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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁

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2023年7月の記事一覧

駆け抜ける郷愁と一条の郷愁 第13話

【前回の話】
第12話 https://note.com/teepei/n/n751d67be6ab2

鰐男。

 紛うことなき怪人である。
 急に本気を出すのは如何なものだろうかと思う。
 しかし物語にかこつけた俺への当てこすりならば、自業自得と言われても仕方がない。いかに理不尽とはいえ相手は作者なのだ。立場上の力関係は、ひとまず飲み込むことを性質とする。もちろん逆襲を前提としているから、いや

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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第12話

【前回の話】
第11話 https://note.com/teepei/n/n42889248e999

聞き間違いではないことが分かり、引き続き蛙男の様子を窺うべく目を凝らした。粉塵はすっかり落ち着き、壁の崩壊具合にも驚いたが、蛙男の仕草には先ほどまでの人離れした気配が薄れていた。鳴き声の間で、トキオ、を繰り返す。頭を手で押さえ、痛みや眩みが生じているように見える。
「思い出したか」
 亀男が声

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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第11話

【前回の話】
第10話 https://note.com/teepei/n/n6f152c3670f0

怪人要素の絶妙な選択に舌を巻く暇もなく、二号と称された人影がこちらに跳躍する。跳躍、とは蛙にちなんだ便宜的な表現であって、怪力に裏付けされてしまえば殺人的なタックルでしかない。幸い受け止めたのは亀男だったが、衝突の具合から見て若干劣勢のきらいがある。そして亀男の併せ持つ知性的な静けさが、蛙男に

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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第10話

【前回の話】
第9話 https://note.com/teepei/n/nad40a420c186

 亀。

 おそらく改造を施された怪人などの異形であろうことは察していたが、亀。要素にしたいと思えるほど怪人に特化した特徴が亀にあるとは思えず、しかしそれは己の無知ゆえかもしれない。ここは堪え時である。
「亀は、水の中では案外早く泳ぐだろう。そこに秘められた力を見出し、亀の染色体と人の染色体を融

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