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vol.56 誰かと共有する手紙時間【手紙の助け舟】

こんにちは。
喫茶手紙寺分室の田丸有子です。
しとしとと雨音が心地よい季節、いかがお過ごしですか。

今、三浦しおんさんの小説『ののはな通信』を読んでいます。まだ最初の方しか読んでいませんが、どうやら全編二人の女性の書簡形式で進んでいくようです。二人は同じ高校に通う親友同士。同じクラスで、放課後には一緒に遊んだり、家に帰ってから長電話したりと話す時間は十分なのに、さらにお互いに手紙を書いてポストに投函し合うのです。

手紙ならではの世界

しょっちゅう会っているのにどうして手紙まで書く必要があるのでしょう。私はその感覚は理解できる気がします。会って話すのと手紙に書くのとでは、相手の心に届くまでの道筋が異なります。書く方にとっても伝えられる方にとっても別の感覚なのです。それによく会うからこそ手紙に書きたい話がどんどん出てくることもあります。

加えて、手紙にはただ書くだけではない”遊びの要素”がたくさんあります。かわいい紙を使ったり、季節に合わせた切手を選んだり、シールを貼ったりスタンプを押してみたり。
すぐには相手に届かないちょっとした時差の存在も手紙だけの趣。
会って話すのとは全く別の次元に手紙ならではの世界があり、それを味わうために書きたいと思うのではないでしょうか。

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ところで、全国展開している抹茶と日本茶のカフェ『ナナズグリーンティー』では、毎月1日に利用者にオリジナルのポストカードを配っています。
季節の花をあしらった素敵なポストカードです。

お手紙仲間の一人が、ポストカードがもらえる日にカフェに集まってお手紙を書こうと誘ってくれました。お茶を飲み、おしゃべりしながら一言メッセージを互いのポストカードに書き合います。人が手紙を書くところを見る機会はそうそうないので、相手がどんなふうに書くのか、どんな道具を使っているのかを目の前で見る面白さもあります。最後に近所の郵便局に一緒に行って風景印を押してもらってお開きに。
初めて集まって手紙を書いた時、あまりにも楽しくて、この会に「葉っぱの会」と名前をつけ、誘ってくれた友人と定期開催することにしました。

「葉っぱの会」はこれまでに3回開催しましたが、SNSを通じて手紙好きの人たちにも声をかけてみました。遠方の友人は「地元にも『ナナズグリーンティー』があるので友人を誘って「葉っぱの会」支部開催します」と言い、「その日は旅に出ているので、旅先にある『ナナズグリーンティー』で一人「葉っぱの会」やります」という人も。全国展開しているお店だからこそ出来る楽しみ方ですね。
物理的に離れていても同じ日に同じ絵柄のポストカードに手紙を書いている仲間の存在に思いを馳せれば、絆や繋がりを感じて心が温かくなります。

一人でじっくりと書く手紙も良いですが、たまには誰かと一緒にお手紙を書くのも楽しいですよ。こんな手紙の楽しみ方をたくさんの人に提案するもの良いなぁと思う今日この頃です。


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田丸有子(たまる・ゆうこ)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。
切手に描かれている美術品や絵画の実物を鑑賞するための美術館巡りが趣味。目下ステイホームで始めたベランダガーデニングに夢中。
blog: 手紙魔Yukoのお手紙ライフ


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