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手紙社リストVOL.18“本”編「花田菜々子が選ぶ『本が読みたくなる本』10冊」

あなたの人生をきっと豊かにする手紙社リスト。今月の本部門のテーマは、「本が読みたくなる本」。その“読むべき10冊”を選ぶのは、ブックコンシェルジュや書店の店長として読書愛を注ぎつつ、私小説も人気を博している花田菜々子さん。「雰囲気こそ大事なのでは?」という花田さんが雰囲気で(いい意味で!)選ぶ、ジャンルに縛られない10冊をお届けします。

1.『その本は
著・文/又吉直樹・ヨシタケシンスケ,発行/ポプラ社

妄想が大得意な二人による、本バージョンの千夜一夜物語。世界じゅうの珍しい本が知りたいという王様の要望に応えてさまざまな本を紹介します。ときに笑えたり、じわっときたり。絵本のように気軽に読める楽しい本。オチも必読!(ま、そんなことだろうと思ってましたけど……)

2.『私的読食録』新潮文庫
著・文/堀江敏幸・角田光代,発行/亜紀書房

本を読む気が起きない日でも、おいしいものが出てくる本だとつい読みたくなってしまいます。こちらは「おいしいものが出てくる本」をさらに文章のプロふたりが紹介するという最強な本。食欲よりも「ちょっとその本読ませて!」と読書欲を沸かせてしまうのがさすが。1冊につき2ページほどなのも読みやすくてよい。

3.『ハラヘリ読書
著・文/宮田ナノ,発行/KADOKAWA

おいしいもの関連の本をもう1冊。といってもこちらはコミックエッセイです。読書狂かつおいしいものの描写を激しく愛している宮田ナノさんが、内田百閒から森見登美彦まで、おいしいものの出てくる名著を解説。ときに空想上の作者や登場人物と自由に対話してるシーンが楽しい!

4.『文にあたる
著・文/牟田都子,発行/亜紀書房

本好きならその存在は知っていても、意外とどういう仕事をしているのか知らない「校正者」。どんな仕事かを知れる社会見学本であり、読みたい本がたくさん増える読書エッセイでもあり、その仕事へのアツい姿勢に心打たれ、こんな気持ちで本の仕事に取り組んでいる人がいるんだな、とますます本が愛しくなる1冊。

5.『本の読める場所を求めて
著・文/阿久津隆,発行/朝日出版社

本への並々ならぬ愛情で言えばこの人も負けていません。ひとりで静かに読書することに特化した私語厳禁のカフェ「Fuzkue」を都内のあちこちにオープンさせている著者がその店を作りあげるまでの奮闘記。でも何より阿久津さんの過剰でユーモラスな文章が大好きでつい読みふけってしまう。

6.『センセイの書斎 イラストルポ「本」のある仕事場』河出文庫
著・文/内澤旬子,発行/河出書房新社

ところで本好き・本コレクターなら誰でも、自分の本棚を見られるのは恥ずかしく、人の本棚はまずいちばんに見たいものですよね。今では人気の作家でもある内澤旬子さんの、初の単著でもあるというこちらの本。いろんな人の書斎が綿密なイラストで詳しく解説されていて、見ているだけでワクワクします。

7.『本で床は抜けるのか』中公文庫
著・文/西牟田靖,発行/中央公論社

本好きの本収納問題といえばこちらも忘れられない1冊。家に本がいっぱいある人ならこの「床抜け」、誰でも一度は心配したことがあるのでは。都市伝説的なこの問題を調査し、地震・所有者の死亡・所有本のデータ化・マイ書庫建設……など、あらゆる問題に向き合う本好きのための実用書。

8.『ほんやのねこ
著・文/ヒグチユウコ,発行/白泉社

本が出てくる最高の絵本といえばヒグチユウコさんのこちら。怖くて不気味で幻想的なのに、その毒々しさまで耽美でかわいくて、虜になってしまいます。変わったお客さん要望に応えて次々と棚から出てくる架空の本もいちいち変な本で気になります。

9.『きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記』河出文庫
著・文/穂村 弘,発行/河出書房新社

穂村弘さんほど本の話を面白く書ける人ってこの世にいないのではないかと思ってしまう。だいたい日記形式で書かれているのでするすると読めて、いろいろなところを歩いたり人としゃべったり本を買ったりしながら本にまつわる思いが頭をめぐっている様子がリアルに感じられて楽しいです。

10.『プリズン・ブック・クラブ―コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年
著・文/アン・ウォームズリー,翻訳/向井和美,発行/紀伊國屋書店

本を読むのは好きだから。楽しいから。……それだけでもう十分なのですが、本を読むことの価値をあらためて感じさせてくれる重厚な1冊。カナダの刑務所で受刑者たちの読書会ボランティアに関わったジャーナリストによるノンフィクション。とんでもなくどん底のときでも、本を読むことや本を通して自分を語ることは、きっとその人の人生をひっくり返すすごい力を持っている。


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選者:花田菜々子
流浪の書店員。あちこちの書店を渡り歩き、2018年から2022年2月まで「HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE」で店長をつとめる。2022年9月1日に自身の書店「蟹ブックス」を東京・高円寺にオープン。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』など。

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