見出し画像

vol.67 封かんに表れるまごころ【手紙の助け舟】

こんにちは。喫茶手紙寺分室の田丸有子です。
猛暑は控えめになってきたとはいえ、まだまだ厳しい暑さが続いております。お変わりなくお過ごしですか。

今年はもう咲かないのだろうと半ば諦めかけていた我が家の朝顔でしたが、最初の一輪がようやく咲きました。この日が待ち遠しかったので、朝起きて眠い目をこすりながら窓を開けて鮮やかなブルーが目に入ってきた時、どんなに嬉しかったことか! 猛暑に負けて早朝にお水をあげる以外はほったらかしておいたくせに現金なものです。植物にも事情があるでしょう。人間の勝手な都合で急かしてはいけないと辛抱強く見守ることを学んだ気がします。

封かんと封字

ところで、先日いただいたおたよりの封かんに簡単なお料理のレシピが貼られていました。雑誌か何かの切り抜きのようでした。相手は知らなかったと思いますが、レシピは私の好物だったこともあり大喜びでした。
文通しているといろんな封かんのアイデアを目にする機会も多く、手紙の注目ポイントの一つとして楽しんでいます。

封筒を閉じたところに書く文字を封字と言いますが、江戸時代のある時期には、「五大力ごだいりき」「五大力菩薩ごだいりきぼさつ」と書くのが流行ったのだとか。五大力菩薩は火焔を背負ったそれはそれは恐ろしげな様子をしており、その力は自然災害や疫病を避けると信じられていました。像を描いたものは厄除けとして門戸に貼られ、「五大力菩薩」と記されたお札は盗難よけのお守りにもなっていたようです。封字として書く風習は遊郭から広まったそうで、書状(特に恋文)が五大力菩薩の御加護で相手に無事に届けられるようにとの思いが込められていたそうです。

コロナが流行し始めてステイホームであまり人に会えなかった時、私は「千里如面せんりじょめん」と書かれたシールをよく封かんに使っていました。「千里」とは物理的に距離が離れていることを指しますが、「如面」というのは“会って話をしているような”という意味です。つまり「千里如面」とは“遠く離れていても面と向かい合っている時と同じような親しい気持ちでおります”という意味です。もちろん平常時にも使える言葉ですが、その時は特に書き手の心情をぴったり表しているような気がしたものです。

封かん一つとっても発見や学びがあり面白いですね。手紙の歴史と奥深さを感じます。

―――――――――――――――

田丸有子(たまる・ゆうこ)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。
切手に描かれている美術品や絵画の実物を鑑賞するための美術館巡りが趣味。目下ステイホームで始めたベランダガーデニングに夢中。
blog: 手紙魔Yukoのお手紙ライフ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?