に見据えた手法で、しつこいくらいのディスカッションやビジョン・ミッション・バリューの共有を行うことでようやく浸透してくるものです。
・ミッション・ビジョン・バリューの選定はトップダウンで良い
今いる全てのメンバーの価値観が完璧に満たされるような会社全体の価値観を考えようというボトムアップアプローチでは無理があります。OKRでは会社全体の価値観はある程度トップダウンに設定して、そこに関わるメンバーは個人としてトップの価値観と合う部分で目標を設定していきます。もし個人とトップの価値観が一切リンクしない場合は、もしかするとその方はそもそもその会社に所属することが間違っているのかもしれないです(そこを無理に合わせる必要はない)。
・トップレベルOKRから個人レベルのOKRまで一貫性をもつべき
OKRのKRはKey Resultsを表し目標に対する数値的な結果指標を意味しています。数値的指標としてビジネスの現場でよく使われるKPIとKRの主な違いは、ビジョン・ミッションから派生した目標と結果指標が結びついているかという点です。会社全体→事業→個人と辿って目標を設定していく際に、必ず上の目標とリンクしている必要があります。
OKR合宿の流れ
今回弊社が計9名で実施した2泊3日の合宿の流れを掲載します。今後OKR合宿を検討される方がいましたら、一つのやり方として参考にしてみてください。
OKRの管理にはスプレッドシートを使いました。海外のツールもいくつかあるようですが、弊社では今回初めての試みということもあり、シンプルにまずは始めてみました。
1. 合宿参加者全員向けOKR事前学習
合宿時間内にOKRの学習時間は取りたくなったため、事前にメンバー全員に以下の本を軽く読むようにお願いをしました。分かりやすく解説されており、少ない時間でも読める内容です。
本を読み込む必要はなく、ここではどういうものか、という前提知識がついていれば良いと思います。
2. ビジョン/ミッションの決定
「会社・メンバー皆が思い描く世界は何(ビジョン)」、「その世界を実現するために会社がどうあるべきか(ミッション)」それらを決めていくことがビジョンとミッションの決定です。この決定に関しては、弊社は創業時から大きくぶれていないため、そこまで時間はかかりませんでした。以下のようにシートに記入します。
3. 会社全体のOKR
- 3-1. 会社全体のバリューの決定
次に、会社全体のバリュー(会社・メンバーが持つべき重要な価値観)を決定しました。
弊社の例としては、「海外 x 起業 x エンジニア」というコンセプトで発信を続けていて集まってきているメンバーの価値観を3つに集約すると上のように「Borderless」、「Ownership」、「Practical」となりました。バリューは英単語にする必要はないですが、しっくりくる英単語を決めることができると覚えやすいし対外的にぱっと見印象が良さそうなのでオススメです。また、この時点で会社全体が目指している世界観・価値観がメンバーと共有できてきます。
- 3-2. 会社全体の数値的結果指標 (KR)の決定
次は会社全体のミッションを実現するためにKR (Key Results)として数値的指標を決定します。例えば、弊社の場合「コミュニティ基盤に乗っかってくれるクリエイターの数を年内に+○○人」といった形で優先度の高い指標をいくつか決めて記入しました。
4. 事業ごとのOKR設定
会社全体のOKRが完成したら、次に会社が行なっている全ての事業に対して、以下のように事業ごとにシートのタブを追加して、OKRを実施していきます。
弊社のプログラミング研修事業(GAOGAOゲート)を一つの例として掲載します。
上から順番に簡単に解説します。
- 4-1. O (目的)の設定
OKRは実施期間は通常設定から評価まで3ヶ月サイクルで行われるパターンが多いようです。(弊社では6ヶ月サイクルにしました)
ここで設定する目的はそのサイクルの期間内に考えるべき事業の目的となります。各事業のOは会社全体のOとリンクしたものなるのが理想です。
- 4-2. バリューの決定
会社全体と同じように各事業にも、その事業にどのような価値があるかどうかを明確にするためにバリューを定めます。
- 4-3. KR(数値的な結果指標)の決定
目的とバリューが定まったら次に目的と関連した数値的な結果指標(KR)を設定します。
KRは数値的に評価できるもの。指標はあまり多すぎると意識すべき項目が増えることになってしまうため、1つのOに対して、3-5個程度が良いと言われています。また、達成する確率が50%くらいであろうと見積れる程度の難易度が良いそうです。容易に達成できず、明らかに困難でもない辺りの数値的目標を設定します。
弊社のプログラミング研修事業のOKRの例では「年間の売上金額」と「研修参加者の数」としました。
