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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁

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2023年5月の記事一覧

駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第4話

【前回の話】
第3話 https://note.com/teepei/n/ne457fed02618
***

 振り返った先から視線を前に戻すと、少女がいた。もう一度振り返ると少女はいない。周囲は少女とすれ違う前の景色に戻る。結局、少女を起点にするのか。だったら最初から通過なんてさせんじゃねえよ、冷や冷やさせやがって。糾弾の嵐をひとまず収め、改めて起点を担うことになった少女へ向かう。
「こんにち

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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第3話

駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第3話

【前回の話】
第2話 https://note.com/teepei/n/n10a9b34314be

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「というわけで、私は宇宙人でも世界の向こう側でもなく、この物語の作者だ。そして君にこの物語を壊して欲しい」
「物語ったって、だとしてもまだ何も始まってないし、え、ってことは俺の方こそ創作の産物で人間じゃないってことか」
「人間じゃない、ってのは正しくないんじゃないのか。この物語で人間と

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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第2話

駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第2話

【前回の話】
第1話 https://note.com/teepei/n/n9059c105395b

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 ここまで書き進めて一旦止まる。

 もうめんどくせえな、さっそく物語を壊しちまうか。

 俺はこの物語の中で困惑のさなかにいるそいつに、物語を壊してもらおうと思っている。それをどの機会に、どんな風に、なんてのは全く考えていない、ノープラン。だから早速壊してもらっても俺としては問題ない

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駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第1話

駆け抜ける狂騒と一条の郷愁 第1話

第1部 ある男 

 だらしなく着込んだシャツの裾がはみ出て、気付く様子もないまま上着を脱ぎたてのサラリーマン風の男は宇宙人だという。

 どんな経緯かは知らないが、そのまますれ違ってもおかしくない程無関係でしかなく、それが俺の顔を見るなり、そうそう思い出したと言わんばかりに当然な口調でそう言った。

 だから飲み込めないのも当然で、声さえも認識できず、そもそも俺に話しかけているのだとようやく認識

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