vol.94 文字を使って書くこと【手紙の助け舟】
こんにちは。喫茶手紙寺分室の田丸有子です。
三寒四温も”温”の日がどんどん増え、本格的な春の到来が間近に迫っているのを感じてウキウキ気分。みなさんはいかがお過ごしですか。
サンシュユの花が満開になっています。小さな黄色い花が寄り集まって輝くように咲く姿に思わず顔がほころびました。植物学者の牧野富太郎博士はサンシュユを「春黄金花」と呼んでいたそうですが、まさにそんな感じですね。
ロウバイ、ナノハナ、フクジュソウ、ミツマタ、クロッカス、ミモザなど早春に咲く植物の黄色を見ると特に力強さを感じます。太陽の温かさと大地の力が色にも含まれているような気がするからでしょうか。
ところで、最近、読んだ本にこんなことが書いてありました。
これを読んだ時、正直、手紙を書くときに相手をそこまで思えるだろうか、と感じました。
私は手紙を書くとき、いつも相手が目の前にいると想像して書きます。相手が微笑みながら私の話を聞いている姿や、相槌を打ちながら聞いてくれる姿を想像します。それでも時々、これは独りよがりの文章ではないだろうかと心配になります。
手紙は心を伝えるものですが、相手がどう感じ、どう思ったのかは教えてくれない限り本当には分かりませんよね。だからこそ本当に伝えたい真意は、相手を「じぶんにとってなくてはならぬ存在」にした上でようやく伝えられるのかもしれません。読んでくれる人を本気で大切に思うことで初めて、真に謙虚で気負いのない軽やかな文章をつむげるようになるのかもしれません。
相手を「じぶんにとってなくてはならぬ存在に変えてゆく」とは、相手に対して分かった気になる傲慢さを捨て、敬い、謙虚になることではないでしょうか。
長田弘さんのこの言葉はなにかとても大切なコミュニケーションの本質を伝えてくれているように感じたのでした。
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