このようにシートで管理し、参加メンバー全員で各事業全てに対してそれぞれ一時間以上のディスカッションを行いながら決めていきました。
- 4-4. 各事業の位置付けの整理
それぞれの事業方向性も決まったので、各事業が会社全体として俯瞰した際にどのような位置付け・どのような優先順位付けにあるのかを再確認するためのディスカッションを行いました。弊社の場合、以下の図のような形で最終的に事業の位置付けが明確になり、合宿前に描いていたものとは異なるものになりました。
・会社全体と各事業の位置付けをまとめる例
弊社の場合、元々乱立気味であった複数の事業がこのディスカッションにより「コミュニティ土台→プログラミング研修事業→スタートアップ・スタジオ事業」とエンジニアとしてグローバルにキャリアアップしていく上での事業の立ち位置が明確になりました。
- 4-5. 課題とソリューションおよびアクションとスケジュールの洗い出し
基本的には上記説明したOとKRを決定することが、OKRによる設定項目となりますが、今回の合宿ではさらに上の研修事業のシート画像下部にある「現状の課題とソリューション」と「アクションとスケジュール」をリストすることにしました。そうすることで、今目的を達成する上で、現状何が足りないのか、またその足りない部分を補うためにどういった次のアクションを取るべきかということを整理できるのでオススメです。
5. 個人ごとのOKR決定&発表会
最後に、各事業に対するOKRである上記ステップ4と全く同じ手法を個人に対しても行います。
「自分の所属する会社全体のOKR」→「自分の所属する事業のOKR」→「個人のOKR」一貫性が大切です。
所属する組織の方向性に沿った上で、個人としての価値観であるバリューを再認識して、目的と数値的結果指標を考えます。また、個人単位で現状の課題と次のアクションとスケジュールも記入していきます。
実際のメンバーが記入した例。
合宿の最終日には全員が一人ずつ記入したシートの内容を発表することにしました。発表を行うことで、個人のモチベーションの向上や、周りのメンバーへの価値観の共有をすることができます。
以上、5つのステップが今回の合宿の内容を簡単にまとめたものとなります。弊社の場合、ディスカションすべき事業の数が意外と多かったのとさらに全員の個人面談も実施したため、2泊3日でも足りないくらいの時間がかかりました。
OKRの評価
OKRで目標・結果設定をすること(今回合宿で行った内容)自体がメンバー間の共通認識を強くできるため、それだけでも実施する価値があります。ただし、もちろんOKRは指標を作っただけで満足してはいけません笑
定期的に設定した指標を達成したかどうかのチェックが必要です。達成しない場合はその要因を分析して次に活かしていく必要があります。その辺はまた今後コツなどが分かり次第記事にまとめていこうと思っています。
きちんと指標を達成するためには、書いた課題やアクションを常に意識していくことが重要です。皆で記入したシートを毎日眺めるような癖をつけるのをオススメします。
まとめ
今回の記事では、創業1年4ヶ月のスタートアップである弊社の実際のOKR合宿事例を元に概要とポイント、具体的な実施手順について書かせていただきました。
実施してみてわかったことは、これまでメンバーとの共有認識をしっかり時間をとって揃えられる機会を充分に持てていなかったので、今回の合宿では思ってた以上に会社・事業の成長速度を加速するきっかけを作れた、ということです。
普段は業務に追われがちですが、一度時間をとってメンバーを集めて実施する価値は間違いなくあります。会社として、個人として、迷いを減らせるので、あらゆる創業期スタートアップが実施することをオススメします!
一度皆さんも関係者を集めて海外などでがっつり合宿を行うのはどうでしょうか?(東南アジアでの合宿会場の手配ならご相談ください)
また、個人的には各企業がOKRをどんどん公開していくのも面白いなと思いました。各企業が目指すところ、どんな価値観のメンバーがいるのか、などがわかるので、外の人からその会社の理解をより深めることができそうです。
最後に宣伝
GAOGAOでは今回の合宿を通じて、以下のサイトで紹介している「東南アジア発スタートアップ・スタジオ」をメイン事業として、海外や起業にチャレンジしたいクリエイターを集めていくブランディングを進めています。
今後メンバーを増やし、コミュニティを活性化させて、もっと日本からチャレンジするクリエイターが増えて面白いものに溢れていく世界を実現するための仕組みを作っていきます。
是非メンバーとして参加することに興味のある方は是非お気軽にご連絡ください!
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