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vol.93紙にこだわる【手紙の助け舟】

こんにちは。喫茶手紙寺分室の西川侑希です。
あたたかく感じられる日が増え、春が近づいてきていますね。
お変わりなくお過ごしでしょうか。

突然ですが、みなさんは「手紙で相手の心を動かす」要素は何だと思いますか?
「感激する文章」「文字の美しさ」「教養を感じるマナー」… それぞれのお考えがあるかと思います。どれも正解です。
しかしながら、手紙は「文字・文章だけのコミュニケーション」だと考えていらっしゃいましたら、少し視野を広げていただけたらと思います。

五感に響く手紙

私は、手紙は「五感を刺激するコミュニケーション」だと思っています。
手紙がブームになった平安時代、手紙は送り主の知性やセンスを、相手の五感に届ける嗜みたしなでした。貴族たちは、相手に想いを伝えるために、ふさわしい和紙を選び、和歌を書き、香りをたきしめた手紙を送っていました。
視覚のみならず、手ざわりや嗅覚にも訴える、まさに五感に響く手紙を送り合っていたのですね。とてもロマンティックです。
手紙全体をコーディネートすることでより「もらってうれしい手紙」になりますね。
 
実はこのような文化は現在も残っており、取り入れることもできるのです。
「紙」「香り」についてとりあげたいと思いますが、「香り」は特におすすめで、話し出すと長くなってしまうため、今回は「紙」について少し。

世界と日本の紙

日本の伝統の和紙は紙の原料の繊維を感じることができる、柔らかな質感をしています。日本国内には和紙の産地がたくさんあり、水を使って透かしを入れる技法など、加工も合わせると数えきれないほどの和紙が存在します。
一方、洋紙はきめ細かくて滑らかな質感を持つものが多いです。産業革命期にヨーロッパで木材パルプ、紙抄き機が発明されたこともあり、とりわけヨーロッパの紙製品は上質な印象がありますね。
私は和紙が好きで、レターセットは和風のものを好んで使っています。自分自身が触れる時も心地よく、インクや筆記具によって書き心地や表情が変わるのが楽しいのです。
万年筆インクの吸い込みがよく、にじんでしまうこともたまにありますが、それも個性として楽しんでいます。
文章、文字に自信がない場合は「紙」にこだわると、趣のある手紙になりますのでおすすめです。
愛知県名古屋市には「紙の温度」という世界中の紙を集めた「紙の聖地」と呼ばれるお店があります。お近くの方はぜひ足を運んでみてください。お気に入りの紙で手紙を書けば、その楽しさがきっと相手にも伝わりますよ。

それでは、また来月お会いしましょう。
季節の変わり目ですから、どうぞご自愛ください。

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西川 侑希(にしかわ・ゆき)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
愛知県名古屋市生れの名古屋市育ち。広告代理店で営業職として勤務したのち、メーカーで商品企画と広報を担当。「文具店が開ける」と言われるほどの文具マニア。
1年間で手紙を書く枚数は500通以上。最近は読書と釣りが趣味。
Instagram  https://www.instagram.com/yuki__nishikawa/

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